今食べている料理の食材のうち、どれくらいが国内で生産されているものか、考えたことはあるだろうか?
一説によると、カレーライスは40%程度の自給率があるるのに対し、ラーメンは14%程度に留まってしまうらしい。
この理由はカレーライスは米が使われるが、ラーメンの麺は「輸入小麦」が中心であることが大きいとも言われており、簡単には解決できない問題になっている。
この「ラーメンの自給率」について、自民党の石破茂 元幹事長が会長を務め、地方創生につながる日本全国のラーメン振興を目的に2022年に発足した「ラーメン議連」は、設立当初から話を進めてきた。
一方でラーメン業界からは、それに対する課題について議論がこれまでも続けられてきており、実際に試食することで相互の理解と議論を深めることを目的とした第三回総会と試食会が、5月20日に都内のラーメン店「玉 新宿店」で開催された。
当日は議連のメンバーに加えて、ラーメン業界側から「日本ラーメン協会」の玉川正視 理事長、「全国製麺協同組合連合会」の鳥居憲夫 会長などが出席した。
国産小麦と、輸入小麦、ラーメンに向いている小麦はどっち?
今回の試食会にあたっては、京都の老舗製麺所「麺屋棣鄂(めんや ていがく)」 代表取締役 知見芳典氏が、「国産小麦」「輸入小麦」「米粉」のそれぞれの麺を用意し、それを人気ラーメン店「玉」のオーナー店主でもある玉川理事長が今回の試食会のために用意したオリジナルスープと合わせる形で提供された。
知見氏からは、ラーメンの麺である中華麺の多くは古くから「輸入小麦」を使用して製麺されたものが多いという説明があった。「輸入小麦」の特徴としてはグルテンが多く含まれていてボリュームを出しやすいほか、伸びにくい麺が作りやすく、かつては多かった出前などの需要にも適しているそうだ。そうした理由から、昔から食べ親しんできたラーメンのイメージに近い麺はむしろ「輸入小麦」になるとのことだった。
対する「国産小麦」は、昨今は自家製麺などで用いられることが増えてはきているが、グルテンの含有量が比較的少なくボリュームを出しにくいほか、一般的には麺が伸びやすいというデメリットがあるものの、国産ならではの小麦の風味が強い麺を作ることができるとのことだった。
試食した議連のメンバーからも「輸入小麦」のラーメンを「美味しい」と評価していた一方で、続けて提供された「国産小麦」のラーメンについても、その風味や味を、より高く評価する声が多く上がっていた。
ただし、知見氏からは1玉(ラーメンに使う1回あたりの麺量)当たり、通常40~50円程度の麺の価格対して、国産小麦を利用する場合、およそ5円ほどの価格が上がってしまい、原価率を考えた時には決して無視できない価格差が生まれてしまう点が提議されるなど、味だけではない総合的な評価や課題がまだまだ多いことが議論されていた。
米粉麺はラーメン業界に普及するのか?
輸入小麦と国産小麦の議論に加えて、もう一つ多くの時間が割かれたのが「米粉麺」についての課題だった。
国内での米の消費量減少が進む中、「ラーメン議連」からも米粉麺の普及による米余りの改善に期待する声は以前より上がっていたが、今回はそれを踏まえて、米粉の特注麺が用意され、同様にラーメンとしての試食が行われた。
実際に食べた議連メンバーからは、こちらも「美味しい」との声が多く上がっていた。
石破氏からも「米粉にしては美味しいじゃなくて、米粉は美味しい」との感想があるなど、今後の普及に期待する意見が多く出ていた。
しかしながら、コストや製造業者の問題であったり、小麦を使用した麺とは味も風味も異なることから、それにあったスープや調理が必要になるなど、既存の小麦麺からの単純な置き換えにはなりづらいことなどの意見も出席メンバーから話があり、期待とともにまだまだ取り組んでいく必要のある課題が多いことも議論される形となった。
国民食なラーメンだからこその「自給率向上」への期待
ラーメン議連と日本ラーメン協会のこれまでの話し合いの流れで実施されたこの試食会。明確な「結論」というものを出す会ではなかったため、あくまで多くの議論がなされ、様々な意見を共有する形で今回は閉会となった。
試食後、石破氏からは「国産小麦の麺で作ったラーメンを食べてみて、やはり美味しいと感じた」という話とともに、改めてラーメンの自給率を上げるべく「国産小麦がいいよね」と声が高まっていくことに期待する話があった。
また、自給率の向上と米の消費量アップに加えて、「グルテンフリーだから小麦アレルギーの方でもラーメンをお腹いっぱい食べられるようになる」という面でも「米粉麺」の強化についての期待も改めて語られた。
米粉麺については、日本ラーメン協会の玉川理事長も、「本気で取り組みたい」と話をしており、特に食感などの麺から「つけ麺」との相性はよい感触があるそうで、協会としてだけではなく、ラーメン店主としても積極的に開発にチャレンジしていきたいとのことだった。
今回の総会に出席したラーメン議連のメンバーからも多数の質問などが出たほか、実際に試食したことで見えた部分も多かったようで「(本当は)月一回くらいやってもいいのでは」との話も出ていた。
また日本ラーメン協会をはじめとしたラーメン業界側からは自給率アップへの期待に応えたいという気持ちの一方で、コスト面などをはじめ、現状の業界側努力だけではクリアしていくことが難しい問題についても直接意見が出て、熱い議論が繰り広げられていた。
国民食であるからこそラーメンに関する期待や意見、議論などは今後も多くなされていくと思われるが、今回のような場をきっかけとして、ラーメン店主や製麺所などのラーメン業界、そしてラーメンファンにとって、より美味しいラーメンが、より安心して作り食べられる未来につながっていくことを期待していきたい。