フルHDならスト6も快適!10万円強と安価なゲーミングデスクトップPCの実力をチェック

文●松野将太 編集●ジサトラハッチ

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「NEXTGEAR JG-A5G1D」。直販価格は10万9800円(送料込み)

 マウスコンピューターは7月から、新たなゲーミングブランド「NEXTGEAR」シリーズ製品の販売を開始している。

 そもそも“NEXTGEAR”と言えば、かつては同じ名称が同社のゲーミングPCで使用されていたことを覚えている人もいるだろう。ここ数年はゲーミング向けモデルが「G-Tune」、クリエイティブ向けモデルが「DAIV」といったブランドに統一される流れもあり、“NEXTGEAR”の名を冠する製品は販売されていなかったが、今回新たなブランドとして再び日の目を見ることになったわけだ。

 そんな「NEXTGEAR」の大きな特徴は、同社の店舗を除くECサイトでのみ販売される点に加え、ブランドとしてコストパフォーマンスの良さを強く訴求している点が挙げられる。実際、この記事のレビューで取り扱う「NEXTGEAR JG-A5G1D」は、CPUにAMDの「Ryzen 5 4500」、GPUにNVIDIAの「GeForce GTX 1660 SUPER」を採用するエントリーゲーミング構成で、直販価格は10万9800円から。ゲーミングPCとしては非常に安価なモデルということで、予算に余裕のない学生ゲーマーやゲーミングPCの入門機として注目を浴びそうだ。

 さっそく、「NEXTGEAR JG-A5G1D」の外観や使い勝手、ベンチマーク結果などをチェックしていこう。

ガラス製サイドパネル標準装備、新筐体のミニタワーPC

 「NEXTGEAR JG-A5G1D」のPCケースは、同ブランド用に新造された筐体を採用。ゲーミングPCらしい落ち着いたブラックカラーのミニタワーケースで、フロントに大きなクロス(X)をかたどった個性的なデザインが目を引く。クロスの中心部にはブランドカラーでもあるマゼンタでブランドのエンブレムを配しているほか、クロスの周囲にはメッシュ加工が施されている。BTOカスタマイズで用意されている「赤色LEDケースファン」などを採用した場合、起動時には内部のLEDカラーが漏れ出ることで、非通電時とは印象が大きく変わる二面性を楽しめるだろう。本体サイズはおよそ幅220×奥行424×高さ410と、ミニタワーとしてはそこそこの大きさだが設置性は悪くない。

フロント部には「NEXTGEAR」のブランドロゴが。X字をかたどったデザインは周辺がメッシュで大きく切り取られており、通気性は良好

フロントインターフェースは筐体天面に配置。2つのUSB 3.0ポートとオーディオジャック、電源ボタンを用意している

 フロントのインターフェースは、筐体天面にまとめて配置されており、USB 3.0ポート×2、ヘッドフォン出力端子、マイク入力端子、電源ボタンを用意。このあたりはオーソドックスな設計で、側面を壁に寄せてPCを配置した場合でもポートが使用しにくくなることがないのは嬉しい。ただし、天面にも通気口が用意されているため、PCの上に物を置くような使い方はあまり向いていないと言えるだろう。

 吸気口はフロント脇に加え、左のサイドパネルにも用意されている。吸気ファンがトップフローのCPUクーラーのみということもあり、壁から離して設置したい。

 ケースの通気口は前面のメッシュ部分や天面のほか、底面にも用意されている。左サイドパネルは強化ガラスで、右サイドパネルは開口部のないシンプルなプレート状となっており、どちらかの側面を壁に寄せるような配置でも冷却性に影響は出にくいと思われる。ちなみに天面と底面の通気口はフィルターが用意されており、水洗いなどのメンテナンスは容易だ。

 内部のレイアウトを確認すると、パーツ自体がエントリー向けであることに加え、本体前面付近にベイなどが配置されていないこともあって、非常にスッキリした印象を受ける。エアフローも前面および底面から吸気、天面および背面から排気とオーソドックスな流れで、阻害するような大型パーツがないため通気性は非常にいい。作業スペースが広く取れることから、購入後にメモリーを交換する、あるいはグラフィックスカードを取り換えるといったカスタマイズもそれほど難しくないだろう。

 背面インターフェース類は要点を押さえた構成で、グラフィックスカードの映像出力はHDMI端子×1、DisplayPort端子×3の計4系統が用意されている。USBポートはUSB 3.0×4、USB 3.1 Type-A×1、USB 3.1 Type-C×1、USB 2.0×2の計8つで、フロントと合わせて計10個のポートを利用できる。エントリーモデルながら比較的充実したポート数が揃っていることから、デバイスの接続に関して大きな問題になるポイントはなさそうだ。一方、ネットワークは有線LAN接続のみに対応するため、無線LANを利用したいユーザーは注意が必要となる。

フルHDゲーミングなら高負荷ゲームでもおおむね健闘

「CPU-Z」で取得した「Ryzen 5 4500」の情報

「GPU-Z」で取得した「GeForce GTX 1660 SUPER」の情報

※記事公開時に掲載していたGPU-Zの画像について、ベンダー名が表示された状態で公開しておりましたが、時期によって変更の可能性があるため変更しています(10/10 20:00)。

 続いて、「NEXTGEAR JG-A5G1D」の性能面をチェックしていく。冒頭で述べた通り、CPUに「Ryzen 5 4500」、GPUに「GeForce GTX 1660 SUPER」を搭載する本製品は、ゲーミングPCとしてはエントリークラスにカテゴライズされる性能を誇る。ちなみにメモリー容量は16GB(DDR4-3200)で、ストレージ容量は1TBと、安価なモデルながらしっかりとメモリー・ストレージ容量が確保できているあたりは好印象だ。GPU性能はそこそこのため、基本的にはフルHD解像度のゲーミングで利用していくことになるわけだが、実際の性能はどんなものかをベンチマークで確認してみよう。

 まずはCPUの性能を計測する定番ベンチマーク「CINEBENCH R23」の結果を見ていこう。マルチスレッドテストおよびシングルスレッドテストのスコアーを計測している。

「CIENEBENCH R23」のスコアー

 「CIENEBENCH R23」では、マルチスレッドテストのスコアーが9099cb、シングルスレッドテストのスコアーが1194cbと、近年の10スレッド超えCPUらしく比較的高い性能を発揮できている。「Ryzen 5 4500」自体は世代が古いCPUだが、ある程度ゲーム向けの性能を確保でき、コストパフォーマンスに優れることから選定されているのだろう。

 続いて、PCの3D性能を計測する定番ベンチマーク「3DMark」の結果から見ていこう。テストは「Time Spy」「Time Spy Extreme」「Fire Strike」「Fire Strike Extreme」「Fire Strike Ultra」の計5つを実行している。

「Time Spy」のスコアー

「Time Spy Extreme」のスコアー

 DirextX 12系のテストである「Time Spy」2種は、WQHD解像度でのテストとなる「Time Spy」のスコアーは6009とまずまず。一方で4K解像度のテスト「Time Spy Extreme」は、スコアー2797と振るわないものの、本製品のターゲットを考えれば当然ではある。「Time Spy」テスト中のフレームレートはおおよそ60fpsを下回っているものの、おおむね30fps以上は発揮できており、ある程度はWQHD解像度の高負荷なゲームプレイにも対応できることが分かる。

「Fire Strike」のスコアー

「Fire Strike Extreme」のスコアー

「Fire Strike Ultra」のスコアー

 DirectX 11を用いたテストであるFire Strike系3種は、フルHD解像度で描画される「Fire Strike」では14485と十分な結果が出ており、WQHDの「Fire Strike Extreme」に関しても7048と及第点。基本的にはフルHD向け製品であることから、本来のターゲットである「Fire Strike」テストで良好な結果が出ていることに注目すべきだろう。4K解像度で描画される「Fire Strike Ultra」のスコアーは「Time Spy Extreme」と同じく伸び悩んでいるが、前述のような理由もあり、致し方ないと言える。

 実際のゲーム系ベンチマークも見てみよう。まずは「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」だ。画質は最高品質、フルスクリーンの設定で、フルHDおよびWQHD解像度での計測を実施している。

「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(フルHD)のスコアー

「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(WQHD)のスコアー

 フルHD解像度ではスコアーが13446、判定は最高から1つ下の「とても快適」と、実際のプレイにまったく問題ない結果が出た。WQHD解像度ではスコアーが9916で、こちらは判定が「快適」。基本的には60fps以上で安定するフレームレートを意識してフルHD解像度でプレイすべきだが、画面のなめらかさを多少犠牲にしても解像度を上げたいのであればWQHDも視野に入ってくる、といったところだろうか。

 続いて、今年発売の注目タイトルである「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」での結果を見てみよう。こちらは画質がもっとも高くなるよう設定した上で、解像度フルHD、WQHDの2パターンで結果を計測している。

「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」(フルHD)のスコアー

「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」(WQHD)のスコアー

 本ベンチマークでは通常の対戦環境を想定した「FIGHTING GROUND」のみ60fpsの制限がかかり、残り2モードは上限が120fpsとなっている。フルHD計測時の評価は最高点である100点で、「FIGHTING GROUND」はほぼ60fps張り付き、「BATTLE HUB」および「WORLD TOUR」では平均60fps越えの快適なフレームレートを達成できた。一方、WQHDではどのモードも平均60fpsを下回り設定変更が推奨されている。フルHDであれば画面のカクつきもなく快適にプレイできるため、大きな問題はないだろう。

 重量級タイトルとして、「Cyberpunk 2077」の結果も計測してみた。こちらは画質プリセットを「ウルトラ」に設定し、解像度フルHD、WQHDの2パターンで結果を計測している。

「Cyberpunk 2077」(フルHD)のスコアー

「Cyberpunk 2077」(WQHD)のスコアー

 発売から日は経っているものの現行タイトルでも屈指の高負荷である本作の場合、フルHDでも平均fpsが50.48fpsに留まる。画質を下げることで平均60fps近くまでフレームレートが向上するため、画面の滑らかさが気になるようであれば設定を調整したほうがいいかもしれない。いずれにせよ、約11万円のエントリーゲーミングPCでも「Cyberpunk 2077」をある程度スムーズにプレイ可能なわけだ。AAA級タイトルを遊びたいが予算に余裕がないユーザーにとっては、本製品のようなPCが魅力的な選択肢と言えるだろう。

「CrystalDiskMark 8.0.4」のスコアー

 最後に、PCのストレージ性能をテストする定番ベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.4」の結果を見てみよう。読み込み・書き込みともにNVMe SSDとしてはそこまで速くないが、一般的なSATA SSDの速度は超えている。エントリー機のSSDとしては悪くなく、容量が1TBとしっかり確保されている点も評価できるポイントだろう。近年は1本でデータ容量100GBを超えるようなゲームも増えてきているが、Steamのクラウドセーブ機能なども組み合わせれば、そうそう容量不足に困ることはないだろう。

バランス良好なエントリーモデル

 「NEXTGEAR JG-A5G1D」のゲーミング性能はエントリー機としてはまずまずで、フルHD解像度であれば多くのタイトルを快適にプレイ可能なポテンシャルを備えている。コストパフォーマンスも良好で、この価格帯の製品にしてはメモリーやストレージ容量がしっかりと確保されている点も嬉しい。もちろん、ゲーミングPCのスペックは上を見ればキリがないが、エントリー機としての構成のバランスの良さは随一だろう。コストパフォーマンスに優れるPCを探しているゲーマーは、本製品に注目してみてはいかがだろうか。