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ルビコン川を渡って約10年、次の時代を切り開く新シリーズ

現代のDALIの魅力が存分に詰まった新スピーカー「RUBIKORE」シリーズ発表

2024年08月26日 11時00分更新

文● ASCII

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独特な形状の溝をもつミッドレンジ/ウーファー

 ウーファーやミッドレンジ用には口径165mmのユニットを採用。新たに強力なダブル(反転)マグネットを導入し、「クラリティ・コーン ダイヤフラム」という特徴的な形状の振動板を採用している。振動板の写真を見ると円の周りに放物線状の凹みが5つあるのが分かる。

 この凹みは分割振動によって発生するピーク/ディップを防ぐために設けられている。実際にドライブするとこの凹みに沿って振動板がたわむため、特性を分散化=平均化できる。この凹みは前方向からのプレス加工で作っているが、前面に塗布している制動剤がうまくたまって、厚いところと薄いところが滑らかに変化するようになる。これも特性の改善には利点となる。

振動板の上に、放物線状の凹みがある点に注目。

分割振動の悪影響を低減できる。

ウーファーのボイスコイル

ダブルマグネットにして強化した他、放熱なども考慮して、空気が抜けやすい形状に。

中央の銅キャップをよく見ると、横にスリッドがある。

 DALIの特許技術であるSMC磁気回路も使用。SMCは磁気的には鉄と同様の性質を持つが、電気的には絶縁体になる素材。これを磁気回路に用いることで、磁気回路の損失となる鉄損(アイアンロス)、つまりボイスコイルの下側に回る渦電流、磁界の向きが変わる際に発生するヒステリシス損が生じない点が特徴となる。

 ロスと書くとエネルギーが減ることが問題のように聞こえるが、SMC磁気回路を使う利点は音響エネルギーのアップではなく非直線にならないようにする点にある(リニアにしないと歪みの発生につながる)のだという。

 つまり、そもそもの損失がなければ、こうした歪みも発生しないだろうという考え方だ。例えば、ヒステリシス損は行きと帰りの経路の違いをみるグラフだが、これが一致しなくても対策は取れる。問題は周波数ごとに変化してしまう点にある。

左下の図がボイスコイルの下に発生する渦電流の解説、その右にあるグラフが周波数別のヒステリシス損。右列がSMCを使用した場合で、グラフを見ると左列の結果にあるような平行四辺形型の隙間がない。つまりこれは行きと帰りが一致していることを示す。

 SMCの利用に加えて、銅キャップ(ショートリング)も使用している。Hi-Fiスピーカーではよく使われる部品で、ボイスコイル自体は空芯コイル、ポールピースにはまる位置に鉄芯が入っている。この際、インダクタンスがボールピースの位置が前か、後ろかで変わる。この調整のために用いるのがショートリングだ。

 ただし、ショートリングのキャンセル効果は位置で変化する。コイルがはまった状態で100%効き、外れると弱まっていく。この影響を加味して、DALIは銅のキャップにスリッドを入れている。これもインダクタンスの平衡性を高めるための仕組みで、歪みの低減に寄与するそうだ。

インダクタンスについてのグラフ。キャップを付けることで、かなり変動しなくなる(下の水色の線)が、前後の位置によって特性が変化するので、さらにスリッドを付けて対策。ほぼ平らな特性になる。

 電流歪みは400〜500Hzから上がり始め、3kHzの中音域で顕著に上がってくる。DALIのスピーカーはトールボーイでも2ウェイの構成に近く、高域と低域のクロスオーバーは2〜3kHz付近にある。つまりクロスオーバー付近で歪みが出やすいため対策が必要だ。

鉄で銅キャップも利用しないと300Hz付近から歪みが上がり、2kHz付近まで影響が出るが、SMCと銅キャップを使用した組み合わせでは歪みの影響が全くと言っていいほどでない。

 ネットワーク回路のローパスフィルターに用いるコイルの鉄心にSMCを活用しているのもポイント。ここもKOREから継承した技術(SMC-KORE クロスオーバー・インダクター)だ。SMCを使ったコイルは空芯コイルと同じぐらい歪み低減の効果をもつ一方で、空芯コイルのように大きなスペースが必要なく巻き数も減らせる。一方、コンデンサーにムンドルフのM-Capを採用するなどハイクオリティー品を選んでいる。DALIの回路は基板にパターンを描かず、各部品の脚をダイレクトに結線している。ハードボードにアイレットを打ち込んでそこに各パーツの脚を入れて半田付けする仕組みだという。

ネットワーク回路

SMC-KOREを使用したコイル、コンデンサーにはムンドルフのM-Capも使用。

 バスレフポートは「コンティニュアス・フレアポート・テクノロジー」として、ポートは円筒形の胴の部分の前後をラッパのように少し広げたものにしている。連続的に断面積が変わることでドライバーとポートの間の遅延を減らしたり、ポートを通る空気の気流が乱れることによって発生するポートノイズを低減する効果が得られる。実機を見ると、RUBICONにはない表面の溝も確認できる。その効果は10Hz付近で4〜6dB下がるという。

バスレフポートは、円筒の両端がラッパのように広がる形状だ。

RUBICON 2とRUBIKORE 2の背面の比較、バスレフポートの形状に加えて、バイワイヤリングの対応、非対応なども違いだ。

 脚部はアルミダイキャスト製で、スパイクの利用も可能。RUBIKORE 8と6の内部には仕切りがあり、空気室が上下に分かれている。なお、これはユニット数が増えても同じだが、それは基本となる2ウェイの部分を一つの部屋にまとめ、さらに低音だけを再生する部分は別の部屋に分けてお互いが混じらないようにするためだという。したがって、ダブルウーファーのRUBIKORE 8も部屋の仕切りは一つだけになるとのことだ。

RUBIKORE 6の内部構造

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