いまだにBlackBerryは使われている
ビジネスの成功と失敗が、エンタメと教訓になる米国の懐の深さ
Lazaridis氏をはじめとしたBlackBerry幹部が、作中でiPhoneの発表とその後をどう受け止めたのかは、機会があれば、ぜひ映画本編を見ていただきたい(記事掲載時点は国内のサブスクサービスでは未配信)。
一方でノキアの幹部のコメントはよく覚えている。「3G対応していない(初代iPhoneはGSMのみ)」「タッチ操作は別に新しくない」「アップルはその歴史において常にニッチだ」「北米と欧州は違う」といったものだ。そして、プレスルームの雑談でも意見が分かれていた。あるアナリストが、PCと同じパターンを当てはめるなら、ライバルは良い形で模倣をして、市場のトレンドに早く追随すべきだと述べていたが、それは完全に正解だった(あの時のアナリストが誰だったのか思い出せないのが残念だ)。
iPhoneに市場を揺るがされ、さらにはAndroidが立ち上がったことで、NokiaはSymbianを買収してSymbian FoundationとしてOSをオープンにした。
その後はご存じのように、「スマートフォン」は実質的にiPhoneとAndroidのことを指すようになる。デバイスメーカーでは、Nokiaは姿を消し、BlackBerryも撤退した。
BlackBerryの映画を観た後に向かった米国でのイベントで一緒になったシンガポールのジャーナリストは、いまだにBlackBerryを使っていた(彼のBlackBerryを見ながら、このコラムを書こうと思った)。この方は長らくNokiaファン、その後BlackBerryを使うようになったとのこと。ハードウェアキーボードによる入力、セキュリティー、ビジネス用途での利用が魅力らしく、現在で5機種目。機種は「BlackBerry KEY2」で、すでに4年目だそう。
BlackBerryのような映画が作成されることに、北米の人々の懐の深さというか、学びの姿勢(単なるエンタメ目的かもしれないが)を感じる。日本も、2007~2008年を境にモバイル業界は大きく変わった。3Gを契機に世界進出を図ろうとしていた日本のメーカーもあったが、その多くが今ではスマートフォンを作っていない。映画やドキュメンタリーになることがあれば、ぜひ観てみたい。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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