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Windows Info 第443回

Windows Terminalで採用されたCascadia Codeフォントを使うとプログラムを書くとき断然見やすい

2024年08月04日 10時00分更新

文● 塩田紳二 編集● ASCII

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 現在のWindowsのフォントは、アウトラインフォント形式のOpenTypeをメインにしている。OpenTypeは、1997年にTrueTypeの拡張として発表された。TrueType形式のアウトラインデータに加え、CFF/Type2というPostScript用のアウトライン形式を含めることができる点がTrueTypeと異なる。

 ここでは、OpenTypeフォントであるCascadia Codeを例に、フォントの概要やアプリケーションからのフォントfeature機能の利用について解説する。

Cascadiaフォント

Visual Studio CodeでCascadiaフォントを使ったところ

そもそもCascadia Codeフォントとは?

 Cascadia Codeフォントとは、Windows Terminalと同時に開発されたオープンソースのフォントである。Windows Terminalと同時にインストールされるが、単体でもインストール可能だ。このフォントを例に持ち出したのは、オープンソースでフォントを作るためのソースコードが閲覧可能だからだ。

 一般にフォントは、OpenTypeフォント形式のバイナリファイルで配布されるため、中身を見ることは難しい。showttf.exeのようなフォントファイルのダンプツールもあるのだが、これは、基本的な構造を知っている人向けのもの。タグの意味を理解できないと使うのが難しい。これに対して、ソースコードでは、機能がフォルダに分けられており、大抵は意味のある名前が使われている。このため、基本的な理解がしやすい。

 ソースコードは、GitHubの「Cascadia Codeリポジトリ」(https://github.com/microsoft/cascadia-code)にある。基本的な情報はここで得られる。

 Cascadia Codeフォントには、以下の表のような6つのバリエーションがある。大きくは、「プログラマ向け合字」と呼ばれる機能があるもの(Cascadia Code)と、ないもの(Cascadia Mono)に分かれる。

Cascadiaフォント

 末尾にPLがつくものはPowerlineシンボルが含まれており、NFがつくものは「Nerdフォント」のシンボルが追加されている。なお、NerdフォントシンボルにはPowerlineシンボルが含まれている。ここでは、これら6種類をまとめてCascadiaフォントと表記する。

 Cascadiaフォントには、6つのウェイト(太さ。ExtraLight、Light、SemiLight、Regular,SemiBold、Bold)の通常体(立体)とイタリック体がある。Cascadiaフォントのイタリック体小文字は、筆記体に似たデザインを持つ。

Cascadiaフォント

画面最上段が小文字の通常(立体)表示で、下がそのイタリック体を示す。このようにCascadiaフォントでは、イタリック体と立体が異なり、視認性が高い

 Cascadiaフォントのイタリック体は、立体とは明らかに違う字形を採用している。たとえば、小文字のaなどは形自体が異なる。そもそも、イタリック体は筆記体から派生したと言われており、単純に文字を斜めにしたもの(これを斜体という)ではないのだ。このため、単純に立体を傾けただけのフォントに比べてイタリック体は区別しやすい。

 ユニコードでは、文字のおおまかなグループ分けとしてブロックがある。ブロックは、連続したコードポイントを範囲として重複しないように分けられている。ブロックは、ユニコード文字の分類として使われている。ブロックの範囲と名称に関しては、Unicodeサイトに一覧(https://www.unicode.org/Public/UCD/latest/ucd/Blocks.txt)がある。

 以下の表は、Cascadiaフォントのブロックごとの文字数を示している。

Cascadiaフォント

 ただし、この数はコードポイントが割り当てられているもののみで、合字や複数の字形、私用領域に割り当てられるPowerlineやNerdフォントシンボルは含まれていない。これでわかるように、日本語などの漢字はCascadiaフォントには含まれておらず、フォントフォールバックを介して、日本語フォントを使って表示される。

 合字(Ligature)とは、複数の文字の組合せを1つの文字のように表示するもの。古くから欧文では、fに続くiの組み合わせでは間を狭めていた。そこで活字では、iの点をfの上とつなげて1つにしたものを使っていた。

 間を狭めるのは、その方が見やすいからという理由だが、これがコンピュータ上に持ち込まれたとき、フォントの機能として実現された。多くのフォントでは、fとiなど特定の文字の組合せで間隔を狭めるなどのため、合字としてデザインされたパターンを持つ。合字は、あくまでも表示上の問題で、コードポイントのレベルでは2つの文字のままである。

 Cascadiaフォントに含まれるプログラマ向けの合字としては、以下のようなものがある。

Cascadiaフォント

Cascadia Codeフォントの「プログラマ向け合字」。プログラミング言語によく登場する組み合わせに対して、合字が設定されている

 Powerlineシンボルとは、一部のエディタやシェル、コンソール分割ツールなどの「ステータスライン」を飾るツールである「Powerline(https://github.com/powerline/powerline)」用に作られた文字だ。Powステータス行のフィールド境界や空き領域などに配置して、デザイン性を高めるツールである。

 Nerdフォント(https://www.nerdfonts.com/)とは、さまざまなアイコン的なシンボルを含むフォント。もともとはvimエディタのステータスラインを表示するために作られたものが複数のシンボルを取り込んで、フォントプロジェクトになった。Cascadia Codeプロジェクトでは、このNerdフォントをCascadia Codeに取り込むことで、単一のフォントしか指定できないコンソールやエディタなどで両方を同時に使えるようにしている。

 Cascadia Code用のPowerlineシンボルは、Nerdフォントに含まれているPowerlineシンボルを抜き出したもの。このPowerlineシンボルやNerdフォントシンボルは、Unicodeの私用領域(Private Use Area。U+E000~U+F8FF)や、補助私用領域(Supplementary Private Use Area-A。U+F0000~FFFFF)などを使う。  Cascadiaフォントの最新版は、2404.23である。これには、8bit CPU時代のBASICマシンに使われていたようなキャラクタグラフィックス用の文字が搭載された。キャラクタグラフィックスとは、1文字を4×4などに分割したドット表示パターンで、これを組み合わせることで簡易グラフィックス表示をする。

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