丸の内からイノベーションを世界に発信!「Marunouchi Crossing 2024」開催

文●MOVIEW 清水 / 編集● ASCII 村野晃一

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 丸の内仲通りがイルミネーションできらめく12月。ブランドショップやレストランなどがクリスマスの装いに変わり、恒例の大きなクリスマスツリー(今年はスーパーマリオとコラボレーションしたオブジェ)が飾られ、それを臨む人々が楽しげな表情を見せる丸ビルにて、オープンイノベーションの現在と未来を探求する1Dayイベント「Marunouchi Crossing 2024」が開催された。

 時代に応じてその顔を変化させてきた丸の内は、大企業の本社が集まる、いわば日本の経済・金融の中心地でもある。そこに集まる人々の出会い、そしてそこから紡がれる発想や協働は、これからの日本を推進していくイノベーションが生まれる地として最適な地域の一つだ。今回開催された「Marunouchi Crossing 2024」にも大企業、スタートアップ、アカデミア、行政と、多様な方々が来場し、会場となった丸ビルホールは立ち見も出るほどの盛況振りであった。

 「共創、そして結実へ。」をテーマにトークセッションやピッチが行われたこのイベントのオープニングには主催のユーザベース 代表取締役 Co-CEO/CTO 稲垣裕介氏と、特別協賛の三菱地所 代表執行役 執行役社長 中島 篤氏が登壇。続いて実施されたオープニングセッションには行政、スタートアップ、アカデミアの視点で語れるパネリストが、日本のオープンイノベーションについてそれぞれの意見を披露するトークセッションとなった。

 今回は、丸の内が日本発のイノベーションを世界に発信する起点となることを目指す目的で開催された本イベントで語られた中から、その一端を感じさせた話を一部紹介しよう。

稲垣裕介氏と中島 篤氏によるオープニングトーク

失敗しても前を向ける状態を作ることが重要
ユーザベース 代表取締役 Co-CEO/CTO 稲垣裕介氏

ユーザベース 代表取締役 Co-CEO/CTO 稲垣裕介氏

 私たちが起業した16年前に比べるとスタートアップが起業しやすい状況です。しかし、スタートアップエコシステムの中での限界を1つ感じています。スタートアップはリスクがあるからこそ必ずリスクバッファをきちんと取って、失敗をしたとしても前を向けるような状態を作るということが非常に重要だと思っています。

 また、ビジネスは人と人によって成り立つものでもあるからこそ、このイベントのようなリアルな場に来ることも重要ですし、何度もお会いして自分たちの価値を理解していただき、人としての信頼してもらって、それで初めてオープンイノベーションが前に進んでいくものと思います。今日はその1つのスタートの場として、改めて皆様と一緒にいろんな議論ができたら嬉しいなという風に思っております。

あらゆるステークスホルダーがつながるコミュニティを運営
三菱地所 代表執行役 執行役社長 中島 篤氏

三菱地所 代表執行役 執行役社長 中島 篤氏

 「三菱地所と次に行こう」というスローガンを掲げ、未来、より良い未来を築いていく企業活動進めています。しかし、イノベーションやりましょうと言えばそれで済むっていうことではないわけで、スタートアップの方々、大企業、大学、ベンチャーキャピタルなどなどがそれぞれの強みを活かして必要なものを持ち寄り、循環していくイノベーションエコシステムを作っていくことが重要だと考えています。

 この丸の内エリアは我々の創業の地です。そこでスタートアップ向けのイノベーションエコシステムを作っていこうという取り組みを数多く重ねています。あらゆるステークスホルダーに繋がっていただくためのコミュニティプラットフォームとして「TMIP」を運営し、過去5年間で参加団体の数が300を超え、活動してる方々は2万5000人以上。大企業の新規事業創出を支援しているのでフルに活用していただけるとありがたいなと思っています。

行政、スタートアップ、アカデミアの視点で実施されたトークセッション
(NewsPicks Brand Designプロデュース)

 ソーシャル経済メディア「NewsPicks」の Brand Design企画 オープニングセッションは17年間、一貫してスタートアップとイノベーション支援をしているデロイト トーマツ ベンチャーサポート 取締役COO 木村将之氏が司会となり、中小企業基盤整備機構 創業・ベンチャー支援部 部長 石井芳明氏、ジェネシア・ベンチャーズ 代表取締役/General Partner 田島聡一氏、アークレブ 代表取締役CEO/共同創業者 慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート 特任教授 浅井 誠氏をパネリストに、それぞれの視点で日本のイノベーションの現状、未来について語られた。

左から中小企業基盤整備機構 創業・ベンチャー支援部 部長 石井芳明氏、ジェネシア・ベンチャーズ 代表取締役/General Partner 田島聡一氏、アークレブ 代表取締役CEO/共同創業者 慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート 特任教授 浅井 誠氏、デロイト トーマツ ベンチャーサポート 取締役COO 木村将之氏

 トークセッションは3つのテーマについて実施され、1つ目のテーマ「世界・日本国内のオープンイノベーションの現状」では海外と日本のイノベーションへのアプローチの仕方や課題などをパネリストそれぞれの視点から提示し、2つ目のテーマ「『結実する』オープンイノベーションとは」では、行政の取り組みや企業のDXの重要性、オープンイノベーションエコシステムなど、広い範囲の意見が説かれた。

 3つ目のテーマ「結実するオープンイノベーションに向けて最も期待するプレイヤー・その理由は?」では、イノベーターの所在、企業からの投資に対する覚悟、日本の企業における意思決定プロセスの課題、スピード感など、イノベーションにおいて必要とされる要素について意見が交換され、会場に集った事業会社や金融機関、デベロッパーに対して期待感を込めて働きかけがなされた。

 丸の内は日本の経済・金融の単なる中心地ではなく、こうしたイベントを含め、様々な人が交流できる場だ。オープニングトークで中島氏は「三菱グループでは、皆様とともに新しい価値を創造していき、日本のイノベーションを推進したいと考えております。今日のこのイベントが皆様の出会いとか交流、あるいは競争、これに資するものになることを期待しております」と述べていたが、こうした活動が次の時代の日本を輝かせてくれるのではないか。そのような空気を感じるイベントであった。