ファーウェイとZTEに対する風当たりが、米国のみならず欧州でも強まる一方だ。欧州連合(EU)が先週、27の加盟国に対し、5Gネットワークにおける「ハイリスク」ベンダーの排除を急ぐよう呼びかけた。これに対し、ファーウェイ側は反論している。
ハイリスクサプライヤー対策を講じたのはEUのうち10ヵ国
6月15日、欧州委員会 域内市場担当のThierry Breton氏はイベントでテレコム分野について触れ、「EU Toolbox on 5G cybersecurity」(EUツールボックス)の実装を急ピッチで進めるように呼びかけた(https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/speech_23_3314)。
EUツールボックスとは、2020年に欧州委員会(EC)が5Gのセキュリティーリスクへの対応として用意した包括的な措置だ。5Gはこれまでのネットワークとは異なり、金融、製造業、エネルギー、ヘルスケアなどさまざまな分野で影響を受ける。EUは5Gによるリスクを5つのシナリオに分類し、域内全体で安全な5Gネットワークを構築するために緩和計画とアクションを定め、ツールボックスとして加盟国に提供している。
この中でECは、「モバイルネットワーク事業者に対するセキュリティー要件を強化する」「ハイリスクとみなされるサプライヤーについて、適切な制限を適用すること。重要な資産に対しては排除も含む」「マルチベンダー戦略を確実にする。単一サプライヤーへの依存を回避/制限する」などとしている。
加盟国はこれを実装しなければならない。その成果を報告するレポートが、6月15日に公開された。これが2回目のレポートとなる(https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/library/second-report-member-states-progress-implementing-eu-toolbox-5g-cybersecurity)。Breton氏の発言は、レポート公開に合わせたものとなり、ハイリスクサプライヤーを制限する法制定の動きが「遅すぎる」と苛立ちを隠さなかった模様だ。
テレコム業界における中国企業は
「エネルギーにおけるロシア」と同じ
レポートによると、ツールボックスで定められている通りに実施している国は10ヵ国。もう3ヵ国が国内法の整備を進めているところだという。これらを含めて、合計24ヵ国が当局にサプライヤーの評価と制限についての権限を与える措置を採択/準備中と報告している。
特筆すべきは、「ハイリスクサプライヤー」とオブラートに包んだ表現をするだけでなく、「ファーウェイ」「ZTE」と名指ししていること。「欧州委員会は、加盟国のファーウェイおよびZTEの5Gネットワーク採用を制限または排除する決定は正当であり、ツールボックスに沿うもの」としている点だろう。「ファーウェイとZTEは、他の5G技術サプライヤーよりも実質的に高いリスクを負っている」。
また、「まだツールボックスを実装していない加盟国は、特定したサプライヤーがもたらすリスクにすぐにでも対応するために、ツールボックスで推奨されている適切な措置をすぐに採用するよう求める」と表現しており、実質的な禁止と取れなくもない。
Breton氏は、この状況をエネルギーにおけるロシアと同等という見解を示した。ロシア・ウクライナ戦争により、EUはエネルギーでのロシアへの依存を弱める方向性を打ち出している。「不可能と思われるような短期間で、エネルギーのようなセクターでの依存を削減できた。5Gの状況も同じだ。我々の利害に対する“兵器”になるような重要度が高い依存を、そのままにしておくことはできない」と厳しいコメントを残している。
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