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がん治療の効果を早期に検出、岐阜大らの重水素MRI法

2023年09月28日 06時25分更新

文● MIT Technology Review Japan

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岐阜大学と九州大学の研究グループは、がん治療の効果を精密に映し出す重水素MRI法を開発した。放射線治療や抗がん剤による治療の後、数週間から数カ月にわたってがんの大きさが変わらないことがあるため、従来のCT(コンピュータ断層撮影)や MRI(磁気共鳴画像法)の画像からは、治療効果を判断することが難しかった。

岐阜大学と九州大学の研究グループは、がん治療の効果を精密に映し出す重水素MRI法を開発した。放射線治療や抗がん剤による治療の後、数週間から数カ月にわたってがんの大きさが変わらないことがあるため、従来のCT(コンピュータ断層撮影)や MRI(磁気共鳴画像法)の画像からは、治療効果を判断することが難しかった。 重水素は核スピン(陽子と中性子を1つずつ)を持つため、MRIで信号を得られる。これまでに、ヒトへの応用が困難な超高磁場(磁場強度7テスラなど)MRIを利用した重水素MRIの研究があったが、今回の研究では臨床現場に広く普及している磁場強度1.5テスラの機器でも使える重水素MRI法を開発した。 研究グループはまず、1.5テスラの磁場に適合する検出器(9.8MHz)を使用して、重水と水を含む疑似試料を重水素イメージングで解析した。具体的には膵がん移植モデルマウスを作成し、重水30%を含む水を自由飲水で与え、経日的に重水素イメージングで撮影した。その結果、マウス体内の重水素のMRI信号は経日的に増強し、特にがん組織に顕著に蓄積することが明らかになった。 続いてモデルマウスに放射線治療や抗がん剤治療を開始し、1日目、3日目、7日目に重水素イメージングと通常のMRIで画像を取得した。その結果MRI画像ではがんの大きさが治療10日後も変わらないということしか分からなかったが、重水素イメージングで重水の蓄積を見ると、治療1日後、3日後に明確な変化を確認できた。 研究成果は9月21日、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clinical Cancer Research)誌にオンライン掲載された。今回の研究成果はがん治療の早期治療効果の判別だけでなく、さまざまな重水素含有分子を使用した機能、代謝イメージングへの応用も期待できるという。

(笹田)

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