岡山大学、自然科学研究機構、京都大学、理化学研究所、東京大学の研究グループは、尿路結石形成の原因となるシュウ酸を腸内細菌が取り込む仕組みを解明した。
岡山大学、自然科学研究機構、京都大学、理化学研究所、東京大学の研究グループは、尿路結石形成の原因となるシュウ酸を腸内細菌が取り込む仕組みを解明した。 腸内シュウ酸分解菌の「O.formigenes(オキサロバクター・ホルミゲネシス)」は、腸内のシュウ酸を唯一の炭素源として吸収し、分解することでエネルギーを得て生息している。この菌に存在するシュウ酸輸送体である「OxIT」は、シュウ酸の菌体内への吸収と、分解産物であるギ酸の排出を担当している。 研究グループは、大型放射光施設SPring-8でのX線結晶構造解析によって、OxITの立体構造を解明。異なる条件で得られた2種類の結晶を比較解析した結果、1つはシュウ酸の輸送経路を菌体の外に開いた「外開き構造」となっており、もう一方はシュウ酸を結合し輸送経路を閉じている「閉じ構造」となっていることが分かった。 外開き構造のOxITは、正電荷を帯びた輸送経路を開いており、シュウ酸が結合しない限り、電荷反発で経路を閉じることができない。だが、負電荷を帯びたシュウ酸が結合すると、電荷が中和されて輸送経路が閉じ、「閉じ構造」に移行する。閉じ構造では、OxIT分子の中心に基質結合ポケットが形成され、その中にシュウ酸を結合している。 シュウ酸はカルボキシ基を2つ持つジカルボン酸だが、腸内を流れる栄養素にはほかのジカルボン酸も存在する。だが、OxIT分子の基質結合ポケットにはシュウ酸だけが収まり、コハク酸などシュウ酸よりも大きなジカルボン酸は収まらないことが分かった。 研究成果は4月3日、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。尿路結石の発症原因となる高シュウ酸尿症の改善法の1つとして、シュウ酸分解菌の経口投与が検討されている。研究から得られた知見は、この治療法開発に役立つという。 (笹田)