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「紙+デジタルのパラダイムシフト」で機会損失を減らす

結局、連絡先はメールで探す? Sansanが名刺交換後の“フォローメール”自動送付機能を発表

2025年05月27日 08時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 Sansanは、2007年の創業以来、受け取った名刺の管理・活用を主眼にソリューションを展開。この18年間、紙の名刺だけでは機会損失を防ぎきれないという課題に向き合ってきた。

 そして、2025年5月26日、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」の新機能として、「デジタル名刺ソリューション」を提供開始した。紙の名刺をSansanで取り込むと、デジタル名刺メールが自動送付される機能であり、名刺管理の課題に「名刺を渡す側」から挑むアップデートとなる。

社員が渡す名刺の価値を上げる新機能を発表

 SansanのCEOである寺田親弘氏は、「(デジタル名刺ソリューションは)19年目に入るSansanにおいて、パラダイムシフトとも言えるソリューション」だと強調する。

“紙+デジタル”の名刺で機会損失を減らす

 これまでSansanは、いろいろな名刺管理ツールを展開してきたが、まだまだ同分野のツールを導入していない企業は多いという。個人の範疇で紙の名刺を管理して、引き出しにしまい、果ては捨ててしまうのが実態だ。本来は、ビジネスの入り口である名刺が、その役割を果たせていない状況にある。

 名刺交換時に何も用はなくとも、半年後、1年後など、時が経ってから連絡を取りたくなることもある。しかし、紙の名刺を適当に保管しているだけだと、打つ手がない。「とてももったいない現状」だと寺田氏。

Sansan CEO 寺田親弘氏

 営業の現場では、もっと深刻だ。まず名刺交換をして、商談を行う。多くの場合は商談が即決することはなく、持ち帰って検討されることになるだろう。営業は相手の連絡先を手に入れ、自社の連絡先も渡せたことで、関係構築の一歩が踏み出せたと考える。

 しかし、Sansanの調査によると、「相手先」の57.7%が渡された名刺を整理できていないと回答。さらには、40.7%が、名刺の紛失や整理不足で、連絡先を見つけられない経験があるという。Sansanの執行役員/Sansan事業部 事業部長である小川泰正氏は、「原因は“紙の名刺だけ”を渡してしまっているから」だと分析する。

半数以上が紙の名刺を整理していないという状況が浮き彫りに

 そこで開発されたのが「デジタル名刺ソリューション」である。紙の名刺交換という従来のフローを崩さずに、デジタルデータによるフォローを自動化しているのが特徴だ。その中核を担うのが「デジタル名刺メール」となる。

 同機能では、紙の名刺をSansanに取り込むと、翌日にはこちらのデジタル名刺が、相手のメールアドレス宛に自動送信される。相手企業が名刺管理ツールを導入していなくても、メールボックスにデジタル名刺が残る。そのため、連絡が必要な時には、すぐに検索してもらえるというアプローチだ。

 押し売り感のあるフォローメールと異なり、あくまでも「名刺情報を必要なときに呼び出せるように届ける」というスタンスをとっている。それだけでも受け手の心理的負担は軽減され、紙の名刺が埋もれる状況を打破できる。さらに、デジタル名刺メールは、企業のメールとして自動送信され、そこにはSansanの名前は入らない。これも、広告感をなくすための工夫だという。

 実際、Sansanの調査によると、ビジネスパーソンの約7割が必要な連絡先をメールボックスから検索している。紙の名刺を渡すだけでは機会損失になりかねないのだ。

紙の名刺に加えてデジタル名刺も渡すことで機会損失を防ぐ

 デジタル名刺は、「デジタル名刺メーカー」という機能で作成する。名刺のデザインから管理・発注までを一元化し、常に最新の紙名刺とデジタル名刺を活用できる。組織や役職の変更にも手間がかからないという。

Sansan上で紙の名刺もデジタルの名刺も手軽に更新、作成できる

 例えば、20人の営業がいて、月に15回名刺交換する場合、1年で3600枚の名刺を渡す。上記の調査を鑑みると、相手の半分は名刺を管理できておらず、年間約1800枚の名刺が無駄になる計算だ。営業が顧客接点をフォローすれば問題ないが、名刺交換後にフォローアップのメールを日常的に送っている営業担当は25.4%にとどまる。

 デジタル名刺ソリューションを導入するだけで、顧客へのフォローアップを欠かさない体制を全社的に構築できる。すでにSansanでも利用中であり、一般的なメールマガジンの開封率が11%程度な一方で、デジタル名刺メールの開封率は50%に上るという。商談化率も高く、900枚渡した名刺から5件のアポを獲得したという成果も得られている。

デジタル名刺メールでフォローアップを強化できる

 5月28日からは新しいTV CMの放映もスタートする。紙の名刺がなくて困っているところに、女性社員が「メールで届いているのでは?」と言うと、「それ、早く言ってよ~」と返すという、おなじみのやり取りが繰り広げられる。松重豊さんと野間口徹さんがコミカルに演じており、内容は地味だが、楽しいCMとなっていた。

5月28日から新TVCMが開始

 デジタル名刺ソリューションは、すでに50社での導入が決定しているという。紙の名刺交換という慣習を尊重しつつ、名刺を渡した後の体験をデジタルで底上げする新機能は、名刺文化そのものを変革する可能性がある。Sansanが掲げる「名刺をビジネスのインフラに」というビジョンは、19年目のパラダイムシフトを経て、次のステージへ向かおうとしている。

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