8月中旬、大雨の影響で東海道新幹線のダイヤが乱れ、お盆の帰宅ラッシュに多大な影響を与えたのは記憶に新しいところだ。
近年、日本では地震・台風・洪水などといった自然災害が多発し、テレビやネットでは大雨特別警報、波浪警報など多くの警報が発令されている。
しかし、ひとえに警報といっても、大雨特別警報と大雨警報は一体なにが違うのか、筆者も突然聞かれたら、正しく答えられる自信がない。
そこで本記事では気象庁が発令する警報の内容、そして種類をグラフにまとめてみた。いざニュース等で情報を見たときの参考になれば幸いである。
特別警報・警報・注意報の違い
まずは○○特別警報、○○警報、○○注意報の違いについて解説したい。以下の情報は気象庁のホームページを参考にしている。
特別警報:警報の発表基準をはるかに超える大雨等が予想され、重大な災害が発生するおそれが著しく高まっている場合、特別警報を発表し、最大級の警戒を呼びかける
警報:重大な災害が発生するおそれのあるときに警戒を呼びかけて行う予報
注意報:災害が発生するおそれのあるときに注意を呼びかけて行う予報
特別警報については、警報の発表基準をはるかに超える大雨や、大津波等が予想され、重大な災害の起こるおそれが著しく高まっている場合に発表するという。
つまり特別警報が一番緊急度が高く、それに次いで警報、注意報と続く形となるが、気象庁はホームページにて「特別警報が発表されないからといって安心することは禁物」と記載している。
とくに大雨等については「特別警報の発表を待つことなく、時間を追って段階的に発表される気象情報、注意報、警報や「キキクル(危険度分布)」等を活用して、早め早めの避難行動を心がけてください」とも書かている。
なお、「キキクル(危険度分布)」は警報・注意報が発表されたときに、実際にどこで「指数」の予測値が警報・注意報の基準に到達すると予想されているのかが一目で分かるサービスとなっている。
警戒レベルについて
最近テレビやネットでよく見る「警戒レベル」。これは内閣府(防災担当)の「避難情報に関するガイドライン」において、災害時に自らの判断で意思決定をするための方針として示されたものだ。
自治体から警戒レベル4避難指示や警戒レベル3高齢者等避難が発令された際には速やかに避難行動をとる必要がある。
一方で、多くの場合、防災気象情報は自治体が発令する避難指示等よりも先に発表されるため、危険な場所からの避難が必要とされる警戒レベル4や高齢者等の避難が必要とされる警戒レベル3に相当する防災気象情報が発表された際には、避難指示等が発令されていなくてもキキクル(危険度分布)や河川の水位情報等を用いて自ら避難の判断をしてほしいとしている。
災害時の大きな指標となる情報になるので、あわせてチェックしておいてほしい。
気象警報・注意報の種類
特別警報などは気象庁によってそれぞれ種類別に分けられている。
聞きなれない用語もあるが、すべて起こりうる可能性はあるので、どんな警報や注意報があるのか改めて確認してみてほしい。
特別警報 | 内容 |
---|---|
大雨特別警報 | 台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量となる大雨が予想される場合に発表。特に警戒すべき事項を標題に明示して「大雨特別警報(土砂災害)」、「大雨特別警報(浸水害)」又は「大雨特別警報(土砂災害、浸水害)」のように発表する。 |
大雪特別警報 | 大雪特別警報は、数十年に一度の降雪量となる大雪が予想される場合に発表 |
暴風特別警報 | 数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により暴風が吹くと予想される場合に発表 |
暴風雪特別警報 | 数十年に一度の強度の台風と同程度の温帯低気圧により雪を伴う暴風が吹くと予想される場合に発表 |
波浪特別警報 | 数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により高波になると予想される場合に発表 |
高潮特別警報 | 数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により高潮になると予想される場合に発表 |
警報 | 内容 |
---|---|
大雨警報 | 大雨による重大な土砂災害や浸水害が発生するおそれがあると予想したときに発表。特に警戒すべき事項を標題に明示して「大雨警報(土砂災害)」、「大雨警報(浸水害)」又は「大雨警報(土砂災害、浸水害)」のように発表。雨が止んでも重大な土砂災害等のおそれが残っている場合には発表を継続する |
洪水警報 | 河川の上流域での大雨や融雪によって下流で生じる増水や氾濫により重大な洪水災害が発生するおそれがあると予想したときに発表。対象となる重大な洪水災害として、河川の増水・氾濫及び堤防の損傷・決壊、並びにこれらによる重大な浸水害があげられる |
大雪警報 | 降雪や積雪による住家等の被害や交通障害など、大雪により重大な災害が発生するおそれがあると予想したときに発表 |
暴風警報 | 暴風により重大な災害が発生するおそれがあると予想したときに発表 |
暴風雪警報 | 雪を伴う暴風により重大な災害が発生するおそれがあると予想したときに発表。暴風による重大な災害のおそれに加え、暴風で雪が舞って視界が遮られることによる重大な災害のおそれについても警戒を呼びかけます。ただし「大雪+暴風」の意味ではなく、大雪により重大な災害が発生するおそれがあると予想したときには大雪警報を発表 |
波浪警報 | 高波による遭難や沿岸施設の被害など、重大な災害が発生するおそれがあると予想したときに発表 |
高潮警報 | 台風や低気圧等による異常な潮位上昇により重大な災害が発生するおそれがあると予想したときに発表 |
注意報 | 内容 |
---|---|
大雨注意報 | 大雨による土砂災害や浸水害が発生するおそれがあると予想したときに発表。雨が止んでも、土砂災害等のおそれが残っている場合には発表を継続 |
洪水注意報 | 河川の上流域での大雨や融雪によって下流で生じる増水により洪水災害が発生するおそれがあると予想したときに発表。対象となる洪水災害として、河川の増水及び堤防の損傷、並びにこれらによる浸水害があげられる |
大雪注意報 | 降雪や積雪による住家等の被害や交通障害など、大雪により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表 |
強風注意報 | 強風により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表 |
風雪注意報 | 雪を伴う強風により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表。強風による災害のおそれに加え、強風で雪が舞って視界が遮られることによる災害のおそれについても注意を呼びかける。ただし「大雪+強風」の意味ではなく、大雪により災害が発生するおそれがあると予想したときには大雪注意報を発表 |
波浪注意報 | 高波による遭難や沿岸施設の被害など、災害が発生するおそれがあると予想したときに発表 |
高潮注意報 | 台風や低気圧等による異常な潮位上昇により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表 |
雷注意報 | 落雷のほか、急な強い雨、竜巻等の突風、降ひょうといった積乱雲の発達に伴い発生する激しい気象現象による人や建物への被害が発生するおそれがあると予想したときに発表 |
濃霧注意報 | 濃い霧により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表。対象となる災害として、濃い霧により見通しが悪くなることによる交通障害等の災害があげられる |
乾燥注意報 | 空気の乾燥により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表。具体的には、大気の乾燥により火災・延焼等が発生する危険が大きい気象条件を予想した場合に発表 |
なだれ注意報 | なだれによる災害が発生するおそれがあると予想したときに発表。山などの斜面に積もった雪が崩落することによる人や建物の被害が発生するおそれがあると予想したときに発表 |
着氷注意報 | 著しい着氷により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表。具体的には、水蒸気や水しぶきの付着・凍結による通信線・送電線の断線、船体着氷による転覆・沈没等の被害が発生するおそれのあるときに発表 |
着雪注意報 | 著しい着雪により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表。具体的には、雪が付着することによる電線等の断線や送電鉄塔等の倒壊等の被害が発生する(気温0度付近で発生しやすい)おそれのあるときに発表 |
融雪注意報 | 融雪により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表。具体的には、積雪が融解することによる土砂災害や浸水害が発生するおそれがあるときに発表 |
霜注意報 | 霜により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表。具体的には、春・秋に気温が下がって霜が発生することによる農作物や果実の被害が発生するおそれのあるときに発表 |
低温注意報 | 低温により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表。具体的には、低温による農作物の被害(冷夏の場合も含む)や水道管の凍結や破裂による著しい被害の発生するおそれがあるときに発表 |
全国瞬時警報システム(Jアラート)
特別警報などとは別に設けられている全国瞬時警報システム(以下:Jアラート)。どんな時に発報されるのかについても確認しておきたい。
Jアラートとは弾道ミサイル情報、緊急地震速報、大津波警報など、対処に時間的余裕のない事態に関する情報を、スマホ等に配信される緊急速報メール、市町村防災行政無線等により、国から住民まで瞬時に伝達するシステムとなる。
突発的に発報されるものなので、驚いてしまう人もいるかもしれないが、人命に関わってくるものでもあるので、詳しく知っておいて損をすることはないと思う。
なお、Jアラートの放送内容(例)については総務省消防庁のサイトで聞くことができる。いざという時に対応するためにもどんな内容であるか調べてみてはいかがだろう。
Jアラートおよび放送内容(例)については以下より。
https://www.fdma.go.jp/about/organization/post-18.html
※放送内容(例)では緊急情報の音声が流れるため、音量に注意し試聴してほしい
いざという時、どこで情報を知るべきか
ここまで、特別警報や注意報などについて解説してきたが、緊急時、どこで最新の情報を得るべきかと疑問に思う人もいるだろう。
最後に筆者がおすすめする防災・災害時にチェックしてほしいサイトを列挙していく。
・気象庁 防災情報
気象庁のホームページでは気象警報・注意報のほか、津波警報・予報、噴火速報まで、多くの災害発生情報にアクセスできる。
・国交省ハザードマップポータルサイト
洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴・成り立ちなどを地図や写真に自由に重ねて表示できる。使い方についてはこちらも参考にしてほしい。
・Yahoo!JAPAN 防災速報
さまざまな防災情報を迅速にプッシュ通知。カスタマイズ性も高く、現在地と国内3地点まで設定可能なほか、緊急地震速報などさまざまな情報に対応している。アプリのDLはこちらより。
・ウェザーニュース
ウェザーニュースのトップページの「防災・減災」の項目から地震・津波・台風をはじめとした最新の防災情報を確認できる。ウェザーニュース公式X(旧Twitter)でも台風、地震、大雨情報を拾いやすい。
・特務機関NERVアプリ
地震・津波・噴火の速報や土砂災害・浸水害・洪水害の危険度といった防災気象情報を、利用者の現在地や登録地点に基づき最適化して配信するスマホ用サービス。特務機関NERV 公式X(旧Twitter)の情報更新もかなり迅速。