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佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第180回

Phatlab「RIO」とRanko Acoustics「RFU-100」

類を見ないマニアックな組み合わせで聴く、スティック型USB DAC

2023年03月27日 13時00分更新

文● 佐々木喜洋 編集●ASCII

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Phatlab「RIO」とRanko Acoustics「RFU-100」

RIO

 2月開催の「冬のヘッドフォン祭 mini 2023」では、いくつかの面白い製品が展示されていた。その中で気になっていたものを試聴できた。Phatlabのスティック型USB DAC「RIO」とRanko AcousticsのUSB Type-C対応OTGケーブル「RUF-100」の組み合わせだ。ともにJaben Japanブースで展示されており、予価はRioが3万8500円、Ruf-100が1万9800円。

 マニアックな製品を取り扱うJabenが紹介する製品らしく、なかなかユニークな特徴を持っている。

Phatlab RIO

 まずRIOだが、Phatlabはポータブル・ヘッドホンアンプで人気のある台湾のメーカーだ。USB Type-C端子を搭載し、出力は4.4mmのバランス駆動用端子と一般的な3.5mm端子を持っている。入力ケーブルは本体に固定するタイプではなく、USBケーブルを使用してPCなどに接続するタイプだ。標準添付のケーブルはUSB-C to USB-CのOTGケーブルだが、ケーブルを交換することでほかの端子に接続できる。実際、Lightning to USB-Cケーブルを使用し、iPhoneと組み合わせることができた。また、ケーブル交換により音質の変化を楽しむこともできるため、後述するようにRUF-100との組み合わせで真価を発揮する。

Phatlab「RIO」とRanko Acoustics「RFU-100」

やや大きめの筐体

 重量は57gで、サイズ感はスティック型のUSB DACとしてはかなり大きめだ。スマートフォンよりはノートPCに使うのがよいだろう。

 RIOにはESS Technologyの「ES9281AC PRO」が採用されている。ES9281AC PROはDAC機能だけではなく、ヘッドホンアンプ機能も含まれた統合型ICなので、小型化が求められる用途には向いている。対応フォーマットも広く、サンプリングレートはPCM再生時で最大384kHz、DSDネイティブ再生時でDSD128(最大5.6MHz)まで対応する。また、MQAもデコードができ、本体のLEDがマゼンタの時はMQAをデコードしていることを意味している。接続するイヤホン/ヘッドホンのインピーダンスは16~600Ωまでと幅広く対応している。

Phatlab「RIO」とRanko Acoustics「RFU-100」

側面には音量調節用のボタン。MQAにも対応する。

 面白いのは、側面にデータ転送用のUSB Type-C端子のほかに、電源供給用のUSB Type-C端子も備えていることだ。この端子で給電すれば、PCやスマホの電力消費を抑えられる。また、この端子にオーディオ用のリニア電源を接続することで、PC由来のノイズ成分を抑えた再生ができるとしている。

Phatlab「RIO」とRanko Acoustics「RFU-100」

給電用のUSB Type-C端子も持つ

Ranko Acoustics RUF-100

 RUF-100は、RIOと組み合わせて使用することが推奨されている。以前はTralucentと称していたメーカーの製品だが、最近RANKO Acousticsと改称したようだ。RUF-100は15cmと短いケーブルだが、端子部分に方向性の表示がある。IN側にPC、OUT側にUSB DACをそれぞれ接続する。

Phatlab「RIO」とRanko Acoustics「RFU-100」

RUF-100

 RUF-100の特徴は、ケーブルの真ん中にラグビーボールのようなパッシブ・フィルターが搭載されている点だ。これはRANKO Acousticsの特許技術。電気的なレベルで、USBケーブルを流れる信号と電源の両方をきれいにすることで、ノイズによる音質の悪化を抑え、音質の向上ができるというものだ。小さなケーブルながら、ちょっとした高級オーディオケーブル並みの仕様なのが面白い。

据え置き機と遜色ない広がりある音が楽しめる

 試聴時は、M2搭載MacBook Airで音楽を再生。イヤホンは4.4mm端子を持つAstell & Kern Pathfinderと3.5mm端子のfinal A8000を使用した。

Phatlab「RIO」とRanko Acoustics「RFU-100」
Phatlab「RIO」とRanko Acoustics「RFU-100」

 RIOとの接続時は、MacBook側での音量操作はできず、デバイス側(RIO搭載の音量調節ボタン)でのみ音量調節ができる。音量は100ステップととても細かく調節可能で、電源を落としても位置をメモリーできる。

 音はフラットでニュートラル、プロ用のアンプを彷彿とさせるような端正なサウンドである。高域もよく伸びて低域も深く沈み込むようなワイドレンジのサウンドだ。楽器音の歯切れが良く解像力も高い。かなりハイレベルのイヤホンでも十分に楽しめる実力があると思う。低音のアタックが気持ち良く、強い力感を感じるのは従来からのPhatlabらしい個性だ。また音場がとても広大でスティック型USB DACとは思えないようなスケール感を楽しむことができる。

 ただし、ゲイン高めの仕様のゆえか、Pathfinderのように高感度のイヤホンでは、無音時にかなりヒスノイズのような音が聞こえてしまう。A8000のようなダイナミックタイプでは聞こえない。高感度イヤホンを使用したいユーザーは、iFi audioの「IE Match」などを使用するとよいと思う。ただし、ゲインが高いとはいっても、ボリュームのステップが細かいので、高感度イヤホンで細かな音量調節をする余地がなくなるということはないと思う。

 はじめはRIOに付属している標準のUSBケーブルで聞いたが、RUF-100に替えると空間がさらに広がり、低音はさらに深くなる。楽器音もさらに引き締まってタイトになる。デジタルケーブルでこここまで変わるのは面白い。RUF-100なしでもRIOはかなり良いけれども、RUF-100をつけて聞くと、これなしでは物足りなくなってしまう。

Phatlab「RIO」とRanko Acoustics「RFU-100」

 RIOとRUF-100の組み合わせると、PCにスティック型USB DACをつけているとは思えないレベルの音になる。広がりがあってかなり本格的なヘッドホンアンプを聴いているようだ。モバイル用途には大きすぎるかもしれないが、ノートPCにはちょうど良いかもしれない。

 最近はたくさんのスティック型USB DACが登場しているが、RIOとRUF-100の組み合わせはユニークで、かつ据え置き機並みの高音質を実現している。ほかにないようなマニアックで高音質の製品を探している人、主にダイナミック型イヤホンやヘッドホンで音楽聴いている人は選択肢に加えても良いと思う。

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