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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第301回

カルビー「じゃがりこNFT」 日本の大企業、Web3に本腰か

2024年09月17日 07時00分更新

文● 小島寛明

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CryptoGames(クリプト・スペルズ)

 このところ、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)を日本の大企業が活用する事例をちらほら目にするようになってきた。

 企業名を見ると、SBI、ソニー、カルビーなどが挙げられる。「SBIはずっと前から仮想通貨やブロックチェーンに張り込んできただろ!」というツッコミが聞こえてきそうだが、長く取り組んでいるだけに、本気度は高いように思われる。

 興味深い事例として挙げられるのは、カルビーの動きだ。カードゲームの「CRYPTO SPELLS(クリプト・スペルズ)」で、「じゃがりこ」のNFTをつくった。仮想通貨(暗号資産)やNFTにとても詳しい人を除くと、何を言っているのか分からないかもしれない。正直、筆者もすぐには理解が追いつかなかった。丁寧に整理を試みたい。

NFTを使った広告キャンペーン

 話は少し横道にそれるが、秋葉原駅の電気街口の改札を出ると、小さなトレーディングカードの店が軒を連ねている。最近人気が高いのは、ポケモンカードとワンピースカードのようだ。見ると、数十万円のレアカードもある。個人的におもしろいと思ったのは、ムンクの「叫び」をモチーフにしたポケモンカードだ。「叫び」のような歪んだ風景の中で、ピカチュウやコダックが叫んでいる。6年ほど前に都内の美術館が「ムンク展」を開催した際に配布されたもので、制作された枚数が限られているためか、数十万円で取引されていることもあるようだ。

 このトレーディングカードをデジタル化したのが、クリプト・スペルズなどの「ブロックチェーンカードゲーム」だ。カードはあらかじめ発行枚数が設定されていて、だれが(どのアカウントが)どのカードを所有しているのかは、ブロックチェーン上に記録される。ブロックチェーンは、ほぼ改ざんが不可能とされるだけに、カードの偽造も困難な仕組みだ。

 クリプト・スペルズでは、運営が提供するカードだけでなく、プレイヤーも「オリジナルカード」を発行できる。こうした仕組みを利用したのが、じゃがりこのカードだ。HEAL3(ヘルスリー)という別のスマホアプリも絡むキャンペーンでつくられたのが、じゃがりこのカードだが、話が複雑になるのでここでは触れない。

 じゃがりこのカードには、チーズとサラダのカードがあり、それぞれ300枚が発行されているようだ。カードには体力や攻撃力、カードを使った時の効果などが書かれている。ざっと調べた限りだが、クリプト・スペルズのカードも希少性の高いカードは数十万円相当の仮想通貨で取引されている。

 そして、こうしたカードが取引されるのが、SBINFTやコインチェックなどが運営するマーケットプレイスだ。SBINFTのマーケットプレイスでも、クリプト・スペルズのカードが販売されている。SBINFTのマーケットプレイスでは、JR東海エージェンシーがつくった新幹線のデジタルアートも数千円で販売されていた。

推し活とNFT

 SBINFTは9月13日に、ローソンエンタテインメントと組み、韓国にミュージカルを観に行くツアーでNFTを活用する企画を発表している。おおまかな、仕組みは以下のようなものだ。

 ツアーの参加者には、NFTが配布される。NFTの一つは、チケットとして機能し、ミュージカルの劇場に入る際に、ツアー参加者は、チケットとしてNFTを提示することになる。加えて、ツアー参加者に配布されたNFTを提携先のレストランで提示すると、割引やプレゼントが提供される。

 NFTのマーケットプレイスでは、アイドルグループのトレーディングカードも販売されている。その昔、原宿や渋谷を歩くとアイドルの「生写真」が売られていた。アイドルのトレカはデジタル生写真に相当する商品だろう。たとえば、ライブや握手会、ミュージカルといったイベントに参加した人に対して、デジタル写真をNFTとして配布する。そのデジタル写真が希少性の高いものであれば、別のファンに転売することもできるだろう。SBINFTとローソンエンタテインメントの企画は、中長期的には、推し活におけるNFTの活用を視野に入れたものだと考えられる。

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