写真はイメージ Joshua Hoehne | Unsplash
スマホやPCで遺言書を書く時代が訪れそうだ。
2023年10月2日以降、報道各社がこのニュースを配信している。
遺言書には複数の種類があるが、「自筆証書遺言」は本人が手書きして、押印する必要がある。
複数の報道によれば、この自筆証書遺言をスマートフォンやPCでつくる制度をつくるため法務省が近く、有識者会議を設置するという。
手軽に遺言を残す人を増やし、家族の中での争いを防ぐことが政策の狙いだが、やはり遺言書の偽造をどう防ぐかなど、いくつかの課題が指摘されている。
自筆証書遺言は手間がかかる
自筆証書遺言を用意するのは、なかなか手間がかかる。
民法にはっきりと、その方法が書かれている。
遺言を残す人が、全文と日付、氏名を手書きして押印する。
現在の制度では、遺言の本文は手書きが必須だが、財産のリストを添付する場合は、PCなどでつくって、署名、押印することになる。
とても手間のかかる作業を、PCやスマホでもできるようになれば、遺言を残す人の負担は軽減される。
さらに、手軽に遺言を残せるようになれば、波及効果として遺言を残す人の数も増えるかもしれない。
そうなると、相続を巡ってモメる家族を減らせる可能性もある。
課題はとても多い
良いことばかりにも思えるが、具体的な制度設計はこれから有識者会議で議論されることになる。
検討すべき課題は、多岐にわたりそうだ。
たとえば、Wordで書いた遺言書を印刷し、本人が署名と日付を記入するとしよう。
Wordで遺言書を書くのは、本人でなくてもできてしまう。
だれかが印刷した文書を用意して、遺言を残す人を脅して署名させることもできるかもしれない。
脅す側の立場を想像すると、全文を手書きさせるより、日付の記入と署名だけのほうが簡単にできそうだ。
2019年10月25日のForbesによれば、米国では実際に、訪問介護のヘルパーが印刷した遺言書を用意して、高齢の女性に署名させた事例があったそうだ。
高齢化が進む中で、本人が、自分の意思を確実に残せる状態だったかを確認するのも簡単ではない。
フロリダでは録音・録画が必須
電子遺言(e-Will)の制度構築では、米国が日本の少し先を走っている。
たとえばフロリダ州では、遺言書にサインをする手続きで会議を録音・録画することが必須とされている。
遺言者と証人が公証人のオフィスに行き、本人確認をする。
遺言書の内容を読み上げたうえで、遺言者が「自分の意思で署名しました」と宣言をする。
こうした一連の手続きを記録した動画を、編集せずに残すことが求められる。
そのうえで、保管機関に電子遺言と動画を保管することになる。
フロリダ州の電子遺言の手続きの流れを確認すると、むしろ日本の自筆証書遺言の方が簡単であるように思えてくる。
法務局にデータで保管が有力
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