今年のAdobe MAXは「生成AI祭り」だった。一方で、生成AIが関わるトピックとして気になるのは、やはり「運用ルール」であり「権利」の問題だろう。
アドビはこの問題をどう考え、対処を考えようとしているのか? 筆者は今年も現地で取材をしたが、イベントと合わせ、関係者取材から得られた内容を含めて考察してみたい。
アドビの生成AI「Firefly」とは
まずは少し状況を振り返ってみたい。アドビは今年3月、独自開発した生成AI「Firefly」を発表した。
Fireflyは学習にアドビの素材・作品ストックサービスである「Adobe Stock」と、著作権がクリアーされたフリーのコンテンツを使っている。Adobe Stockの中でも、特定のIP(例えばマリオやミッキーマウス)が含まれないものが対象であり、「企業が安心して使える、透明性の高い生成AIである」ことが特徴、とアドビは主張する。
今回のAdobe MAXでは、Fireflyに大幅な機能アップが実施されている。1つは「モデルの進化と追加」。画像生成用の「Image Model」が2になり、ベクターデータを生成する「Vector Model」と、文書のレイアウトデザインを生成する「Design Model」が追加された。時期は未定ながら、「Video Model」「Audio Model」「3D Model」の開発がスタートしていることも公開された。
これらは素晴らしいことではあるが、ある意味予想の範疇でもある。より仕事現場での活用に重要なのは、「生成Match」と「Modelのカスタマイズ」だ。
前者は、すでに誰でもウェブ版のFireflyから使える。プロンプトから画像を作る際、イメージの元になる画像を用意して、そのテイストに合わせて画像を生成する。
後者は主に企業向け。数枚の画像を用意し、そこから得た結果をFireflyにプラグイン的に適応し、特定のテイストに沿ったコンテンツを生成するもの。ざっくりいえば、企業のロゴやカラールールを組み込んだコンテンツを用意し、それを読み込ませて生成すると「その企業っぽいコンテンツが用意される」と思えばいい。
生成AIに映像を作ってもらう場合、目的はいくつかあるだろう。ある人はアイデアを得るためのイメージボードを作ってもらうために使うのだろうし、またある人は、広告のために使う画像のバリエーションを増やすのが目的かもしれない。
アドビ デジタルメディア事業部門代表のデビッド・ワドワーニ氏は、クリエイティブ・コンテンツのニーズが「2026年には現在の5倍以上に跳ね上がるだろう」と予測を語る。
複数の地域で、複数のメディアに対し、より個人に最適化したマーケティングをしていくのだとすれば、コンテンツへのニーズは必然的に増加する。それをカバーするには、生成MatchやModelのカスタマイズが必要になる……というのも理解できる。