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米国の乳牛に鳥インフル蔓延、ヒトへの感染にも警戒を

2024年12月04日 14時40分更新

文● Jessica Hamzelou

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JoNel Aleccia/AP

画像クレジット:JoNel Aleccia/AP

鳥インフルエンザの感染例が米国で増加し、牛や乳製品からもウイルスが検出されている。季節性インフルエンザの流行に伴い、ウイルスが進化し、ヒトとヒトの間の感染を引き起こす可能性にも警戒する必要がある。

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

鳥インフルエンザをどの程度心配するべきだろうか。この数週間で、友人や同僚から何度か聞かれた質問だ。彼らの懸念に拍車をかけているのは、米国で厄介なことになる可能性のある事態がいくつか広がっていることだ。たとえば、乳牛の間で鳥インフルエンザのウイルスが広がり続けていることや、牛乳豚からもウイルスが検出されたこと、そして最も懸念されることとして、人間への感染例が増加していることなどである。

私も心配していることは認めよう。このウイルスが人々の間で広がっているというエビデンス(科学的根拠)はまだない。だが、潜在的なパンデミックのリスクは、前回このテーマを取り上げた数カ月前以降、高まり続けている。

そのようなリスクの高まりに加えて、次期大統領政権に交代し、米国の保健機関が生乳の消費促進を謳うワクチン否定論者の手に委ねられる事態が組み合わされば、何と言うか、まったく安心はできない。

ただ、安心材料もある。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に直面した2020年当時よりも、将来可能性のあるあらゆるインフルエンザの大流行への対処に関し、私たちははるかに準備が整っているということだ。しかし全体的に見れば、あまり良い状況ではないようだ。

現在、米国の乳牛に広がっている鳥インフルエンザは、H5N1ウイルスによるものである。このウイルスは鳥の個体群によっては特に致死率が高く、ここ数年にわたり家禽や海鳥が全滅する事態を引き起こしてきた。また、それらの鳥と接触した多くの哺乳類にも、致命的な感染を引き起こしている。

H5N1は、今年3月にテキサス州で初めて乳牛から検出された。米国農務省動植物検疫局(APHIS)によれば、このウイルスは現在、15州にわたる675の牛群で報告されている。

これらの数字は、私たちが把握している事例に関するものだけである。実際にはもっと多いかもしれない。米国農務省は、州をまたいで牛を移動させる場合、事前に検査を実施することを義務付けている。また、牛乳のバルクタンクにウイルスが存在するかどうか知りたい酪農家に対し、自発的な検査プログラムを提供している。しかし、このプログラムへの参加は任意だ。

独自の規則を設けている州もある。コロラド州は、7月以降、認可を受けた酪農場に対し、牛乳のバルクタンクの検査を義務付けている。ペンシルバニア州農務局は11月20日に、対策プログラムの計画を発表したばかりだ。しかし、そのような要件を設けていない州もある。

米国農務省は10月末、豚からウイルスが初めて検出されたことを報告した。この豚は、オレゴン州の「家禽と家畜が混在する」農場で飼われていた5頭のうちの1頭だった。5頭の豚はすべて殺処分された

ウイルス学者たちは、このウイルスが豚に感染することを特に心配してきた。豚は、ウイルス培養器の役目を果たすことで悪名高いためだ。「豚は、豚インフルエンザ株、鳥インフルエンザ株、そしてヒトインフルエンザ株に感染する可能性があります」と、ノースカロライナ州にあるウェイクフォレスト大学の感染症疫学者であるブリンクリー・ベロッティ助教授は言う。それらのウイルス株は遺伝子を交換して、より感染力の強い、あるいはより有害な可能性のある、新しい株を誕生させる可能性がある。

ありがたいことに、養豚場で他の感染例は確認されておらず、このウイルスが豚と豚の間で感染可能というエビデンスもない。そして、牛の間では非常に急速に広がっているが、ウイルス自体はあまり進化していないようであると、ジョージア州アトランタにあるエモリー大学医学部のウイルス学者、シーマ・ラクダワラ准教授は言う。つまり、このウイルスが、おそらく鳥から牛に感染したのは、一度だけである可能性が示されている。そしてそれ以降、牛の群れの中で広がってきたのだ。

残念ながら、どのようにして広がっているのかは、まだ分かっていない。共有の搾乳器具を通してウイルスが牛から牛へと感染する可能性があることを示すエビデンスは、いくつかある。しかし、農場間でウイルスが広がっている方法については、はっきりしない。「広がり方が正確に分かっていないときに、効果的な制御戦略を立てるのは難しい」と、ベロッティ助教授は言う。

しかし、ウイルスは牛の中に存在する。そして、牛の乳汁にも存在する。牛乳、クリーム、チーズなど297種のグレードA低温殺菌乳製品のサンプルを分析したところ、20%からH5N1由来のウイルスRNAが見つかった。それらのサンプルは、全米の17州から集められたものだった。この調査が実施されたのは、最初に牛からウイルスが検出されたわずか数週間後の4月である。「低温殺菌牛乳にウイルスのDNAが含まれていたのに、私たちの健康にまったく問題がないのは驚きです」と、ラクダワラ准教授は言う。

研究では、牛乳が低温殺菌されている限り、このウイルスは感染しない可能性が示されている。しかしラクダワラ准教授は、低温殺菌ですべてのウイルスを常に不活性化できるわけではないことを懸念している。「(感染するためには)どれだけの量のウイルスを摂取する必要があるのか、そして低温殺菌をすり抜けるウイルスが存在するのかどうかは、分かっていません」。

低温殺菌処理されていない生乳も安心できない。牛がH5N1に感染すると、その牛の乳汁は濃厚で黄色く、「もったり」とした状態になることがある。しかし研究では、乳汁が正常な見た目に戻り始めたとしても、まだ潜在的に感染性のあるウイルスが含まれている可能性があることが示されている。

最も懸念される状況は、人間への感染例の増加である。米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、これまでに米国で55例のH5N1鳥インフルエンザ感染が報告されている。そのうちの29例が、カリフォルニア州で見つかったものだ。ほぼすべてのケースで、感染者は農場の畜牛や家禽から感染したと考えられている。しかし、そのうちの2例は、感染源が分かっていない

カナダのブリティッシュコロンビア州に住む10代の患者が、どのようにして鳥インフルエンザに感染したのか、保険専門家たちも把握できていない。11月2日に目の感染症で医師の診察を受けたこの匿名の患者は、現在も重篤な症状で入院中であり、呼吸を人工呼吸器に頼り続けている。地元の保健当局は、この患者の感染経路調査を打ち切った

他にももっと、報告されていない症例があるのかもしれない。ミシガン州とコロラド州の酪農従事者115人を検査したところ、その7%で、最近このウイルスに感染した形跡が見つかった。

今のところ、このウイルスがヒトとヒトの間で感染できるというエビデンスはない。しかし、人間が感染するたびに、このウイルスはヒトへの感染が可能な形態に進化する新たな機会を得ることになる。人間はウイルスの培養器にもなりうる。そしてインフルエンザの流行シーズンには、周期的な季節性インフルエンザとH5N1ウイルスが混在する機会が増える

「現在、ヒトからヒトへの感染が見られないからといって、そのような感染を起こす能力がない、またはそのような感染は起こらない、あるいはまだ起こっていないということにはなりません」と、ラクダワラ准教授は言う。

では、これからどうなるのか? ラクダワラ准教授は、すでに酪農従事者へのワクチン接種を開始しているべきだったと考えている。結局のところ、米国にはすでに、H5N1用のワクチンの備蓄がある。以前に見つかったこのウイルスの亜種から守られるように設計されたワクチンだ。「(ヒトへの感染が)十分な深刻さで受け止められていません」と、同准教授は言う。

私たちは、ウイルスが広がっている方法もより正確に把握し、まん延を阻止するためのより効果的な対策を講じる必要がある。そのためには、少なくとも牛と酪農場の労働者、両方の検査を増やさなければならない。そして、米国保健社会福祉省長官の最有力候補であるロバート・F・ケネディ・ジュニアが何を言おうとも、生乳は危険な可能性があり、ワクチンはパンデミックを防ぐ重要な手段であることを明確にする必要がある。

鳥インフルエンザのアウトブレイク(集団発生)が、世界的な大惨事に発展するのを防ぐチャンスはまだある。しかし、状況は夏以降、悪化している。「2009年にパンデミックが始まったときのような状況です」と、ラクダワラ准教授はH1N1豚インフルエンザのパンデミックに言及して言う。「まず、散発的に2、3の感染例が起こり、気がついたときには至るところで見られるようになっていたのです」。

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米国はH5N1ワクチン数百万回分の備蓄を計画している。しかし、現在のインフルエンザワクチンの製造方法は、時間と手間がかかる。卵の使用に頼らない、つまりmRNAを使用する新しいワクチンが、より優れた代替手段になるかもしれない。

畜牛の間で鳥インフルエンザが広がっている米国で、すでにインフルエンザの季節が始まっている。そのためウイルス学者たちは、両方のウイルスに感染した人が、無自覚のままこのウイルスのまったく新しい株を培養してしまう可能性を心配している。

ロバート・F・ケネディ・ジュニアは、エイズと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する有害な偽情報、疑似科学、そして非主流理論を広めている

一部の研究者が、家禽類の間でH5N1が広がるのを防ぐ新たな方法を模索している。昨年発表された予備的研究によれば、遺伝子編集ツールであるクリスパー(CRISPR)を利用することで、H5N1ウイルスに対するニワトリの抵抗性を高められる可能性がある。


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