理化学研究所(理研)や埼玉大学などの共同研究チームは、アンモニアを化学的に貯蔵するペロブスカイト化合物を発見した。二酸化炭素を含まない水素キャリア(液体や水素化合物にすることで効率的な貯蔵・運搬を可能にする物質)であるアンモニアを、安全かつ簡便に貯蔵できるようになる。
理化学研究所(理研)や埼玉大学などの共同研究チームは、アンモニアを化学的に貯蔵するペロブスカイト化合物を発見した。二酸化炭素を含まない水素キャリア(液体や水素化合物にすることで効率的な貯蔵・運搬を可能にする物質)であるアンモニアを、安全かつ簡便に貯蔵できるようになる。 ペロブスカイト化合物には、1次元(柱状)、2次元(層状)、3次元(立体)構造のものがあり、水蒸気や化学物質の蒸気に触れるとそれらを取り込んで構造変化することが知られている。研究チームは今回、1次元柱状構造を持つペロブスカイト化合物に着目。同化合物が、アンモニアと常温・常圧で化学反応を起こして2次元層状構造へ変化する際に、アンモニアを窒素化合物として2次元層状構造表面に貯蔵することを発見した。 さらに、貯蔵された窒素化合物は真空下50℃で逆反応を生じ、アンモニアへと戻ることを見い出した。1次元柱状構造に戻ったペロブスカイト化合物は再利用でき、繰り返しアンモニアの貯蔵と取り出しが可能になる。 大きな水素質量密度と水素体積密度を持つアンモニアは、水素キャリアとして注目されているが、常温・常圧では腐食性の高いガスのため、取り扱いや貯蔵が困難という欠点を併せ持つ。今回のペロブスカイト化合物は、腐食性のアンモニアを化学変換した後で貯蔵し、穏やかに加熱するだけで容易にアンモニアを取り出すことができるため、安全性が高いという。 研究論文は、米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society)オンライン版に2023年7月10日付けで掲載された。(中條)