IPv4アドレス枯渇、対応ルーター拡大、コロナ禍のトラフィック増大――そして未来は?

「v6プラス」提供開始から10周年、この10年間の変化を振り返る

文●JPIX(原案)、大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 10年前、皆さんはインターネットをどのように利用していただろうか。10年前と現在を比べて、それがどのように変わったと感じるだろうか。

 IPv6/IPv4インターネット接続サービス「v6プラス」が提供開始されたのは、10年前の2013年のことだ。それからの10年間で、日常生活におけるインターネットの利用スタイルは大きく変化した。v6プラスもその変化に合わせ、むしろ変化を先取りするかたちで成長と進化を続けてきた。

 今回は、v6プラスの10年間をあらためて振り返ってみたい。

2010~2015年:IPv6とIPv4の共存から生まれた「v6プラス」

 v6プラスを提供するJPIX(当時の社名は日本ネットワークイネイブラー、略称JPNE)は、2010年8月に設立された。VNE※1として、NTT東西のNGN(いわゆる「フレッツ網」)を使ったIPv6インターネット接続サービスをインターネットサービスプロバイダー(ISP)に卸売りするビジネスからスタートした。

※1 VNE(Virtual Network Enabler) … 固定インターネット回線サービスをISPに卸売りする通信事業者。

 当時のインターネットでは「グローバルIPv4アドレスの枯渇」が大きな課題となっており、IPv4アドレス枯渇に伴ってIPv6移行が進むものと考えられていた。

2003~2011年のIPv4アドレス割り振り状況。2011年初頭には未割り振り分(赤色)が枯渇(出典:JPNIC

 しかし実際は、一般家庭のユーザーにとってはIPv6でしかアクセスできないコンテンツは存在しないため、IPv4さえ使えれば十分であり、そのためIPv6市場は活性化しなかった※2

※2 詳しくは、当時社長だった石田慶樹氏のインタビュー記事を参照いただきたい。

 このような中で新たなサービスとしてリリースされたのが、IPv6とIPv4をセットにした「v6プラス」だった。v6プラスはIPoE技術でIPv6を提供し、同時にIPv4 over IPv6技術でIPv4も提供する。JPIXが構築/運用する大規模ネットワークを複数のISPが共同利用する仕組みなので、ISPのコスト削減につながり、かつユーザーも快適に利用できる。

「v6プラス」は2013年4月に提供を開始した(出典:JPIX

 ただし、v6プラスを利用するためには、ユーザー宅のルーターがv6プラスに対応している必要がある。そこでまずJPIXは、多くのユーザーが利用しているNTT東西の「ホームゲートウェイ(HGW、ひかり電話対応ルーター)」をv6プラスに対応させた。加えて、HGWのソフトウェア配信機能を使うことで面倒な設定作業を省略できるため、ユーザは従来のPPPoEよりも簡単にv6プラスを導入できるようになった。

2015~2020年:ブロードバンドルーターのv6プラス対応が一気に拡大

 最初にNTT東西のHGWに対応したv6プラスだが、市販のブロードバンドルーターを利用するユーザーも数多くいる。このためブロードバンドルーターでもv6プラスへの対応を進める必要があった。

 そこでJPIXでは、メーカーと1社ずつ交渉を重ね、技術情報の提供や機種ごとの接続テストも行い、v6プラス対応のルーターを地道に増やしていった。当初は「v6プラスユーザーが少ない=対応メリットが小さい」という理由でメーカーとの交渉にも苦労したというが、ユーザーの増加に伴って対応ルーターも徐々に増え、それがさらなるユーザー増加につながるという好循環が生まれた。

 現在では、国内外の多くのメーカーがv6プラス対応ルーターを販売するようになっており、対応するルーターの機種(HGWを含む)は150を超えている。家電量販店やECサイトで販売されているルーターの多くがv6プラス対応であり、ユーザーも豊富な選択肢から最適な機種を選べるようになっている。

2020~2022年:コロナ禍によるネット需要の爆発的な増加

 2010年代前半から、スマートフォンやインターネット家電、動画ストリーミングの普及などを背景として、一般家庭が利用するインターネットのトラフィック量(通信量)は増加してきた。

 ただし、トラフィック量が急激に増加したのは、2020年初頭からのコロナ禍においてである。総務省の発表資料を見ると、コロナ禍に重なる3年間(2019年11月~2022年11月)で、1回線(1契約)あたりのトラフィック量は2倍以上に伸びている。それまでの増加ペースと比べるとまさに爆発的な増加だ。

 トラフィック急増の背景には、コロナ禍で外出が制限された結果「おうち時間」でストリーミングサービスなどを楽しむ人が増えたこと、リモートワークも増えて自宅からのWeb会議が頻繁に行われるようになったことなどが考えられる。さらに、外出制限が緩和された後もトラフィック量は増加し続けており、こうしたインターネット利用スタイルが定着したこともうかがえる。

 このような変化を通じて、固定インターネット回線を利用する家庭が増えたり、さらに快適なネット環境を求めて接続サービスを見直したりするようになった。もちろんそこでv6プラスを選ぶケースも増えている。

これから:インターネット利用のかたちは変わってもニーズは変わらない

 NTT東西のフレッツ網におけるIPv6の普及率は2021年3月に80%に到達しており、一般家庭でもIPv6や、v6プラスのようなIPv4 over IPv6サービスが利用されるようになっている。

2021年にNTT東西におけるIPv6普及率が80%に到達(出典:IPv6普及・高度化推進協議会

 またGoogleの統計データによると、2023年3月現在、日本からGoogleへのIPv6アクセス比率はほぼ半分(49%)に達しており、一般ユーザーがIPv6を使うケースは10年前よりも格段に多くなっている。

現在、グローバル全体ではおよそ40%のGoogleアクセスがIPv6経由だ(出典:Google

 10周年を迎えたv6プラスの今後の課題とは何か。最大のテーマは「これからも変わらず、快適なv6プラスであり続けること」だろう。前述したとおり、一般家庭のトラフィック量は急速に増加し続けている。高速で安定したインターネットを維持するためには、v6プラスを提供するJPIX側での設備増強なども継続的に行う必要がある。

 一般家庭におけるインターネット利用はこれからもますます発展し、そのかたちは大きく変わっていくだろう。しかし「高速で安定したインターネット」という普遍的なニーズは変わらない。その期待に応えていくのがv6プラス、JPIXの使命である。

(提供:JPIX)

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