NTT、ドコモ、東急不動産が、2023年12月13~15日に東京・渋谷の「Shibuya Sakura Stage」で「IOWN WEEK」と銘打ったイベントを開催した。同イベントは、まちづくり分野において世界で初めて、次世代ネットワーク「APN IOWN 1.0」をShibuya Sakura Stageに導入したことにともない開催されたもの。
APN IOWN 1.0とは次世代の通信基盤
IOWN(アイオン)とは「Innovative Optical and Wireless Network(革新的な光と無線のネットワーク)」の略。光電融合技術と光通信技術の開発によって実現する次世代の通信基盤として、NTTグループが推進している。既存のネットワークに対して、低消費電力・大容量高品質・低遅延を優位性としている。APNは「All-Photonics Network」の略で、APN IOWN 1.0は、NTT東西が2023年3月に提供を開始した、通信ネットワークの全区間を光波長で専有するサービスだ。
なお、Shibuya Sakura Stageは、再開発が進む渋谷エリアの中でも最大級の複合施設として11月に竣工。2024年の全面開業が予定されている。東急グループは、渋谷駅から半径2.5kmのエリアを「広域渋谷圏」と定めて、持続性のある新しいまちづくりを進めている。今回のIOWN導入も消費電力の低減や快適な通信環境が目的だ。
IOWN WEEKには2つのコンテンツが実施された。12月13~15日には、オフィスビル「渋谷ソラスタ」にて「IOWN ウェブ会議」を開催。主にShibuya Sakura Stageに入居予定の法人向けに、オフィスでのIOWNのユースケースが紹介された。12月14日には「IOWN エンタメイベント」として、Shibuya Sakura Stageにてお笑い芸人によるIOWNを活用したエンタメコンテンツを披露した。
◆IOWNを導入したオンラインミーティングを体験
IOWNウェブ会議では、ウェブ会議システムを活用した3つのデモンストレーションが披露された。まずは、APN IOWN 1.0による4K映像の受信。従来のインターネット環境では、再生が始まるまでに時間がかかり、画質も若干不安定だったが、IOWNでは、あたかもメディアから直接再生しているかのような高画質で映し出された。
続いて、IOWNでつながる別の会場とのオンラインミーティングを体験。IOWNについてのプレゼンテーションを受けて、質問も行なったが、タイムラグはなく、同じ会議室にいるかのように話せた。
最後に、APN IOWN 1.0を導入したウェブ会議で有用な技術として、話した言葉がリアルタイムで、なおかつ話した本人に近い声で翻訳されるデモも披露された。ただ翻訳されるだけでなく、声も変わるので、通訳を介さないような自然なコミュニケーションが取れることがメリットと言えよう。
なお、オフィスへのIOWNの導入はさほど難しくはなく、従来の光回線を引き込む場合と同様の工事で済むとのことだ。拠点間の通信は光ファイバーで伝送され、建物内でも有線で光通信を使うことで、高速道路のようなスムーズな伝送が実現するとのこと。2030年までに従来比で1/200の低遅延、125倍の伝送容量、100倍の電力効率を目標にしていて、低遅延はすでに達成しているそうだ。
◆吉本の人気芸人によるパフォーマンスで低遅延を実感
Shibuya Sakura Stageのまっさらなイベントスペースで開催された「IOWN エンタメイベント」には、吉本の人気芸人が集結。見取り図(盛山さん、リリーさん)、鬼越トマホーク(坂井さん、金ちゃん)、ヨネダ 2000の誠さんの5人が会場に登場し、とろサーモンの久保田さんと、トレンディエンジェルの斎藤さん、ヨネダ 2000の愛さんの3人はAPN IOWN 1.0でつながった別会場から参加し、等身大の姿がモニターに映し出された。
離れた会場にいる芸人同士で、“からだじゃんけん”や“あっち向いてホイ”などのゲームを実施。従来の回線とIOWN回線の両方で行ない、IOWNがいかに遅延がないかということを実証した。
鬼越トマホークの坂井さんの頭に載せたコップにお茶を注ぎ、別会場からIOWN回線でその様子を見ているとろサーモンの久保田さんが、ギリギリのところでストップをかける「表面張力ギリギリストップ」ゲーム。遅延が大きい従来回線では、久保田さんのストップが間に合わず、坂井さんの頭が濡れてしまった。
そして見取り図の盛山さん、とろサーモンの久保田さん、トレンディエンジェルの斎藤さんによる、フリースタイルの“ラップバトル”も開催。さらに、ヨネダ 2000の2人は、2022年の「M-1 グランプリ」決勝で話題を呼んだネタ「餅つき」を披露。離れた場所にいるとは思えない2人の息の合った掛け合いで、来場客を沸かせた。誠さんは「触れられない、体温を感じないということを除けば、いつもと同じようにできました。声も普通に聞こえて、モニターを相手にやっていることを忘れるくらいでした」と感想を述べていた。
イベント後には、質疑応答の場が設けられ、NTT、ドコモ、東急不動産の担当者がメディアからの質問に答えた。その中で、APN IOWN 1.0は全国で利用可能だが、現時点では異なる都道府県での通信には対応していないこと。異なる都道府県間の通信の導入は、大阪・関西万博が開催される2025年を目標としていることなどが明かされた。