米国の当局は、Facebookの親会社メタが18歳未満の子どもたちのデータを利用し、収益を得るビジネスを禁止する規制案を公表した。
規制案は、2023年5月3日に米国の連邦取引員会(FTC)が提案したものだ。規制案を公表するプレスリリースの見出しには、メタの事業に対する「全面禁止(blanket prohibition)」と明記されており、実現した場合、厳しい内容となる。
18歳未満のデータの商用利用の全面禁止は、Facebookだけにとどまらず、メタ傘下のInstagram、WhatsApp、Oculusも含まれる。
米政界では、ソーシャルメディアのフィードや、チャットによる悪影響から子どもたちを保護する動きが強まっている。
包括的な子どもの保護を目指す法律の制定を目指す動きもあり、今回のFTCのメタに対する規制強化案は、こうした動きに先行するものと言えるだろう。
18歳未満向けの広告は表示できなくなる?
今回、FTCが極めて強い措置を打ち出した理由として、メタ側が、2020年のFTCの命令を適正に履行していなかったことが挙げられている。
FTCはたとえば、子ども向けのチャットアプリ「Messenger Kids」をめぐり、次のような違反があったと指摘している。
2017年後半から2019年なかばごろまで、このアプリについて、子どもたちがチャットできる相手を親が承認できると表示していたが、一部の機能では、親の承認を得なくてもチャットやビデオ通話が可能となっていた。
こうした違反行為に対する措置として、FTCはメタに対して、18歳未満のユーザーのデータの収益化の禁止を打ち出した。
18歳未満のユーザーから得たデータについては、このユーザーがサービスを利用するため、あるいはセキュリティのためにだけ使用・収集が認められる。
年月が経過してユーザーが18歳以上になったとしても、18歳未満の時期に集めたデータは商業利用できないことになる。
FTCのリリースには、メタ傘下のサービスも対象になることに加え、買収・合併する企業に対しても同様の制限の対象となることが、明示されている。
「商業利用」の定義は明記されていないが、たとえば、児童・若者が閲覧した投稿や、本人が投稿した内容から、趣味・好みなどを解析し、広告を表示するといったデータ利用はできなくなるだろう。
顔認証についても、ユーザーからの同意が求められることになる。この規定については、18歳未満だけでなく、全年齢が対象になるようだ。
「オンライン子ども保護」の流れ
日本からは、非常に強い措置であるように映るが、米国では、こうした強い措置が具体化する前触れとなる動きがあった。
米国では2022年2月、民主党と共和党の議員が共同で「子どもオンライン安全法」の法律案を議会に提出している。
背景には、未成年者の自殺や自傷行為、うつ病などの精神疾患が増加し、ソーシャルメディアの影響が指摘されている現状がある。
こうした背景から、子どもオンライン安全法案は次のような規定を含んでいる。
●プラットフォーム側は、親と未成年者に対し、ストーカー、薬物中毒、性的搾取などの危険性のあるコンテンツから保護する未成年者を保護するため、対策となるツールを提供する義務を負う。
●アルゴリズムの一部開示
●子どもオンライン安全委員会の創設
メタなどのプラットフォーム側の視点で見ると、この法案は強すぎ、実現性には乏しいように見える。
しかし、たとえ一部であってもアルゴリズムが開示され、子どもたちがソーシャルメディアに夢中になるアルゴリズムが分析され、有効な対策を検討するための一助になるのであれば、極めて有益であるはずだ。
この法案では、「未成年」を16歳以下と定義しているが、FTCはさらに広い「18歳未満」と定義した点は注目すべきだろう。
英国でも「オンライン安全法」成立の見込み
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