この組み合わせはすごい……とかではなくて:
「かつやのトリプルカツ丼」はレジャーの一種だと思います
2024年01月20日 16時00分更新
「かつやのトリプルカツ丼」
かつや
1月12日発売
869円
かつやのトライアタック、ほらやったー!
「カツ丼と牛丼と親子丼を一緒に食べられます」と聞いて、おもしろそうだと思ったら、とりあえず食べてみましょう。
とんかつ専門店「かつや」は、「かつやのトリプルカツ丼」を1月12日より期間限定で販売しています。価格は869円〜。
カツ丼、牛丼、親子丼が1度に楽しめます。カツ丼には三つ葉、牛丼には紅ショウガ、親子丼には紅白のカマボコを添えて、新年を迎えられる慶びを表現したとのことです。
ちなみに店内飲食では、具材とごはんを別添えにしてとん汁と味わう「かつやのトリプルカツ定食」も用意されています。テイクアウトも可能。
かつやのリリースによれば、「カツ丼と一緒に食べるなら、親子丼? 牛丼? どちらか迷う位なら、1度に3種類楽しめる一杯に仕立てたら喜んでいただけるのではないかと考え誕生した」とのこと。
実際に注文すると、本当にカツ丼、牛丼、親子丼が1つの丼に盛られています。これをおもしろいと感じるのであれば、もう合格ではないでしょうか。
ポイントとしては、めちゃくちゃボリュームがあるわけではないんですよ。これよりデカ盛りなメニューを出す店はたくさんあるでしょうし、かつやでいえば、もっと大盛りの期間限定メニューもあります。
それでは、何が嬉しいかというと(これは文系としての使い方です)、もうとにかく「3つの人気の丼が一緒になっている」点に尽きます。カツ丼! 牛丼! 親子丼! 合体! いったい、どうなっちゃうんだ〜!? というワクワク感。正直、ここまでコンセプトがわかりやすいと「おいしい」というよりも「おもしろい」が勝ちます。
まず、カツ丼。これは特に言うことはありません。悪い意味ではなくて、かつやのカツ丼です。味がしっかり、肉の歯ごたえあり、玉子のふわふわ感もいつもの通り。
牛丼の味付けは、吉野家や松屋などのそれと比べると、甘め、濃いめ……という感じ。かつやらしい、どっしりした味付けになっているといえるでしょうか。そういえば、かつやで牛丼を食べるのもレアな経験です。
親子丼もそうです。割り下の風味が強いというか、甘めの味付けになっています。カツ丼、牛丼と完全に同じ路線。そんなわけで、全体的に「甘じょっぱい」という雰囲気です。
たとえば「〇〇カツ丼」みたいなメニューの場合、〇〇とカツの相性が気になるじゃないですか。「チーズカツ丼」ならチーズとの相性が、「おろしポン酢カツ丼」ならおろしポン酢との相性が……みたいな。
ところが、このトリプルカツ丼は違います。カツに牛丼と親子丼が加わっているので、もう相性とかどうとか考えている場合ではない。さすがに、どれも単体で食べられるものなので、味が悪いということはない。
ただ、ちょっと“過剰”な気はします。しっかりした味付けの具材なので、全体的に濃いかな……と感じるかもしれません。まあ、それはそれで、3種類の肉を使っている豪華さにふさわしい味付けなのかも。「カツ丼と牛丼と親子丼が一緒なので味が濃いです」と言われたら、そりゃそうだろ……という感じだし。
だから、意外と、紅ショウガと三つ葉が良いアクセントになっていると思います。カマボコに関しては、ビジュアルを除けば、あってもなくてもという気はしますが。
主役の3つが一緒になっている、豪華な雰囲気が重要
考えてみれば、「カツ丼と牛丼と親子丼を一緒に口に運ぶ」という経験がありません。経験のある人がどれだけいるのという話ですが。だから「この組み合わせは良い/悪い」という感じより、「ワハハ! 一緒に食べちゃってるわ、おもしろ〜」というレジャー感のほうが強い。
そうなってくると、牛丼の味付けがどうとか、カツとの相性がどうとかなど、別にどうでもよい気分にはなります。はたして、そんなことは大事なのだろうか……と思えてくるのです。
親子丼とカツ丼がくっついているのも、よく考えるとすごいですよね。両方とも玉子でとじているんですけど、この玉子はそれぞれ別々の道を歩んできたわけです。「俺は親と一緒になってやるから」「自分は豚肉さんと組んでやっていくわ」といって別々の道を歩んだ鶏卵が、「え、ここで一緒に!?」となった。めちゃくちゃですよね。
1つの丼として、出来が悪いわけではありません。ただ、味としては「この3つが組み合わさってこんな化学反応が……!」ということにもなりません。食べて損するものではありませんが、今さら「こんなに合うなんて」という発見もない気がします。あったら、どこかのチェーン店がとっくに定番メニューにしているだろうし……。
とにかく、主役の3つが一緒になっている豪華な雰囲気が重要なのでしょう。その昔、オペラ歌手のルチアーノ・パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスが共同で活動するときに「三大テノール」とうたわれていましたが、そういう類のものだと思います。「トップの3つが集まりました〜!」というのがウリなのです。
「このカツ丼は最高!」というものではないのかな、と。「カツ丼と牛丼と親子丼を一緒に食べるという経験をしたい!」という気分の時に行きましょう。レジャーの一種だと思って食べに行くような、おもしろ要素のあるメニューです。
モーダル小嶋
1986年生まれ。「アスキーグルメ」担当だが、それ以外も担当することがそれなりにある。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。よろしくお願いします。
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