立命館大学、名古屋大学、東北大学の研究グループは、カーボンナノチューブを認識するヒト免疫受容体を発見した。カーボンナノチューブは次世代ナノ材料として期待されているが、一部の多層カーボンナノチューブではアスベストのように炎症が起きることから、安全性担保が課題となっている。
立命館大学、名古屋大学、東北大学の研究グループは、カーボンナノチューブを認識するヒト免疫受容体を発見した。カーボンナノチューブは次世代ナノ材料として期待されているが、一部の多層カーボンナノチューブではアスベストのように炎症が起きることから、安全性担保が課題となっている。 研究グループはこれまでの研究で、多層カーボンナノチューブを認識する受容体「Tim4」を発見し、マウスを使った実験で、多層カーボンナノチューブによる炎症にTim4が関与していることを確認している。だが、その後に実施したヒト細胞を使用した実験では、Tim4が発現していないマクロファージでも多層カーボンナノチューブを認識することが分かり、ヒトの体内ではTim4のほかにも何らかの受容体が炎症に関わっている可能性が高まっていた。 Tim4の構造表面には、通常はタンパク質表面に出にくい芳香族アミノ酸クラスターが出ており、そのクラスターがカーボンナノチューブの認識には欠かせない。そこで研究グループは今回、コンピューターのシミュレーション実験で目的の物質を探索する手法で、およそ15万種のタンパク質3次元構造から、芳香族アミノ酸クラスターを持つヒト受容体を探索。その結果、Siglec-14という受容体を発見した。分子動力学シミュレーションで、Siglec-14とカーボンナノチューブが安定して結合することを確認し、Siglec-14がTim4と同じように芳香族アミノ酸クラスターを介して多層カーボンナノチューブを認識することを示した。 研究成果は4月7日、ネイチャー・ナノテクノロジー(Nature Nanotechnology)誌にオンライン掲載された。(笹田)