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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第258回

NTT法廃止、なぜ議論に? 2つの論点

2023年11月21日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 NTT法を巡る、各社の対立が加熱している。

 きっかけになったのは、2023年11月14日朝以降の報道各社の記事だ。

 自民党内のプロジェクトチームが、2025年の通常国会までにNTT法の廃止を求める提言をまとめたと報じた。

 こうした報道を受けてかどうかは不明だが、同じ日に、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが連名で、NTT法のあり方について見解を発表している。

 たとえばNTT法は、NTTに対して研究成果の公開を義務づけている。

 NHKによれば、自民党のプロジェクトチームは、グローバルな企業間の競争を考えると、NTTの優位が失われるため、同法の廃止が必要だと提言するという。

 こうした方針に対して、競合する携帯キャリア3社は強く反発している。

 なぜNTT vs キャリア3社という対立構造が生じているのか。

 このニュースは、なかなか複雑だ。大筋をつかむためには、複数ある論点を丁寧に整理する必要がありそうだ。

対立はNTTの成り立ちから

 対立の原点は、NTTの成り立ちにある。

 NTTの前身は、日本電信電話公社(電電公社)という特殊法人だった。

 電話や電報といったサービスを独占的に担ってきたが、通信を自由化するため、1985年に民営化され、株式会社になった。

 公社から普通の株式会社になる際に、NTT法が制定され、政府がNTTの株式を3分の1以上保有することや、研究成果の公開などが義務づけられた。

 通信という超重要な社会インフラを担うNTTに対して、政府が株式の保有を続けることで、一定のコントロールを維持するために設計された制度だろう。

 話は現在に戻るが、日本を取り巻く安全保障環境はどんどん厳しくなっている。

 環境の変化に伴い、政府の防衛関連の予算もどんどん増えている。しかし、防衛費を増やすには、財源を確保する必要がある。そこで浮上したのが、増税や政府が保有するNTT株の売却だ。

 自民党はプロジェクトチームをつくり、8月31日から、NTT株の売却や、日本の情報産業の国際競争力の強化について議論してきた。

 防衛費をまかなう財源がないなら、政府が持っているNTT株を売ってはどうかという案から議論がスタートし、その後、NTTのあり方にまで議論が拡大したという経緯がありそうだ。

NTT法の役割は終わったか

 大ざっぱに言って、現在の論点は次の2つになる。

1.政府が持っているNTTの株を売却してはどうか
2.国際競争力の強化のため、NTTに課されている研究の公開などの義務をなくしてははどうか

 まず、NTTの株の売却については、経済安全保障の観点から、慎重論が強い。

 外国資本がNTTを買収して、完全に支配下に置いた場合、日本国内の通信が外国にコントロールされてしまうかもしれないという懸念からだ。

 NTTは10月19日に公表した「NTT法のあり方について当社の考え」という文書で自社の立場を明らかにしている。

 この文書によれば、現在固定電話の契約数は約1350万件だが、モバイル通信は2.1億件にのぼる。

 モバイル通信でのNTTドコモのシェアは35.5%で約3分の1を締めているに過ぎない。

 こうした状況からNTTは「経済安全保障の観点からは、NTT法で当社だけを守っても無意味」と主張する。

 これに対して、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの3社も、10月31日に文書を公表し、「特別な資産を持つNTTを守るには、NTT法による外資規制が最も有効」と反論している。

 楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、Xへの投稿で、NTT法の廃止方針に強い言葉で反発している。

 「『NTT法を廃止』して、国民の血税で作った唯一無二の光ファイバー網を完全自由な民間企業に任せるなど正気の沙汰とは思えない。携帯含め、高騰していた通信費がせっかく下がったのに逆方向に行く最悪の愚策だと思います」

軌道修正は避けられない?

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