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iFi audioはオーディオメーカーである前にテクノロジー企業だ

マニアが強い関心を示すイギリスiFi audio、その技術、デザイン、音へのこだわりとは? 革新が事業の発展を奏でる

2025年03月19日 08時20分更新

文● ASCII

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 イギリスのオーディオブランドiFi audioのグローバルセールス責任者マイルス・ロバーツ(Miles Roberts)氏が来日。iFi audioのブランドフィロソフィーや日本市場向けの戦略について説明した。

iFi audioのグローバルセールス責任者マイルス・ロバーツ氏

 iFi audioは2012年の設立。日本では2024年の夏からエミライが国内代理店を務めている。エミライの島幸太郎取締役は、オーディオ市場のトレンドとして「パーソナル化」が進んでいる点を指摘し、「iFi audioの先進的な技術や哲学が日本市場での成長に貢献する」とした。

国内代理店エミライの島幸太郎取締役

iFi audioの歴史と領域の拡大

 iFi audioは、ハイエンド機器を手掛けるオーディオブランドAMR(Abbingdon Music Research)から派生したブランドだ。

 AMRは2000年ごろから高い半導体技術を活用したオーディオ製品を展開してきた。しかしながら、2007年から2008年ごろに始まった金融危機を経て高価なオーディオ機器の需要に変化がみられた。また、ネットワーク技術が進化・普及して小型で高品質な製品を作れるようになった。これらを背景に「小型で高品質なパーソナルオーディオ」の開発に特化したブランドであるiFi audioが設立された。

iFi audioの主要メンバー

 本社はイギリスのサウスポートにあり、ここに約40名の従業員が働いている。セールスマーケティング、戦略/開発企画の立案、営業販売、全世界に向けた市場調査などの拠点だ。R&D(研究開発)拠点はイギリスのほか中国にもあり、中国やベトナムに生産拠点を持つほか、メキシコでも新工場を立ち上げる計画を持っている。

 技術を重視したブランドということもあり、実に全社員の1/3がR&Dに従事している状況だという。過去10年で30を超える特許も取得した。

本社の外観、ビクトリア調時代のアンティークな雰囲気がある素敵な建物だ。

AMRやiFi audioなど各ブランドの関係性

 創業から10年を経たiFi audioが気づいた興味深い要素としてロバーツ氏は「プロユーザー(専門家)の需要が増えた」点を指摘する。その典型例がジム・アンダーソン氏。過去にグラミー賞を受賞したこともある同氏もiFi audioの小型USB DAC「Gryphon」を活用しているそうだ。

 iFi audioは2023年からプロフェッショナル向けブランド「iFi Studio」を立ち上げ、スタジオ向けのDAC やヘッドホンアンプを展開している。また、2024年には新しい領域として音質改善アクセサリーに特化したブランド「SilentPower」を創設。「LAN iSilencer」などのヒット商品を世に送り出している。

 ホームオーディオ分野では75〜400ドルを中心に全体では40〜5000ドル。ポータブルでは40〜1300ドルの価格レンジでアンプ、DAC、インターフェース、ストリーマーなどの製品を展開している。

パーソナルオーディオ製品

ホームオーディオ製品

iFi audioのグローバル展開体制

iFi audioの強みは?

 オーディオ業界で35年以上の経験を持つというマイルス氏は、製品開発の哲学と先端技術に関わるiFi audioの強みとして以下の4点をあげる。

  1. 美しいデザイン
  2. 優れた回路設計
  3. 高品質な生産管理
  4. 市場関係者とのパートナーシップ

 デザインについては、フランス人デザイナーJulian氏が担当、他社製品にないiFi audioらしい印象的で個性的なデザインを展開している。

 回路設計ではクアルコム、XMOS、バーブラウンなどと協力しながら、カスタマイズなども通じて改良と新規設計に取り組んでいる。標準的なSoCをただ採用するだけでなく、その性能を最大限引き出せる技術開発にも意欲的だ。DSD 256/512/1024の再生やアップサンプリングの搭載や電源のノイズキャンセリング技術(ANC Power Supply)なども開発。MQAやLDAC、aptX Lossless、K2HDなどの対応なども業界に先駆けて果たしており、多くの「世界初」やカッティングエッジの技術に着目した製品の開発を達成している。最近では、xMEMSのシリコンドライバーなど対応したアンプ製品「iDSD Diablo2」などが印象的だ。

 製品の開発に際しては高品質・内製化にこだわっている。プレミアムクラスのサプライヤーと協業しており、アップル、ソニー、B&Oなど世界的なブランド向けにコンポーネント提供をしているところと協力関係にあるという。ISO 9001、ISO 14001、FMEA、あるいは日本の技適や欧州のROHSなど各国の基準も遵守している。

日本のJVCケンウッドともタイトな関係性を構築

 2024年には、JVCケンウッドの「K2テクノロジー」を搭載したスティック型USB DAC「GO bar 剣聖」を発表。K2は日本ビクター時代の1987年から開発された高音質処理技術で、圧縮などで失われた高域情報を補正。ビクタースタジオが持つ豊富なマスターデータなども活用しつつ、最終的にはエンジニアの耳で音質を保証する点が特徴となっている。

JVCケンウッドで音質マイスターを務める秋元秀之氏も登壇し、K2技術について解説した。

 マイルス氏はiFi audioはオーディオメーカーである前にテクノロジー企業であると述べ、市場のフォロワーではなく、リーダーであり続けるという理念を掲げている。革新的な技術と戦略でオーディオ市場をリードし続けていく姿勢を強調した。こういった姿勢は日本市場でも評価されており、コンパクトかつ高品質な製品群が新たなオーディオファンを獲得し続けている。

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