画像クレジット:MITテクノロジーレビューの前身「Technology Review」1998年7月号/Robert Cardin
1990年代末から2000年代初頭にかけて、胚性幹細胞(ES細胞)の研究は大きな非難を浴び、米国政府からの資金援助を受けることもできなかった。25年が経った今、状況はどう変わったのか。
アントニオ・レガラード編集者が1998年に発表した本誌記事
「究極の細胞を求めて(The Troubled Hunt for the Ultimate Cell)」から
最も好奇心をかき立て、物議を醸し、資金不足で、秘密裏に進められている科学的探究に対して賞が与えられるとしたら、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)の探索が、おそらく席巻するだろう。ES細胞の探索とは、ヒトの身体を構成するあらゆる細胞を生み出す能力を持つ万能細胞を探し出すことだ。この謎の細胞を見つけ出し、培養できれば、医学の様相は一変するかもしれない。さまざまなすばらしい可能性が期待されているが、特に、ヒト組織を自由に培養できるようになる可能性があるからだ。
(中略)
(しかし)ES細胞は、胚または非常に未熟な段階の胎児にのみ存在する。胎児の生命を尊重するプロライフ派は、このような科学を阻止しようと、ES細胞を探究している研究者をターゲットにしている。さらに、米連邦政府はヒト胚研究への連邦資金の投入を禁止し、発生生物学の主流から締め出している。さらに悪いことに、ヒトES細胞はヒト遺伝子操作の手段となる可能性があり、ヒトのクローニングを取り巻く倫理的ジレンマがこの分野に波及する恐れがある。
レガラード編集者による2023年の最新情報
論争は何年も続いたが、2000年代初頭のこの幹細胞戦争では科学が宗教に勝利した。現在、ES細胞の研究は連邦政府から資金援助を受けている。そして生物学は驚くべき結果を出し続けている。その最新のものは、実験室で幹細胞が自己組織化し、驚くほど本物に近い「人工」胚を作れるという研究結果だ。これが新たな議論となっている。