KDDIは、楽天モバイルとの間での締結したauネットワークへの新たなローミング協定について、同社執行役員 パーソナル事業本部副事業本部長 兼 事業創造本部長の松田浩路氏がメディア向けに説明を行なった。
楽天側は99.9%の人口カバー率をアピール
auローミングでも上限無しでデータ通信が可能に
両社間の新ローミング協定の締結は5月11日に公表(「楽天モバイル、「財務負担を限定しつつ接続性を向上する」ため、都市部でauローミングを再活用」)。その翌日には楽天モバイルから、6月からの新ローミングで人口カバー率が99.9%になること、従来はauローミング時にあった制限(月5GBまで、以降は最大1Mbps)がなくなった新プラン「Rakuten最強プラン」が、同じく6月に開始されることが発表されている(「楽天モバイル、au回線でもデータ無制限の「Rakuten最強プラン」に! 料金変わらず、最大月3278円」)。
ただ一方でネット上では、「楽天モバイルは最大月3278円と安いのに、6月以降はauと同じエリアと速度で使い放題」「データ無制限の楽天モバイルのユーザーがauネットワークでどんどん使うと回線が混雑して、auユーザーの通信品質が落ちないか心配」といった声も見られる。そのことが、今回メディア向けに説明がなされた背景にあると考えられる。
auの4Gネットワークは複数の周波数を用いられているが、
ローミングで提供されるのは800MHz帯のみ
まず前提として、auの4Gネットワークは、メインとして用いられている800MHz帯のほかにも、700MHz帯/1.5GHz帯/1.7GHz帯/2GHz帯/2.5GHz帯/3.5GHz帯の各周波数でもサービスが提供されており(一部は5Gに転用されている)、複数の周波数を束ねるキャリアアグリゲーションによって、高速な通信を実現している。
それに対して、楽天モバイルにローミング提供されるのは、従来も6月以降も800MHz帯のみ。キャリアアグリゲーションで4Gサービスが提供されているエリアでは、楽天ユーザーがローミングでauネットワークに接続しても、au/UQユーザーと同品質の通信サービスにならない可能性が高い。
またエリアの問題については、auは人口が少ない地域では、電波が飛びやすい、いわゆる“プラチナバンド”の800MHz帯を中心にネットワークを構築しているため、ローミング提供が800MHz帯のみでも広いエリアをカバーできる。ただし、そうした地域で楽天モバイルがauローミングを利用しているのは現在も同じなので、そもそも楽天モバイルがアピールする主要3キャリアレベルの人口カバー率は、すでに実現されているとも言える(もちろん、auローミングに依存する地域でも月5GBまでの制限に縛られずに、データ通信が利用できるという点で、楽天モバイルの新プランは大きなメリットがある)。
東名阪の繁華街エリアのローミングは「スポットで提供」
ローミングのユーザーによるトラフィックは一部
続いて、都市部について。新協定では、当初からauローミングが提供されていなかった東名阪の「一部の繁華街エリア」が加わったことが話題になっている。そのエリアについては、あくまで「イメージ」という形ながら、スポット的な提供に留まることが明かされた。また、従来からあった「局所的なトラフィック混雑エリアを除く」という条件は変わらず。さらに、繁華街でのau 4Gネットワーク全体におけるローミング提供のトラフィックの割合は一部に限定されるという見通しを示しており、au/UQユーザーに影響はないとしている。
質疑応答では、都心部と人口が少ない地域の中間的なエリア、たとえば楽天モバイルが自社回線でエリア化して、すでにローミングを終了したが、基地局の密度の関係から屋内や建物の影などで繋がりにくいような地域でローミングが復活するのかと問われたが、「両社の協議の上で決定する」と今後の可能性は否定しなかったものの、少なくとも今年6月の時点ではそのようなパターンでのローミング復活は基本ないと考えてよさそうだ。
引き続き注目が集まる楽天モバイルの新ローミングと新プラン。実際のところはどうか。まずは6月の開始を待つ必要がありそうだ。