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従業員1000人以上の企業にサイボウズが本気で挑む

エンタープライズ、振り向いてよ kintoneは中小企業向けだけじゃない

2025年06月23日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2025年6月20日にサイボウズがエンタープライズに向けた戦略についての記者説明会を開催した。中小企業の業務改善ツールとして人気の高いkintoneだが、従業員1000人規模を超えるエンタープライズでの利用はまだまだ。2028年に向けた売上高倍増に向け、エンタープライズユーザーの利用を増やすための施策や全社導入を加速する「ワイドコース」の最新動向について説明された。

サイボウズ 執行役員 エンタープライズ事業本部長 玉田一己氏

エンタープライズ開拓に向け、組織や施策を拡充

 業務アプリを現場ユーザーが作成できるkintone。これまで業務改善を目指す中小企業の支持を受け、サービス開始から14年の間に確実に導入社数を積み上げてきた。現在は1ヶ月に平均730社というペースで導入を伸ばし、契約中企業も3万7000社を突破している。

 順風満帆に見えるkintoneの課題はエンタープライズ市場の開拓だ。東証プライムに上場している企業の44%が利用しているkintoneだが、まだまだ中小企業向けのイメージは強い。国内約177万社のうち、サイボウズがエンタープライズと定義する従業員1000名以上の企業は、社数では0.23%に過ぎないが、従業員ベースでは全体の3割を占める。ユーザーごとの課金体系を採用するkintoneにとって、このエンタープライズの市場は今後の成長を考えると非常に魅力的な市場だ。

 サイボウズは2028年度までの事業戦略で、売上高を2023年度の倍となる509億円に設定している(関連記事:kintone価格改定の影響は? 全社導入の推進で売上倍増を目指すサイボウズ)。これを実現するためには、「表計算や紙からの置き換え」を中心とした既存市場での堅調な拡大と、エンタープライズ利用の促進を含む「潜在層・新市場の開拓」の両輪が必要になるという。また、案件単価を表すARPAの指標を見ても、kintoneはGaroonの1/3にとどまっており、エンタープライズ市場の開拓は喫緊の課題になっていた。

エンタープライズでの利用増で売上高倍増を実現

 これに対してサイボウズは「マーケットを拡げる」「利用用途を深める」という2つの施策でエンタープライズ市場を開拓する。まずは社内に「エンタープライズ事業本部」を新設。これまでのオンライン・パートナーとのビジネスに加えて、ハイタッチ営業を強化する。

 活動内容としては、ABM(Account Based Management)のアプローチを用い、導入が大型化するポテンシャルのある注力50社と、特定業種・用途に刺さるテーマでキラーコンテンツを作るべき100社を設定。アカウントベースの活動を推進し、エンタープライズ企業の「組織全体での情報共有」を実現していくという。また、CIOマーケティングもあわせて実施し、ソートリーダーシップやアナリストリレーションなどを強化。さらにkintone活用を促進するためのkintone Enterprise Circleやkintone EPユーザー交流会などのユーザーコミュニティや社内勉強会も積極的に実施していくという。

全社利用のガバナンスの課題に応えるワイドコースの詳細

 そして、kintoneの全社展開を推進するためのエンタープライズユーザー向けの専用コースが昨年7月に発表された「ワイドコース」になる。

 現在のkintoneのライトコースが月額1000円/1ユーザー、スタンダードコースが月額1800円/1ユーザーなのに対し、最低契約ユーザー数1000ユーザーのワイドコースは月額3000円/1ユーザー。スタンダードコースには最大アプリ数が最大1000、スペース数が最大500、日ごとのAPIリクエスト数が最大1万という上限値があるが、ワイドコースはアプリ数が最大3000、スペース数も最大1000、日ごとのAPIリクエスト数が10万と大幅に拡張されている。APIも「アプリ情報の取得」や「スペース情報の取得」といったワイドコース専門のAPIも用意され、自社のガバナンスに最適なツールやポータルの開発が容易になっている。

エンタープライズユーザー向けのワイドコース

 ワイドコースでは、全社横断で利用するアプリ数や、ユーザー数の増大に関する課題に対しての専用機能が用意されている。たとえば、「アプリが多すぎると探しにくい」という課題に対しては、ユーザーや組織、グループごとに使いやすいポータルの拡張が行なわれている。また、「多階層・多組織での横断的なアプリ活用を増やしたい」というニーズに対してはプロセス管理が強化され、承認経路や分岐を可視化したり、コメントの記録や履歴管理が可能になっている。

 そして、「セキュリティやルールに則ったアプリ作成の統制」に関しては、アプリの一覧や利用状況、権限設定を見える化する「アプリ分析」という機能も提供されているという。アプリ分析では、情報システム部が策定したルールの継続的な遵守を負担少なく、かつ網羅的に確認できるようになっており、アプリ統制の課題を解消。現場部門でのアプリ開発が促進され、業務改善やシステム化の促進が可能になるという。

アプリ間の関係を可視化できるアプリ分析

 ワイドコースの導入事例としては、4200人がkintoneを活用するJX金属の事例が披露されている。DX人材の増強を方針として掲げる同社は市民開発のプラットフォームとしてkintoneを採用。社長承認フローの電子化の成功をきっかけに全社に拡がり、アプリ数やAPIリクエスト数が増えるのを見込み、ガバナンス対応できるワイドコースを採用したという。こうしたDX、内製化のプラットフォームとしてエンタープライズユーザーの選択肢に挙がることが、まずは重要になるだろう。

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