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遠藤諭のプログラミング+日記 第185回

「AI」を使い尽くせ!――電子回路であれインターネット回線であれ使い尽くした者が勝者となった

DeepSeekショックと中国ITの歴史が教えるAIの未来

2025年04月29日 09時00分更新

文● 遠藤諭(角川アスキー総合研究所)

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2001年北京のインターネットカフェは子供たちも使っていた。

1985年生まれが世界のAIをリードしている

 MITテクノロジーレビュー日本版主催の「生成AI革命4―中国発AIがもたらすパラダイムシフトの可能性」というセミナーに参加させてもらった。

 その概要は、レポート記事《動き出した「静かな巨人」、中国発のAIモデルが世界に与えた驚き》にまとめられている。登壇者は、ジャーナリストの高口康太氏とアリババクラウド・ジャパンサービスの藤川裕一氏の2名。とくに、高口氏の講演からは、中国発AI全般の最新事情について知見を得ることができた。

 個人的に収穫だったのは、いくつかの疑問に対する答えだった。セミナー後半の質疑応答タイムの司会を担当させてもらったのだが、私自身も、いくつか質問させてもらったのだった。

 ご存じのように「中国のAIはオープンソース」で提供されていることが多い。そこで、「米国などでの規制を回避するためと指摘されたりしますが」と質問したところ、高口氏は「彼らは最終的に同じものが2つあったらオープンソースが勝つことを知っているからだ」という意味の答えだった。

 これは意外な返答ではあったものの、考えてみれば納得できる話でもあった。中国発AIの代表格であるDeepSeekは、今年1月に世界に衝撃を与えたが、オープンソースとして公開された(オープンウェイトという概念もあり単純ではないが)ことが、その影響力を大きく高めることになった。

 もう1つ印象的だったのは、「中国発AIの躍進を支えているのは《人》である」ということだ。エンジニア、研究者、学生、AIで起業する人が多いというのもあるが、「新しい世代」が台頭してきている。DeepSeekショックを巻き起こした梁文鋒(リャン・ウェンフェン)氏は、1985年生まれ。中国企業にありがちなトップがバチバチ引っ張る(高口氏)会社ではなく、フラットで自由な体制だという。

 ついでながら、米国では、OpenAIのサム・アルトマンはDeepSeekの梁文鋒氏と同じ1985年生まれ。2010年代以降のAI、ChatGPTの開発で重要な役割を果たしたとされるイリヤ・サツケバーは1986年生まれ。Claudeを提供するAnthropicのアモディ兄妹も同世代の人たちである。ちなみに、兄のダリオ・アモディは、百度、グーグル、OpenAIという職歴だ。

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