匿名アプリ、飛ばしのケータイで「使い捨ての駒」に
なぜ闇バイトが増えたのか。理由は犯罪組織にとって、実行犯を「使い捨ての駒」として使える利便性があるからです。
三上さんによれば闇バイトは犯罪のピラミッド構造の最下段にいます。一番上に犯罪グループがいて、それぞれの犯行をマニュアル化しています。その下に指示役・監視役という実際に計画を立てる人、リクルートする人などが入ります。
その下に実行役にあたる闇バイトが入りますが、上部組織とは完全に切り離された「捨て駒」になります。
指示役は30秒から60秒程度でメッセージが自動的に消去される「Telegram」「Signal」など匿名性の高いメッセージアプリで実行役と連絡をとっています。連絡には「飛ばし」と呼ばれる他人名義、架空名義の携帯電話が使われることも多く、犯行を企てる上部組織は「足がつきにくい」状態になります。
さらに、実行犯が捕まっても、上部組織まで捜査が及びにくいという状況から、これまででは考えられないほど大胆な事件も出てきているといいます。
そのひとつが、今年5月に容疑者が逮捕された「SIMスワップ」詐欺。偽造した身分証を持って携帯電話ショップに行き、紛失を装いSIMカードを再発行させ、スマートフォンを乗っ取ってしまうというもの。実行犯は顔を隠すこともなく携帯電話ショップに行くため、捕まるリスクがとても高い手口です。
「これは実行犯が捕まることを前提としているからできるんです。今までなら捕まらないよう、知恵を絞らないといけなかった。強盗事件にしても、『お面をかぶって逃げろ』と言ったところで逃げられるわけがない。捨て駒だから、ダメでもいいから無茶させようという話なんです」(三上さん)