2023年5月18日、「ジャパンサイクルリーグ」(以降、JCL)がバーチャルサイクリング体験アプリ「JCL VRoad」をリリースした。同アプリには、オンラインでバーチャルサイクルレースを楽しむ機能や、ロードレースの動画視聴機能が搭載されている。ロードレースの認知向上のほか、観光地のサイクルツーリズムにおける広報訴求、また利用者の健康増進への活用が期待されている。ジャパンサイクルリーグ共同代表の犬伏真広氏にその可能性を聞いた。
自宅にいながら全国各地の絶景コースをサイクリング
「JCL VRoad」のメインとなるのが「バーチャルサイクリング」機能だ。沖縄県宮古島や世界遺産である岐阜県の白川村、お台場のレインボーライドコースなど、JCLが選定した日本各地にある実在のコースを収録。アプリとフィットネスバイクを組み合わせることで、自宅にいながら全国各地をサイクリングすることができる。
フィットネスバイクはBluetooth接続でアプリと連動するタイプであればどれでも利用可能(ケイデンスセンサーを装着すれば、全てのフィットネスバイクが使用可能)。JCLとタイアップしているアルインコ社製のオリジナルフィットネスバイクであれば、より快適にバーチャルサイクルレースが楽しめるという。
「JCL VRoad」の利用料金は月額1000円。「Win/Mac版」と「iOS/Android版」で展開しており、アプリをダウンロードしてアカウントを作成することで利用可能になる。
サイクリング業界の発展につながる
「JCL VRoad」誕生の背景として、犬伏氏は「サイクリングを用いて新しいビジネスを生み出し、そこで生まれた収益を選手や競技に還元していくのが大きな趣旨」と話す。
スポーツ庁が「スポーツの産業化」を推し進めているように、スポーツ団体は収益率が低く、産業化しなければ今後の発展は難しいといわれている。多くのスポーツ団体が産業化に向けて試行錯誤している中で、JCLは「サイクリングは体を使ったバーチャルスポーツとの親和性が高い」という点に着目。フィットネスバイクで疑似的にサイクリングをするというアプローチで誕生したのが「JCL VRoad」だ。
犬伏氏は「ここで生まれた収益を競技や選手に還元するエコシステム、循環を作りたいと考えている。また、バーチャルにすることで、手軽に楽しめ、健康促進にも貢献できる。他にも、バーチャルからリアルの競技へと興味をつなげるのも狙い」とのこと。
新しい観戦体験、走行体験を多くのファンに届ける
従来のバーチャルサイクリングは、室内に自転車とモニターを置き、スマートローラーという高額な機器を導入して行うなど、場所もコストも必要だ。しかし、「JCL VRoad」を利用すれば、数万円のフィットネスバイクを導入するのみ。これまでと比較して安価で取り組みやすくなった。「興味はあるけど高いから」と敬遠していたライト層でも、バーチャルサイクリングが始めやすい環境になったといえる。
犬伏氏によると、「JCL VRoad」に対して「toB」、「toC」とさまざまな声が寄せられているという。例えば、東京都とは、アルインコ社製のオリジナルフィットネスバイクと「JCL VRoad」を用いたイベントを共同で実施。西武グループでは沿線で行うイベントで利用されているという。他にも、医療法人にはリハビリ目的で、高齢者施設にはお年寄りの健康促進を目的とした導入も進められている。
今後の課題と展望について犬伏氏は、「従来よりも手軽に始められるようになったものの、より普及を進めるにはフィットネスバイク側の改良など利便性を高めことが重要。また、シニア世代の利用を考えて、インターフェースをより分かりやすいようにするなど、ユーザビリティーの向上も求められる」と話す。
「認知の向上」も課題とのこと。他社と連携しての導入の拡大を図るとともに、イベントなど「アプリを知ってもらう機会」を積極的に作りつつ、協力企業と話題を生み出すことも視野に入れているという。
その他にも、間近で各選手を観戦できるバーチャル映像や、そのレースの中に自分もオンラインで参戦するという仕組みを「JCL VRoad」に導入することも検討されている。こうした新しい観戦、走行体験も期待したいところだ。
バーチャルサイクリングは「まだまだこれから」というのが現状だが、近年はeスポーツのひとつとして注目を集めている。「JCL VRoad」の登場によって、興味を持つ人がさらに増えるだけでなく、コスト面で敬遠していた層の参入も期待できる。ユーザー同士によるオンラインでのレースの実装も行なわなれる予定とのことだ。