京都大学の研究チームは、全ての血球成分の源である造血幹細胞による造血の方向性を決める分子機構を明らかにした。近年、一つひとつの造血幹細胞には、ある特定の種類の血球を多く生み出す傾向が存在することが明らかになってきた。しかしながら、このような造血の偏りが分子レベルでどのように制御されているのかについては、ほとんどわかっていなかった。
京都大学の研究チームは、全ての血球成分の源である造血幹細胞による造血の方向性を決める分子機構を明らかにした。近年、一つひとつの造血幹細胞には、ある特定の種類の血球を多く生み出す傾向が存在することが明らかになってきた。しかしながら、このような造血の偏りが分子レベルでどのように制御されているのかについては、ほとんどわかっていなかった。 研究チームは今回、生炎症応答や免疫細胞の活性化を抑制するRNA分解酵素として知られている「レグネース-1」と、機能未知であったファミリー分子「レグネース-3」の体内における機能を解析するために、レグネース-1/3重欠損マウスを作製した。すると、これらのマウスは、生後24時間以内に全例死亡することがわかった。 そこで同チームは、野生型とレグネース-1/3重欠損細胞の混合胎仔肝細胞移植による骨髄造血細胞や、これらの細胞に対する「1細胞RNAシークエンスで」得られた遺伝子発現データを詳細に解析。その結果、レグネース-1/3が、Nfkbiz遺伝子をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)をRNA分解の標的とし、Nfkbiz発現量を調節することで、造血幹細胞による造血の方向性を制御することが明らかになった。 今回解明した仕組みは、骨髄疾患や慢性炎症で認められる造血異常の背景にあるメカニズムと関連する可能性があり、今後の研究が期待される。研究論文は、国際学術誌ブラッド(Blood)に2023年11月3日付けでオンライン掲載された。(中條)