モンテッソーリ講師・丘山亜未さん/25,000組の親子と向き合い、キャンセル待ちが続く人気教室を運営

文●源詩帆  編集/山野井春絵

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 モンテッソーリスクール「ちいさないす」を運営、講師として活動する横浜市在住の丘山亜未さん。自身の育児の悩みをきっかけに、複数の関連資格を取得。退職後、第二のキャリアとして自宅で子育て教室を始めるも、思い通りにいかない集客に苦戦する日々が続いた。そんな丘山さんはどのように常に満席が続く人気教室を作り上げたのか。現在までの歩みを聞いた。

多くの親子に“居場所”を提供してきた丘山さん。活動のモチベーションになったのは、ひとりの母としての葛藤だった。

“思い描いていた子育て”とはほど遠い現実に苦しんだ日々


丘山さんのベビーマッサージ教室。赤ちゃんに寄り添いながら、ママ自身もリラックスできる穏やかなひととき。

 

 丘山亜未さんは、外資系企業の経理部門で多忙な20代を過ごした。30代で結婚・出産を経て育休を取得したが、復帰直後、娘が原因不明の高熱に見舞われ、入退院を繰り返す日々が続いた。病院からは複数の病気の可能性があると告げられた。

 「その時は、娘のことで頭がいっぱいで、仕事のことは考えられませんでした。今はとにかくそばにいたいという想いでした」

 育休を延長し、娘の看病に専念。その後体調は回復したものの、思い描いていた子育てとはほど遠い状況に悩む日々だったという。

 「娘はとても繊細で、どこへ連れて行っても泣いてばかり。子ども向け教室に行っても最後まで参加できず、ママ友を作ることも、ランチにいくこともできませんでした。『なぜこんなに泣いているのか。どうして笑ってくれないのか』と戸惑いの連続で、帰り道に私が大泣きしてしまうことも……。外出が億劫になり、家にこもる時期もありました。

 でもその頃に湧き上がった思いがありました。同じように悩む親御さんのために、誰もが立ち寄っていいんだと思える心地のいい居場所を作りたいって」

 丘山さんはベビーマッサージや子育てアドバイザーなどの資格を取得し、学んだ知識を身近なママ友に伝えた。

 「子育てがうまくいっているように見える人でも、何かしらの悩みを抱えていました。私の想いや経験を伝えると、『私も同じように悩んできたのでほっとした』と涙を流す方もいました」

自宅で始めた教室が、口コミで広がり実店舗へ。クラウドファンディングも成功

教室では子どもたちとの目線を合わせ、信頼関係を築いていく。

 その後、自宅で子育て教室を始めることを決意し、退職した。

 「当時はSNSよりもブログが主流。育児記録も兼ねてブログを始めました。子育ての学びや、娘との日々、育児のお役立ち情報、教室の告知など、1日に3本の記事を更新しました。

 近所の方もブログを見てくれるようになり、そこから実際に申し込みが入った時は本当に胸が高鳴りました」

 開業当初は主にベビーマッサージを教えていた丘山さん。とにかく子育ての役に立ちたい一心だった。

 「目の前の親御さんが何に悩み、何を求めているのか、アンケートをとりました。そのニーズに合わせて、さまざまな育児書を読み、知識を広げました。たった1人でも、教室に来てくれたことに感謝して、目の前の親子を幸せにすることだけに集中していましたね」

 やがて口コミが広がり、友人を連れて教室を訪れる親子も増えた。
自宅では手狭になり、レンタルスタジオを活用するように。広い空間を手に入れたがキャンセルが発生すると赤字になることもあったという。それでも丘山さんは諦めず講師仲間を増やし、親子向けのピラティスやダンスなど、多彩なプログラムを展開。その後も新規の利用者は増え続け、ついに実店舗をオープンした。

 オープン後、建物の不具合により水漏れが発生し、退去を余儀なくされるというアクシデントに見舞われるも、この危機をチャンスに変えようと、クラウドファンディングに挑戦。待ってくれている親子のために奮闘し、目標の2倍近い支援を集め、移転先の設備に充てることができた。

モンテッソーリ教育との出合いから、作家へ挑戦

「ちいさないす」にて。環境を整えることで大人が口を出さずとも、子どもたちは自分の世界を築き、集中して遊び続けるという。

 レンタルスタジオで活動していた頃、現在の丘山さんの軸となっている”モンテッソーリ教育”に出合う。

 「事業が軌道に乗っても、私自身が『子どもをしつけなければ』と悩んでいた時期でもありました。そんな時、本を通じてモンテッソーリ教育を知り、感銘を受けました。

 モンテッソーリ教育とは、子ども一人ひとりの尊厳を大切にし、自立心を育てる教育法です。大人が知識を与えるのではなく、子ども自身の内にある力を引き出す考え方に基づいています。

 また、モンテッソーリ教育は”平和教育”とも言われています。戦争反対を言葉で教えるのではなく、日常のなかで平和的な関わり方を学ぶ環境づくりが大切だと考えられていて、その世界観に私自身が心から共感し、講師資格を取得しました」

 移転後の新店舗は「ちいさないす」と名付けられ、モンテッソーリ教育を取り入れた教室として広く認知されるように。現在では月に約100名の1〜6歳の子どもが通い、キャンセル待ちが続く大人気教室へと成長した。

 セミナーや講演会、養成講座も手がけるなかで「遠方で教室には行けない」「モンテッソーリは興味があるけれどハードルが高い」といった声に応えるため、出版にも挑戦。

 デビュー作『世界で一番簡単なモンテッソーリ実践法 5歳までの魔法のおしごと』は5度の重版。中国・台湾、2カ国での翻訳出版も決定した。その後2作目『モンテッソーリ教育が教えてくれた 子どもの心を強くする10のタイミング』を執筆。表現の場を広げている。
 

丘山さんの著書。講演会では、自身の経験をもとに語る言葉が多くの共感を呼んでいる。

より多くの親子に必要な情報や居場所を提供するために

  

満面の笑みの子どもたち。「ちいさないす」の居心地の良さが伝わってくる。

 

 これまでに関わってきた親子は10年間で25,000組以上。「さまざまな背景を持つすべての人の個性が認められ、自分らしく幸せに生きられる社会をつくりたい」という想いを持つ丘山さんの根底にあるものとは。

 「私自身が異年齢、異文化教育の保育園に通っていました。日本国籍以外の子も何かしらのハンディキャップや障がいがある子も、みんなで過ごす環境のなかで、たっくんというダウン症の男の子と遊ぶのが大好きでした。時にはお手伝いをさせてもらい、それがとても楽しくて。その環境が私にとっての当たり前となりました。

 それから月日が過ぎ、私自身が目の病気になり、中高生時代に手術を繰り返す経験をしました。夢を諦めざるを得なかった入院生活の中で、盲目の方や病気を抱えている方とたくさん出会いました」

 幼少期と入院生活の経験から「さまざまな背景を持つすべての人の個性が認められ、自分らしく幸せに生きられる社会をつくりたい」という想いが生まれたという。

 その想いを胸に、これまで多くの親子に居場所を提供してきた丘山さんだが、今もなお教室はキャンセル待ちが絶えない状態だ。その期待に応えられるよう運営チームの構築も視野に入れている。

 「それぞれが得意なことを活かせる環境と仕組みをつくり、子育てをしながら働くことの楽しさも伝えていきたい。そうすれば、結果的にもっと多くの親子に必要な情報や居場所を提供できるようになります。そして、一人ひとりが安心して“自分らしく”生きられ、その人が持つ力や可能性が自然と発揮される、そんな世界をつくることが、可能になると思っています」

 子どもたちの可能性を心から信じ、命の育みをサポートする丘山さん。そして子どもだけでなく、丘山さんが自分自身の可能性をも広げ続けていることが、想いを実現する力に繋がっているのかもしれない。


 

Profile:丘山亜未

おかやま・あみ/モンテッソーリスクール「ちいさないす」主宰。日本乳幼児教育協会代表
娘の入院をきっかけに乳幼児の発達や育ちについて学び、子育てを楽しめるように。身近な子育て世代と学びを分かち合ううち、残りの人生を捧げて悩める人の力になりたいと決意し、退職後に教室を開室。「親子が自分らしく在りながら家庭が平和になる」ことを主眼とした学びと活動は、子どもにも母親にも寄り添いつつ的確なアドバイスがもらえると支持を得て10年で25,000組の親子にかかわる。これまでの経験をもとに刊行した著書「子どもの才能を伸ばす5歳までの魔法のおしごと」(青春出版社)は、日本のみならず、台湾・中国でも発売されベストセラーに。その後、2冊目の著書「子どもの心を強くする10のタイミング」を発売。乳幼児教室は常に満席、子育て・教育セミナーはいずれも即日満席で常にキャンセル待ち。幼児教育にとどまらず親子の幸せな人生を広めている。


丘山亜未さんのinstagramはこちら。
 

丘山亜未さんのHPはこちら。
 

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