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佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第197回

DACもアンプもディスクリートで組んだ「Cayin N6」を聴く

2023年06月18日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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 Cayin(カイン)は中国のオーディオメーカーで、真空管アンプなどの製品で日本でも以前からよく知られている。イヤホンからデジタルオーディオプレーヤー(DAP)まで、さまざまなポータブルオーディオ製品を開発している。

Cayin N7

Cayin N7

 例えば、デジタルオーディオプレーヤーのCayin N6シリーズは“オーディオマザーボード交換式”というユニークな方式を採用し、注目を浴びた。オーディオマザーボードには複数の種類があり、A01ボードはAK4497EQ、T01ボードはPCM1792A、E01ボードはES9038PRO、R01ボードはR-2R DACなど、異なるDACを搭載している。さらに、A02ボードはアナログ出力をLINE-OUT/プリアウト専用にするなど、ユニークなアプローチを取っている。

 この記事で紹介する最新機種「Cayin N7」では、そのアプローチを一転して、独自のDACとアンプを採用している。ユニークな点は、DACからアンプに至るまですべてがディスクリート構成になっている点だ。普通のDAPは、DAC回路やアンプ回路に既製品(DAC ICやオペアンプ)を使用することが多いが、ディスクリート構成とはそうした既製品を用いずに、抵抗やトランジスターなどの基本パーツを組み合わせることで実現するものだ。開発難易度はより高くなるが、そのぶんメーカーは音にこだわれる。

Cayin N7

ディスクリート回路

 N7では、DAC回路に128個もの高精度薄膜抵抗を用いてDSDデコードの回路を設計している。また、アンプ回路もJFETなどで構成されるディスクリート設計が採用されている。

 内蔵ストレージは64GBで、microSDカードで最大1TBまでの増設に対応する。搭載OSはAndroid 12ベース。最新鋭機らしく、DAPとしては新しいバージョンだ。専用の音楽再生アプリもあるが、Google Playでアプリの追加もできる。

 筐体は大型。精悍で高級感のある外観はフラッグシップ機らしい。端子などに金をあしらわれている点は、金色を好む中国製品らしさを感じる。側面のハードボタンはシンプルで押しやすい。液晶画面も発色が美しい。電源投入するとAndroidデスクトップが表示されるが、Cayinのロゴのアイコンを押し下げると、独自の音楽アプリが立ち上がる。操作はスムーズに行うことができる。

 4.4mmバランス端子にqdcの「TIGER」を接続し、音を聞いてみる。

 音質はかなり上質だ。アナログ的なスムーズで滑らかさのあるサウンドでありながらも、音楽の細部を再現する力も高く、小さい音がよく聞こえる。音の角が取れて滑らかなサウンドはディスクリート構成ゆえの上質感だろう。女性ヴォーカルの表現は尖ったところがなく甘い感じがするので、声を魅力的に感じさせる点も良い。

 また、低音の打撃感はかなり重みとパンチ感がある。こうした力強さもディスクリート構成のアンプならではなのかもしれない。アンプの増幅タイプをClass AとClass ABで切り替えが可能なのも面白い。両社の差は大きく、切り替えるとすぐにわかる。やはり、Class Aだと滑らかで温かみがあるが、Class ABだと硬めで乾いた感じがする。Class Aは「高級オーディオ」らしい音で、単にディスクリートにしただけではなく、クラスAの効果がいかに大きいかがわかる。

Cayin N7

 DAC回路もアンプ回路もディスクリート構成というのは一部のハイエンドオーディオにしかなかった設計手法だが、ポータブルオーディオでもこうした試みが出てくるのは興味深いと思う。

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