このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

「AWS Summit Japan 2025」レポート

かんぽ生命も採用するクラウドコンタクトセンターの実力は?

「Amazon Connect」が東京-大阪でDR対策可能に 生成AIのアウトバウンド支援機能も

2025年06月25日 15時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 Amazonの顧客対応を支える目的で開発された、アマゾン ウェブ サービス(AWS)のコンタクトセンターサービス「Amazon Connect」。今や、AWSの中でも著しい成長をみせるプロダクトのひとつだ。

 このAmazon Connectの注力市場が日本である。今回、ディザスタリカバリ対策として大阪リージョンが選択できるようになり、2025年6月25日から利用受付を開始している。あわせて、生成AIを活用したアウトバウンド業務の支援機能も、東京リージョンで利用可能になった。

 本記事では、Amazon Connectの生成AI機能や日本市場での展開、同サービスで大規模コンタクトセンターを稼働予定である「かんぽ生命」の事例を紹介する。

説明会に登壇した、アマゾン ウェブ サービス ジャパン 金融事業開発本部 本部長 飯田哲夫氏(左)、かんぽ生命保険 IT担当特別執行役員 兼 かんぽシステムソリューションズ 代表取締役社長 酒井則行氏(中)、アマゾン ウェブ サービス Amazon Connectディレクター ケヴァン・マー氏(右)

生成AIのコンタクトセンター変革は全社的に波及する

 Amazon Connectは、2017年に提供を開始した、クラウド上で柔軟に構築・運用が可能なコンタクトセンターサービスだ。

 グローバルで数万社に導入され、1日あたり1000万件以上の顧客対応を支えているという。シンプルで使いやすいセルフサービスUIを備え、電話やチャット、メッセージングといった複数チャネルの顧客対応を一元管理。他のAWSサービスと容易に接続できるのも特徴だ。

Amazon Connectの特徴

 AWSのAmazon Connectディレクターであるケヴァン・マー(Kevan Mah)氏は、同サービスが選ばれている理由を3つ挙げる。

 ひとつ目は、「統合アプリケーション」。単一のアプリケーション上でコンタクトセンターに必要な機能を揃え、すべてのチャネルや設定、AI機能がシームレスに連携するよう設計されている。

 2つ目は、「拡張性とレジリエンス」。AWSのグローバルなクラウドインフラのスケーラビリティとレジリエンスを享受できる。3つ目は、「イノベーション速度」だ。顧客体験のための最新テクノロジーを、即座に展開できる。

アマゾン ウェブ サービス Amazon Connectディレクター ケヴァン・マー(Kevan Mah)氏

 コンタクトセンター領域では、業務内容への親和性の高さから生成AIの導入が加速しており、Amazon Connectも例外ではない。セルフサービスから会話分析、通話の要約、オペレーターの対応評価まで、あらゆる顧客接点に生成AI機能を導入している。

あらゆる顧客接点に生成AI機能を導入

 マー氏は、「コンタクトセンターに生成AIが持ち込まれたことで、根本的な変革がもたらされる」と強調する。

 ひとつは、「ビジネス上の直接的な成果」だ。AIの活用で効率化・自動化が進み、顧客対応の品質が高まることで、オペレーターの離職率低下や顧客満足度の向上といった成果が生まれる。

 もうひとつは、「コンタクトセンターを起点とした企業全体の変革」である。「例えば、銀行ローンや保険請求の処理も、コンタクトセンターでAIが対応しているような処理に変えられる。コンタクトセンターに用いられる技術を展開することで、コンタクトセンターの変革が全社的に波及する」(マー氏)

第2リージョンの追加とアウトバウンド向け機能の展開

 マー氏は、「Amazon Connectにとって、日本は重要なマーケット」だと語る。実際、日本は米国に次いで2018年から製品展開されており、今回も米国を除けば初めて、国内複数リージョンでの冗長構成に対応。ディザスタリカバリ対策として大阪リージョンが選択できるようになったのだ。

 これまでも、同サービスでは、東京リージョン配下の4つのAZ(アベイラビリティゾーン)で可用性を担保するほか、コア機能や通信事業者との接続が3つのAZにまたがる形で構成されていた。さらにレジリエンスを高めたい企業向けには、マルチリージョンでのレプリケーションが可能な「Amazon Connect Global Resiliency (ACGR)」も用意していた。

 このACGRで新たに大阪リージョンが選択できるようになり、データ処理・保管を国内で完結させる“データ主権”の要望にも応える。「日本のユーザーから最も要望の多かった機能」(スー氏)

Amazon Connect 大阪リージョンの提供開始

 あわせて、企業から顧客へのエンゲージメントを支援する「アウトバウンドキャンペーン」機能が、東京リージョンで利用可能になった。営業・マーケティング活動だけではなく、予約確認や請求書のリマインドなど特定のセグメントに対する大量の連絡も、生成AIで効率化することができる。

 わずか数クリックで、アウトバウンドキャンペーンを作成可能で、電話やメール、メッセージングなど、各チャネルに対応する。顧客データなどをもとに、生成AIが最適なセグメントを自動生成。キャンペーンのパフォーマンス指標を確認できる分析ダッシュボードも提供する。

アウトバウンドキャンペーン機能の概要

 マー氏は、「コンタクトセンターのオペレーターは、会社のことをよく知っているため、アウトバウンド業務における主要な人材になり得る」と説明。そして、生成AIによる効率化・自動化で生まれたオペレーターの時間を、アウトバウンド業務にあてることで、「コストセンターとみなされがちだったコンタクトセンターを、“プロフィットセンター”に転換できる」と強調する。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事
アクセスランキング
ピックアップ