東海旅客鉄道(JR東海)は8月8日、東海道新幹線の車内販売サービスを11月にリニューアルすると発表した。「東海道新幹線、ワゴン販売終了へ グリーン車のみモバイルオーダー対応」でも紹介した通り、ワゴンを使った車内販売を廃止し、グリーン車限定のモバイルオーダーシステムを導入するというものだ。
この記事では、ワゴン販売の終了について、元車内販売員でもある筆者が思うところを正直に述べていく。
なお、筆者が販売員をしていたのは約10年前のことで、勤務先も東海道新幹線を担当する企業とは異なる。当然、ワゴン販売廃止で職を失う立場にもない。本コラムはあくまで、「10年前に引退して既に安全圏にいる元同業者の視点」であることにご留意頂きたい。
半世紀以上の歴史をもつワゴン販売
本題に入る前に、日本の鉄道における車内販売の歴史に軽く触れておこう。
日本で食堂車以外の車内販売サービスが誕生したのは戦前期の1935年。食堂車の連結がない列車の乗客から、飲食物を車内で販売してほしいという要望が鉄道省(現国土交通省)へ届いたことがきっかけだ。
当時の車内販売は、商品を詰めた大きな箱や籠を持った販売員が車内を売り歩くスタイル。現在主流のワゴン販売については、正確な登場時期は不明だが、少なくとも1960年代には存在したことがわかっている。
車内販売全体では約90年、ワゴン販売だけに絞っても約60年の歴史があることを考慮すると、今回、JR東海が発表したリニューアルは業界史に残る大きな変革と言えるだろう。