このページの本文へ

ヒト血管オルガノイドで新型コロナ重症化の仕組みを解明

2023年10月20日 05時50分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

大阪大学、東京医科歯科大学、武田薬品工業などの研究グループは、ヒトiPS細胞由来の血管オルガノイドモデルを使って、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化の仕組みを一部解明した。

大阪大学、東京医科歯科大学、武田薬品工業などの研究グループは、ヒトiPS細胞由来の血管オルガノイドモデルを使って、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化の仕組みを一部解明した。 解明されたのは、新型コロナの重症化によって全身に血栓が形成され、多臓器不全に陥る仕組み。研究グループは、新型コロナによる血管炎に類似した症状を再現できる、ヒトiPS細胞由来血管オルガノイドモデルを開発。オルガノイドを使った網羅的遺伝子発見解析や、重症患者の血液検体の網羅的タンパク質発現解析データなどから、補体代替経路と呼ぶ分子経路群が血管炎の症状が特に強い症例で上昇していることを発見した。また、オルガノイドモデルを移植して新型コロナの罹患状態を模倣したモデル動物を作製し、補体代替経路を阻害する薬物を投与した実験から、血管炎や血栓形成の症状を緩和できる可能性が分かった。 こうした結果をもとに、研究グループは、補体代替経路の構成成分であるD因子に着目。網内系に移行した抗体がリサイクルされる仕掛けを組み込んだ長時間作動型の抗体製剤を作り、サルの新型コロナウイルス感染モデルに投与して評価した。結果、血管炎に重要な経路を阻害することで、補体の活性化を抑制し、免疫反応を弱め、血管保護効果を発揮することが分かった。 研究成果は10月6日、セル・ステム・セル(Cell Stem Cell)誌にオンライン掲載された。

(笹田)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ