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FIXER Tech Blog - AI/Machine Learning

汎用性の高い生成AIのプロンプト設計パターン6選

2024年02月07日 10時00分更新

文● FIXER/高桑 宗一郎

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 FIXERで、プロンプトエンジニアをしている高桑です。

 前回では、プロンプトエンジニアはどんな職種なのか、どんなスキルセットを求められるのかを話しました。

※前回の記事「プロンプトエンジニアってどんな職種?内定第1号者としての答え

 今回の記事では、プロンプトの設計方法についてお話します。

 論文で提案されているようなプロンプトは、特定の構文やフレーズが多い一方で、この記事では「プロンプトの全体構成を設計するヒント」をお話します。

難問は分割する

 複雑なタスクや、論理的な思考を要するタスクの処理においては、途中の処理を明文化すると、意図した生成結果を得られやすいです。

△の例)
商品Aの売上を上げる施策を考えてください。

⚪️の例)
#step-by-stepで実行
Step1. 売上の現状を把握する
Step2. 売上の理想状態を把握する
Step3. 1と2の差分を推定して、それを{課題}として定義する
Step4. 3で推定した{課題}に対して、効果的な施策を3つ提案する。
Step5. ...

※タスクをStepごとに分解した上で、それぞれのStepを明文化する手法として「Chain of Thoughts(CoT)」が有名ですが、まさにこれと同じ理屈になります。

自明ではない要素は定義する

 読み手によって、解釈が異なる要素は定義をします。

 特に、主観的な表現が含まれている場合には注意が必要です。

△の例)
このpdfファイルから、重要な部分を抽出してください。

⚪️の例)
このpdfファイルから、契約する上でリスクとなり得る重要な情報を、抽出してください。

前提とするルールがあるなら宣言する

 LLMは、確率的推論で生成する原理です。

 なので、思考のモデルをこちらから設計して指示すると、意図した出力を期待できます。

△の例)
資格試験Aの、コスパのいい勉強方法を教えてください。

⚪️の例)
パレートの法則に基づいて、つまり「全体の20%の工数で80%のパフォーマンスを引き出す」コアの要素に注意した、資格試験Aの効果的な勉強方法を教えてください。

※LLMに対して役割を指示するプロンプト(ロールプロンプト)が有名ですが、これも「出力するLLMの立場を前提として定義する」という点で同じ理屈です。
※この「ルール宣言」は、LLMが生成するまでの思考プロセスを明確にすることにもなります。本来、LLMの思考はブラックボックスな側面が大きいため、「なぜLLMはその出力をしてきたのか?」「その出力背景もセットで、深く知りたい」という場合には、「ルール宣言」のように初めから思考のプロセスを定義してしまうのも推奨です。

Midjourneyで作成したマイマスコットキャラ

場合分けや例外を見逃さない

 LLMは、確率的推論で出力します。

 明確な指示があれば、高確率でその通りに出力してくれる一方で、プロンプトの指示で一意的に判断できないものは、ランダムチックな生成をしているように見えます。

 なので、それを許容できない場合には、「場合分け」や「例外処理」でハンドリングを行う必要があります。

△の例)
ファイル.pdfから「仮説」を抽出してください。

⚪️の例)
ファイル.pdfから「仮説」を抽出してください。
もし空白であれば、ファイル.pdfの他の情報から、あなたなりの「仮説」を推定して出力してください。
#出力形式
・仮説
・あなたが推定した仮説かどうか(yes or No)

途中プロンプト内で引用する要素は名前をつける

 複雑なタスクを処理するときは、処理のステップが複数に分かれる場合があります。
 つまり、プロンプトで生成した1つ目のアウトプットを、次のプロンプトのインプットとして渡す必要があります。

 このときに、1つ目で出力したアウトプットに対して、プロンプト内の固有な表現で命名するとLLMは理解しやすいです。

△の例)
Userが、どんな役割で組織全体の生産性に貢献したいのか、将来どのような役割へ成長したいのかを、フローチャート形式で1問質問してください。
Userからの回答に基づいて、Userの悩みを解決してください。

⚪️の例)
#ゴール
Userに対して、下記の2つの問いを解明すること
A: Userは、どんな役割で、組織全体の生産性に貢献したいのか?
B: Userは、将来どのような役割へ成長したいのか?

#step-by-stepで出力
Step0. {ゴール}に基づいて、{KPI}を設計する出力する。
Step1. {KPI}をクリアするために、ファイルA.pdfを参照しながら、フローチャート形式で1問質問する。
Step2. Userが入力した「Step1の質問への回答」に基づいて、現時点で{KPI}をクリアできるか判断し、下記のi)〜iii)のいずれかを出力する。

...

※「△の例」だと、AとBに即した内容ではなく、一般的な悩みに文脈がすり替わってしまうリスクがあります。

繰り返す場合は抽象化する

 プロンプト内で繰り返す場合には、上記の「要素の命名」が一つありますが、出力を繰り返す場合にはどのようなやり方があるでしょうか?

 ここでご紹介するのは、中身の具体性をあえて無くして、抽象的な枠組みだけを支持して、繰り返し使わせる手法です。

△の例)
Userへの質問を考えて、その質問と回答の選択肢をセットで出力してください。

⚪️の例)
Userへの質問を考えて、その質問を{回答の選択肢}とセットで出力してください。

#回答の選択肢:
o: (最も考えられる候補をあなたが設計する)
p: (oの次に考えられる候補)
k: (kの次に考えられる候補)
l: (文脈と全く関係のない尖った選択肢)

※出力形式(今回だと1文字入力式で、4択である)を枠組みとして固定した上で、ただし内容は柔軟に変化をもたらせたい場合に有効です。

高桑 宗一郎/FIXER
FIXERのプロンプトエンジニアです。これまでは、PdMとして主にtoC向けのアプリ開発チームリーダーを担っていました。途中から生成AIにハマってしまい、毎日趣味でプロンプトを開発していた背景から、プロのプロンプトエンジニアとして覚悟を決めてFIXERへjoin!

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