国際農林水産業研究センター(国際農研)、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、名古屋大学、横浜市立大学、理化学研究所、明治大学、かずさDNA研究所の研究グループは、CO2濃度が高い環境でイネの収量を増加させる遺伝子を発見した。イネには、穂の数を増やして収量を確保する「穂数型」と、1つの穂に多くの籾を生産させることで収量を確保する「穂重型」の2種類がある。今回の研究では、穂重型の特性を維持しながら、穂数を増やす遺伝子を探索した。
国際農林水産業研究センター(国際農研)、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、名古屋大学、横浜市立大学、理化学研究所、明治大学、かずさDNA研究所の研究グループは、CO2濃度が高い環境でイネの収量を増加させる遺伝子を発見した。イネには、穂の数を増やして収量を確保する「穂数型」と、1つの穂に多くの籾を生産させることで収量を確保する「穂重型」の2種類がある。今回の研究では、穂重型の特性を維持しながら、穂数を増やす遺伝子を探索した。 研究グループは形質(今回は穂数)と遺伝子型を比較することで、遺伝子の候補領域を絞り込んでいく「マップスペースクローニング」手法を利用して、「コシヒカリ」の第3染色体上にある穂数を増加させる遺伝子「MP3(More Panicles 3)」を発見した。コシヒカリは上述の穂数型を代表する品種だ。 MP3遺伝子は、OsTB1/FC1という既知遺伝子のこれまで見つかっていなかった遺伝子型だった。OsTB1/FC1は穂の基となる腋芽の伸長を抑制するが、コシヒカリが持つMP3の遺伝子型は、抑制の程度が緩やかだと分かった。このことから、コシヒカリの腋芽伸長は生育初期から促進され、穂数が増加することが分かった。 一方、日本の多収品種であり「穂重型」の品種でもある「タカナリ」が持つMP3遺伝子型を調べたところ、腋芽伸長を強く抑制することが分かった。そこで、タカナリが持つMP3遺伝子型をコシヒカリが持つMP3遺伝子型に入れ替えた「MP3置換タカナリ」を育成したところ、穂重型の特性をほぼ失うことなく、穂数が20〜30%増加し、総籾数が20%増加した。 さらに、MP3置換タカナリを、大気CO2濃度が通常よりも高い環境で栽培した結果、玄米収量が1ヘクタール当たり8.6トンとなった。遺伝子操作を施していないタカナリの1ヘクタール当たりの玄米収量が8.1トンであるため、遺伝子操作で約6%収量が増加したことになる。 研究成果は3月27日、ザ・プラント・ジャーナル(The Plant Journal)誌にオンライン掲載された。今回の研究成果により、大気中のCO2濃度が高まった環境に適した品種を開発できるようになった。また、MP3遺伝子型は、腋芽の伸長が著しく抑制されるリン欠乏環境で収量を増加させる可能性があることから、特にサブサハラアフリカなど、土壌からのリン供給が乏しく、肥料も多くは期待できない地域でのイネ栽培に活用できる可能性があるという。(笹田)