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AI企業の誇大広告に「待った」、米FTCが政権交代前の大仕事

2024年12月15日 09時01分更新

文● James O'Donnell

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Graeme Sloan/Sipa USA via AP Images

画像クレジット:Graeme Sloan/Sipa USA via AP Images

米国連邦取引委員会(FTC)がAI企業による誇大宣伝や虚偽表示を追求している。カーン委員長の任期終了が迫る中、次々と措置を講じ、業界の放漫な主張に歯止めをかけようとしている。

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

人工知能(AI)分野は競争の欠如と多くの偽りに悩まされている——。少なくともワシントンでの最新の動きは、そう解釈できるものだ。

米連邦議会のエリザベス・ウォーレン上院議員(民主党)とエリック・シュミット上院議員(共和党、元グーグル会長とは別人)は12月5日、米国防総省がAIとクラウド・コンピューティング分野で発注する契約について、さらなる競争を促進することを目的とした法案を提出した。 現在、これらの契約は、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、オラクルが独占している。「AI分野で大手企業がより大きくなる方法は、他のすべての人のデータを吸い上げ、それを使って自社のシステムを訓練し、拡張することです」。ウォーレン議員はワシントンポスト紙にこう語った。

ウォーレン議員らの新しい法案は、契約に対して「競争入札プロセスを義務付ける」もので、国防総省がクラウドサービスやAI基盤モデルの企業に対し「入札なし」に発注することを禁止する。ちなみに、両議員によるこの動きの前日には、オープンAI(OpenAI)がアンドゥリル(Anduril)との提携を発表し、自社のテクノロジーを初めて戦場に配備することを発表している。軍との協力を否定する方針を1年で完全に覆した格好だ。

グーグルに対する検索分野での独占状態に関する現在進行中の訴訟や、マイクロソフトに対して始まった新たな捜査など、巨大テック企業が反トラスト法(独占禁止法)違反捜査で打撃を受ける一方で、規制当局もまた、AI企業があからさまな嘘をついているとして非難している。

米国連邦取引委員会(FTC)は12月3日、スマートカメラ企業のインテリビジョン(IntelliVision)に対して、顔認識テクノロジーについて虚偽の主張をしているとして措置を講じた。インテリビジョンは、家庭用と業務用どちらの防犯カメラシステムにも使用されている自社のAIモデルについて、ジェンダーや人種のバイアスを持つことなく動作し、数百万枚の画像で訓練されていると宣伝してきた。FTCによれば、この2つの主張は虚偽であるという(バイアスに関する主張に裏付けはなく、システムは10万枚の画像でしか訓練されていないと、FTCは述べている)。

その1週間前、FTCは、大手セキュリティ企業のエヴォルブ(Evolv)に対し、同様の偽りを指摘する主張を発表している。エヴォルブは、スタジアム、幼稚園から高校までの学校、および病院に対し、AI搭載のセキュリティ・ゲート製品を販売している。エヴォルブは自社のシステムを、単純な金属探知機よりも優れた保護を提供すると宣伝し、AIを利用して銃やナイフなどの脅威を正確に検査する一方で、無害な持ち物は無視するとしている。しかしFTCは、エヴォルブは自社システムの精度を誇張して述べており、重大な結果をもたらす事例で失敗していると主張する。たとえば2022年の事件では、最終的に生徒を刺すのに使われた約18センチのナイフを検知できなかった。

FTCは9月にも、偽の製品レビューを生成するツールを販売する企業や、「AI弁護士」サービスを販売する企業など、多くのAI企業を告発している。

今回の措置は、いささか手ぬるいものだ。インテリビジョンとエヴォルブは実際に罰金を科されていない。FTCは両社に対し、エビデンスの提示できない主張を禁じただけである。またエヴォルブには、一定条件の顧客が希望すれば契約を解除できるようにすることを求めている。

ただ、これら一連の動きは、FTCのリナ・カーン委員長がドナルド・トランプ次期大統領の就任に伴って交代させられるまでの最後の数カ月間で、AI業界の誇大宣伝を抑制しようとする取り組みの一環だと言える。ここ数週間の連邦政府機関の指名人事の動きを見ると、FTCは他の機関よりもはるかにスムーズにリーダーシップが移行される見込みだ。12月5日、トランプ次期大統領はFTCのトップに、J・D・ヴァンス次期副大統領の元側近で、技術政策アドバイザーのゲイル・スレーターを選んだことを発表した。トランプ次期大統領は、FTCがスレーター次期委員長の下でグーグル、アマゾン、マイクロソフトなどの巨大テック企業に照準を合わせ続けることを示唆している。

「巨大テック企業は長年にわたって自由気ままに振る舞い、最も革新的な分野での競争を抑圧し、誰もが知っているとおり、その市場支配力を利用して非常に多くの米国人の権利や、小規模なテック企業の権利を弾圧してきました」と、トランプ次期大統領は次期FTC委員長の発表の場で述べた。「私は大統領1期目でそのような力の乱用と闘うことを誇りにしていました。そして司法省の独占禁止チームは、ゲイルのリーダーシップの下でその仕事を続けることになります」。

とはいえ、トランプ次期大統領の巨大テック企業に対する不満の少なくとも一部は、異なる種類のものだ。たとえばトランプ次期大統領は、保守派が検閲や偏見の標的になるかもしれないことを懸念している。そのことにより、独占禁止の取り組みが、トランプの監視下で明らかに新しい方向へと向かう可能性がある。


米国防総省がディープフェイク検知に投資

米軍内のテクノロジー推進組織である国防イノベーション・ユニットが、ディープフェイク検知に関する最初の契約を発注した。ハイブAI(Hive AI)は2年間で240万ドルを受け取り、AIが生成した動画、画像、音声コンテンツの検知に役立てる。

超リアルなディープフェイクの作成がより安価かつ容易になり、本物を見抜くのがますます難しくなっている。ディープフェイク検知に対する軍の投資は、この問題が国家安全保障とも密接に関わっていることを示している。未解決の問題は、そのような検知ツールがどの程度の精度であるかということと、ディープフェイク生成技術が容赦なく向上しているスピードに検知ツールがついていけるかどうかということである。詳しくは、メリッサ・ヘイッキラ記者の記事を読んでほしい

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  • LAタイムズのオーナーが、AIで動作する「バイアスメーター」をニュース記事に追加することを計画している。パトリック・スンシオンは、読者が「ボタンを押すと、記事の両方の側面を理解」できるようになるツールを構築している。しかし、ニュースに対する客観的な見解を何らかの形で提供できるAIモデルを作ろうとすることは、モデル自体が訓練データと微調整手法の両方によってバイアスがかかっていることを考えると、議論の余地がある。(ヤフー
  • グーグル・ディープマインドの新しいAIモデルによる天気予報はこれまでで最高の性能だ。このAIモデルは、グーグル・ディープマインド(Google DeepMind)がここ数カ月でリリースした2つ目のAI気象モデルである。しかし、今回のモデルはこれまでと異なる。従来の物理学モデルを省き、AI予測手法だけに頼っているのだ。(MITテクノロジーレビュー
  • エヌビディアのジェン・スン・フアンCEOが80億ドルの税金を回避している方法。ジェン・スン・フアンCEO(最高経営責任者)は、世界トップのチップメーカーで、最も時価総額の高い企業、エヌビディアを経営している。フアンCEOの富はAIブームの間に急拡大した。そして、ニューヨーク・タイムズ紙によると、フアンCEOは「財産の多くを非課税で譲渡することを可能にする」多くの税金逃れ手法を利用している。(ニューヨーク・タイムズ
  • メタはAIの野望のために原子力を追求している。メタはAIの訓練と開発に必要な電力をもっとたくさん原子力エネルギーによる発電で賄いたいと考え、アマゾンやマイクロソフトの仲間入りをする。このニュースは、AIによるエネルギー需要が急増する現状において、巨大テック企業の多くが持続可能性目標の達成に苦労している中でもたらされた。(メタ

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