近鉄西大寺駅前の商業施設、奈良ファミリー内の「らくだ広場」で10月25日、奈良公園の楽しみ方を紹介するトークショーが開催された。識者として登壇したのは、今年3月に刊行された書籍「奈良公園の案内書 ~極(きわみ)~」の監修者である奈良県立図書情報館館長の千田稔氏と、同書の執筆者の一人である奈良県立万葉文化館研究員の井上さやか氏。
会場横ではジュンク堂奈良店による書籍の即売も実施。トークショー後には2人によるサイン会も行われるとあり、開場前から書籍を片手に待つ人々もチラホラ現れ、今回のイベントに対する関心の高さが感じられた。
奈良への熱い思いが会場を包む
午後2時、トークショーがスタート。司会者による登壇者の紹介の後、まずは千田氏による講演「平城京外京と奈良公園」。外京というのは平城京の東側に張り出したエリア。ここには興福寺や元興寺、紀寺などが当時から建っているのだが、特に見晴らしのいい場所にあるのが藤原氏の氏寺である興福寺。その頃の藤原氏の権力の大きさがうかがい知れる。
そういう歴史も含めて、外京の成り立ちや藤原氏との関係などを千田氏が解説。また、明治時代に日本に招かれて29年間も滞日したドイツ人医師エルヴィン・フォン・ベルツをはじめ、かつて奈良公園を訪れた数々の著名人の言葉を引用し、「奈良公園は世界に誇れる日本一美しい公園です。みなさん、もっと誇りを持っていいのでは」の言葉に地元の来場者が大きくうなずく一幕も。
知れば知るほど面白い、万葉の歌
千田氏の話に続き、井上氏は自身の研究分野である『万葉集』の中から、「春日野の野遊び」「春日野と月」を題材にした奈良公園ゆかりの万葉歌を詠みあげ、歌に込められた思いを説明。事前に配布されていた資料に熱心にメモを取る参加者も。地名や植物の名前などを具体的に示しながら語る井上氏の解説は分かりやすく、みなさん『万葉集』への興味が増したのでは。
千田氏、井上氏それぞれのパートの後は、奈良公園についてのトークセッション。『万葉集』の話をきっかけに、『万葉集』に詠まれる植物では萩を取り上げたものが一番多いという話や、「あすか」という地名は「飛鳥」と「明日香」の2つの書き方がある話など、思わずうなずく話も多く、あっという間に予定の1時間が過ぎた。
参加者も大満足!?サイン会も大盛り上がり
トークショーが終わると、皆さんお待ちかねのサイン会が始まった。会場横では「奈良公園の案内書 ~極~」と一緒に2人の著作も販売。サインをしてもらえるとあって、来場者の多くが自分の気に入った書籍を買い求めて、サイン会の列に並んだ。
サイン会では、参加者がサインの合間に奈良公園や『万葉集』について気になることを質問したり、それに対し両氏もにこやかに答えたり。終始和やかな雰囲気で行われた。
奈良に住んでいるから、もっと奈良を知りたい
秋の1日、平日の午後にもかかわらず奈良ファミリーに足を運んだ参加者。その多くは奈良県内から来られた方々だ。イベント前に書籍を購入した方も、今回会場で手に入れた方も、自分の住む奈良に関心を持ち、またその歴史を知りたいと思う気持ちが伝わってくる。奈良には古の時間が流れ、今に続く。歴史に触れることで、今の奈良の魅力をもっと知れる。そんなことをじっくり感じさせてくれるイベントであった。
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