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Z世代が大注目! 90歳で〝再ブレイク〟筒井康隆の作品を徹底検証

2025年07月11日 11時00分更新

文● 原田 健

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©NHK/JOYCE

 SF小説の大家、筒井康隆の小説「残像に口紅を」が、SNS投稿をきっかけにZ世代を中心に人気が再燃している。ミドルからシニア世代には「筒井作品のすごさに沸くなんて、何を今さら…」といったところだろうが、一方で「筒井作品の魅力は世代を超えて若者にも刺さることが立証された」ともいえ、“作品が時の隔たりを埋める”というなんともエモーショナルな事態となっている。

 この出来事をきっかけに、“筒井康隆の世界”を改めて掘り下げた番組が「筒井康隆の世界~文学界の巨人 90歳のメッセージ~」(NHKBSプレミアム4K)だ。同番組は、筒井の半生をデビューから振り返りながら、昨年90歳を迎えた筒井本人へのインタビューに加え、俳優・斉藤由貴やジャズピアニスト・山下洋輔、作家・荻野アンナ、町田康、アニメーション監督・細田守、編集者・楠瀬啓之、田中光子、大学研究者・巽孝之、藤田直哉、声優・池澤春菜、SF評論家・日下三蔵などの多彩なジャンルの“筒井作品ファン”たちの証言によって、“筒井康隆の世界”をひもといていくというもの。6月9日に発表された「第15回衛星放送協会オリジナル番組アワード」では、番組部門文化・教養最優秀賞を受賞した。

“筒井作品”の世界観を踏襲したかのようなにくい構成

 この番組の特徴は、やはり本人のインタビューと“筒井”専門家たちの証言が混ざり合いながら進行していくところだろう。“送り手本人の思い”とその時の“受け手たちの思い”が、シンクロしたり、ズレたり、重なり合ったり…。まさに、筒井本人も登場する“筒井作品”のようなアクロバティックさが漂っており、番組自体も“筒井康隆の世界”の中にとらわれているかのような感覚に陥る。そんなSF感を纏う一方で、デビュー時や断筆時でもなく、活動再開時でもない、90歳となった今の彼だからこそ見えている“リアルなもの”をしっかりと映し出しているところがすばらしい。

膨大な作品世界を丁寧に掘り下げて“筒井康隆の世界”の核に触れる

 また、文学界に新しい風を吹かせた筒井の功績を振り返るだけでなく、過去のインタビュー映像や本人による朗読舞台の映像、本人が出演する映像作品などの貴重な映像もはさみながら、筒井の多岐にわたる創作活動を深掘りし、過去から現在に続く彼の信念や創作の根本にあるものにも光を当てている。

 90歳を超えてもなお創作を続ける「文学界の巨人」は、何を感じ、何を思い、何を追求しながら“言葉”をつむいでいるのか。この番組を通して、その情熱の欠片に触れることで、少なからず何かが心に刺さることだろう。

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