業務を変えるkintoneユーザー事例 第170回
2023年もいよいよkintone hiveスタート!
青森シャモロックの会社社長が「ママ、早く帰ってきてね」に応えるまで
2023年04月14日 09時00分更新
農場長の退職をきっかけにkintone導入 チーム運用でボトルネックを解消
kintone導入のきっかけは3年前農場長の退職だった。退職した農場長の仕事を引き継くと、とにかく紙での管理が多く、字も汚くて読めない状態。PCを調べると、Excel方眼紙で使い物にならず、しかも数字ではなく文字列で入力されているものも多数あった。
半狂乱になりながら進めた農場長の仕事の解読は全部終わるまでに半年かかった。「こんなこと農場スタッフにやらせたくないし、なにより私がやりたくない」(保坂氏)と事務所からも鶏の状態がわかるようにしたいという理由で、以前から知っていたkintoneを導入した。
ちなみに導入の後押しになったのは、出入りのIT業者の営業との会話。「kintoneどうだべ?」という保坂氏の質問に対して、以前からkintoneを推していた営業から「楽しいっすよ!」という返答が来たため、試用期間を経てライトコース&自社開発を即決したという。「ライトコースにこだわったのは私と総務課長がケチだからです(笑)」とのことだ。
導入当初は社長である保坂氏がアプリ作成や改善、スタッフへのレクチャー、データチェック、行政資料作成まで手がけていた。しかし当然、社長業が忙しくなると、業務が滞ることに。そのため、現在は農場のスタッフと在宅パートの2人でkintoneの構築や運用を手がけており、社長は新規アプリの作成方針や異常の有無を確認し、アプリの改善や動作チェックなどは在宅パートの方が手がけているという。「社長を介さずにコミュニケーションがとれるようになったので、業務のボトルネックが解消され、いい感じ」と保坂氏はコメント。
そして昨年、保坂氏は妊娠が発覚。4ヶ月会社に出られないという状況の中、kintoneを導入していたおかげで、行政への提出書類なども一切滞ることなく、業務が回ったという。4月1日に無事娘さんを出産。「花金定時ダッシュに拍車がかかった」と保坂氏は振り返る。
トップ画面を見れば鶏舎の状態がわかる
アプリ画面も紹介してくれた。まずトップ画面には異なる鳥の飼育情報を表示。また、農場で重要な死亡数と産卵数なども見える化。トップ画面に掲出することで、いやでも目に付くレイアウトにしている、
入力に関しては、もともと紙で入力していた内容をタブレット画面で入力できるようにしている。ルックアップ機能を活用することで入力の手間を軽減しつつ、計算機能を活用し、計算間違いを防止しているという。
販売状況もグラフを見れば一目瞭然。「新型コロナの影響もあり、青森シャモロックの販売数を報告する資料が必要だったが、今まで1時間かかっていた作成時間が10分になった」とのこと。グラフの凡例をクリックすれば、特定商品の売上も瞬時にわかるので、重宝しているという。今まで漠然とした販売状況が明確になり、社内での具体的な施策について突っ込んだ議論ができるようになったという。
アプリの作り方の工夫としては、アプリ名に部門名を入れ、アイコンも部門のものを使うことで、自分に関するアプリかどうかすぐわかるようにした。また、スペースのコメントは読んだら、返信できなくても、「いいね」を押すことを心がけているという。「農場と事務所は車で5分くらい離れているのですが、コミュニケーションの量が増えました」(保坂氏)。
週休2.5日で、若手の採用も実現 そして今日も定時ダッシュ
農場での利用を前提としたkintoneだが、事務所のスタッフからも、どんどんアイデアが出るようになってきた。「産直施設の販売データ、アプリ化できないか?」「外部倉庫の在庫管理アプリも作って欲しい」などのほか、「若手にデータ入力を任せよう」「紙の管理をどんどん置き換えよう」といった意見も出た。
こうした意見にはテンプレート活用で、迅速に応えている。規定のメッセージすら書き換えない潔さなので、導入は爆速だ。「短時間ですぐにモノができあがると、社員もどんどん楽しくなってきて、kintoneって楽しいっすねという雰囲気になってきています」と保坂氏は指摘する。
生まれ変わったグローバルフィールド。現在は地方の食品製造業では珍しく、週休2.5日を達成。繁忙期もほぼ残業はないという。また、多くの企業が困っている採用に関しても、町外から20代3名を採用している。「データの入力はいまや若手がやってくれています。アプリの開発もそろそろやってみたいと言ってくれました」(保坂氏)。コロナ禍でいった落ち込んだ販売も持ち直して、好調に推移しているという。
「田舎でも働きやすい会社、少ない労働時間でも利益が上がる会社にしていきたい。そして最後は私がいなくても会社が回るようにしたい」と語る保坂氏。「ママ、早く帰ってきてね」と話している(はずの)幼い娘との時間を死守すべく、今日も彼女は定時ダッシュしている。
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