みなさん、こんにちは。
私たち、横浜市芸術文化振興財団は、美術、音楽、ダンス、古典芸能など、アートの力を活かして、横浜の魅力を高める活動をしています。
この連載ではリレー形式で10回に渡り、新たなアートイベントの楽しみ方、文化施設周辺の街歩きなど、アートを切り口に街の魅力をお届けします。
第1回は、アーツコミッション・ヨコハマを担当する森が、横浜の郊外部で地域に根ざすアートをご紹介します。
アーツコミッション・ヨコハマ??
「横浜で芸術鑑賞」と聞くと、都心臨海部の文化施設を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。「アーツコミッション・ヨコハマ」(以下、ACY)は施設を持たず、アートと社会のつながりを生み出す中間支援プログラムです。その一環として、アーティストが横浜に滞在してリサーチや創作活動を行う支援をしています。今年は審査で選ばれたアーティストが市内5か所に滞在しました。今回はそのうちの1つをご紹介します。
暮らしの近くのアート拠点
二俣川駅または東戸塚駅からバスに揺られると、「左近山団地」に到着します。緑豊かな地域に昭和40年代前半に商店街や学校もある街のような団地として作られました。そんな団地のショッピングセンターの中にある「左近山アトリエ131110」は店舗を活用したアート拠点。日頃からカフェとして地域の方が気軽に立ち寄る場になっていて、シェアキッチンで作られる日替わりメニューは何度も訪れたくなる美味しさです。定期的にギャラリーやワークショップ会場として展示やものづくりを楽しめるほか、時には屋外の広場も巻き込んだフェティバルを開催するなど様々な活動を展開しています。
アーティストがやってきた!
左近山アトリエ131110に滞在をしたのは工藤春香さん。社会の周縁におかれる人々へ想像をはたらかせているアーティストです。文献調査や聞き取りなどを元に、文章やオブジェ、映像を組み合わせた作品を制作します。
今回、工藤さんは「障がい児の母たち」に目を向け、横浜市内の戦後の市民による福祉の取り組みを紐解いています。また、ケアの役割を担う時間の多い障がい児のお母さん方と一緒に作品をつくり、自分のための時間をすごすワークショップも行いました。左近山特別支援学校の協力の元、おしゃべりを交え、自分の好きな形をねんどで表します。できあがった作品には「母」という属性は関係ない、その人らしさが見えてきます。
取材を進めるうちに、障がいのある当事者も親たちも皆、社会に自分たちがいられるように居場所づくりをしてきたことを実感したと工藤さんは言います。また、「なぜ居場所がなかったのか?作らなければならなかったのか」とも。工藤さんの活動を通して作られた作品は、1月21日(火)から2月9日(日)まで開催される展覧会でご覧いただけます。
左近山アトリエ131110以外にも、地域のコミュニティ拠点やアーティストが運営するスペースでは様々な取り組みや発表が行われています。ACYではこうしたアーティストと地域の拠点での活動をふりかえる「ACY感謝祭」を2月15日(土)に行います。
地域の方々やアーティストの生の声を聞くと、知らなかった横浜のローカルな地域性やアーティストの創造力に触れられるはずです。ぜひ、お立ち寄りください。
▼スポット・イベント紹介
アーツコミッション・ヨコハマ
■左近山アトリエ131110
横浜市旭区左近山16-1 左近山団地1-31-110
相鉄バス旭1/旭6系統「左近山第2」バス停にて下車、徒歩1分
営業時間:11:00~17:00
定休日:月曜・木曜
公式HP:https://131110.art/
Instagram:https://www.instagram.com/sakonyama131110/
■工藤春香 個展「わたしたちがいるために」
会期:2025年1月21日(火)~2月9日(日)
会場:左近山アトリエ 131110
*詳細は左近山アトリエ131110のHPをご確認ください
■ACY感謝祭
日時:2025年2月15日(土)時間:14:00-18:00(予定)
会場:横浜市役所アトリウム(横浜市中区本町6丁目61−2)
▼執筆者紹介
文:森 絵里花
プロフィール:神奈川県出身。公立美術館で教育普及や社会包摂、市民参画、広場事業に携わった後、2023年に横浜市芸術文化振興財団に入職。2024年よりアーツコミッション・ヨコハマを担当。地図アプリに気になる飲食店のブックマークが増えてくると、街に馴染んできた気がする。横浜ビギナーだが横浜中華街をせっせと開拓中。左近山アトリエ 131110のオススメメニューは夏場にいただく紫蘇ジュース。