アドビはオランダのアムステルダムで9月15日(現地時間)から開催される、「IBC (International Broadcasting Convention)2023」にあわせて、Adobe Creative Cloudのビデオ製品群の最新アップデートを公開した。動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro」に搭載され、注目を集めている「文字起こしベースの編集」に、さらに便利な新機能が追加されるほか、AIを用いてサウンドからノイズを取り除き、話し声を際立たせる機能なども新たに搭載される。このほか「After Effects」「Frame.io」にも新機能が追加されている。
Adobe Premiere Pro」の「文字起こしベースの編集」は、文字起こしされた動画内のテキストを編集することで、動画そのものを編集できる機能。テキストデータから不要なセリフを削除したり、入れ替えたりすると、自動的に動画の該当箇所も削除、編集される。動画編集のスキルがなくても、簡易編集ができる画期的なものだ。今回のアップデートではさらに、トーク中に生じた無音の間や、「あー」とか「え-」といったフィラーワードを自動検出して、一斉削除できるようになる。無音の長さなどを設定して検出でき、面倒なトークの間を詰める作業の自動化が可能。テンポの良いトーク動画を簡単に作成できる。
「Adobe Premiere Pro」には今回、AIを用いた「スピーチを強調」機能も追加されている。これは現在ベータ版として提供中の、クラウドベースの音声収録/編集サービス「Adobe Podcast」で、すでに提供されている「Enhance Speech」機能を「Adobe Premiere Pro」で使えるようにしたもの。ワンクリックの操作でAIが音声データを解析し、ノイズやエコーを除去して話し声を際立たせ、聞き取りやすくしてくれる。
カラーマネージメントも強化される。異なる機材で撮影した動画を組み合わせる際に、一貫した色彩にするための「自動トーンマッピング」をアップデート。素材ごとのカラーを調整する「Lumetriカラー」パネルの設定項目が再構成され、HDRから709へなど適応するマッピング手法を選択しての色彩調整が、よりやりやすくなる。
このほか、「Adobe Premiere Pro」の信頼性を高めるアップデートも行われる。タイムラインUIの表示速度が従来比の5倍にスピードアップされるほか、クラッシュしたときに、原因となった非互換プラグインを検出して無効化できるなど、迅速なトラブルシューティングが可能な「エフェクトマネージャー」も追加。バックグラウンドでの自動保存機能とあわせて、自動復元ができる機能も追加され、作業が失われるリスクを低減する。
「Adobe After Effects」「Frame.io」もアップデート
モーショングラフィックスソフト「Adobe After Effects」では、「Adobe Substance 3D」などで作成した3Dのオブジェクトを読み込んで、ライティングの調整やレンダリングが可能になる。高性能なGPUに対応する3Dエンジンを新たに搭載。3Dのオブジェクトと2Dの素材を組み合わせた編集が可能な、3Dワークスペースをが実現する。加えて、オブジェクトの切り抜きを簡単に行える、「ロトスコープ」がAIによって進化。これまで難しかった手足の重なりなども、しっかり切り抜けるようになる。
クラウド型のコラボレーションプラットフォーム「Frame.io」では、動画だけでなく画像やPDFなどのデータも画面に並べて表示可能に。比較レビューしながらコメントなどを追加できるようになる。またカメラから動画を即共有できる「Camera to Cloud」の対応デバイスが増加。iPhoneを外部モニター化できるアダプター「Accsoon SeeMo/SeeMo Pro」のような対応製品を使えば、ハイエンドなプロエッショナルカメラだけでなく、様々なカメラをエコシステムに組み込める。
今回アップデートされた新機能は、9月13日からベータ版として提供が開始されている。製品版は今年の秋以降、順次リリースされる予定だ。