中国産半導体のみでのPCの代替はこれまでも話題になったが
なかなか難しい現実があったが、大分状況は変わった!?
米国によるファーウェイへの制裁以降、中国では西側諸国に対抗するためIT機器を自前で揃えようとする動きが加速している。
本連載ではこれまでも、「中国独自の命令セットのCPUとパーツを用いた「完全中国製PC」でWindowsアプリが動いたと話題に」「中国産CPUやGPUが続々発表、中国政府も力を入れる脱米国は現実化するか?」といった記事を書いてきたが、後者の記事からは2年が経過した。この2年の間に大規模データモデルと生成AIが大きなトレンドとなったのは中国でも同じ。自前のソフトとハードで西側と同じようにAIが活用できることが課題となっている。では2年間でどれだけ中国の独自パーツは成長したのか。
中国製GPUを採用したビデオカードは
エントリーレベルには達してきたようだ
中国製ビデオチップを開発する「Moore Threads(摩尓線程)」という企業がある。ファーウェイと同様、米商務省によって2023年10月にエンティティリストに登録され、取引制限措置が課されている。同社は2年前にはビデオカード「MTT 60」を出していたが、この2年間で「MTT S70」「MTT S80」という新製品を発売。過去の製品についてはドライバーを頻繁に更新し性能を引き出しつつ、さらに次世代の「MTT S90」を発表した。
これらの製品は京東(JD)などのECサイトでも普通に発売されている。中国の独自ハードというのは概して発表だけが先行して購入しにくいのだが、同社製品ほど入手しやすい製品というのは数少ない。価格だが「MTT S70」は900元(約2万円)、「MTT S80」は1300元(約2万9000円)程度で、実際にベンチマークテストをした中国の快科技(https://news.mydrivers.com/tag/moerxianchengmtt_s70.htm)によれば、「MTT S70のフレームレートはほとんどのDirectX 11ゲームで同価格帯のGeForce GTX 1650 D5と同程度か上回っている」とのこと。
さらにエントリーレベルの「MTT S30」は358元(約8000円)という低価格でGeForce GT 740以上のスコアを出している。最新のビデオカードの水準ではないが、一昔前レベルの製品が格安で買えるのであれば、好事家にはたまらない製品かもしれない。
同社製ビデオカードが入ったデスクトップPC「智娯摩方」も、さまざまなゲームをインストールされる形でリリース。最近の中国のネットユーザーはスマートフォンは使いこなせるが、PCはファイル操作すらできない人が多く、そうした層を対象にしたオールインワンパッケージ製品だ。最近中国でじわりと人気が上昇しているSteamのゲームも問題なく動くという。
さらに摩尓線程は、昨年12月に大規模コンピューティング向けアクセラレーター「MTT S4000」や、数千億パラメーターの大規模モデルの学習をサポートするように設計されたクラスター「摩尓線程KUAE」プラットフォームを発表。百度や智譜AIなど、LLMやマルチモーダル大規模モデルを提供している中国企業と次々と提携し、ハードウェア面でサポートして実績を重ねている。
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