東京大学の研究チームは、ニューラルネットワークなどで用いられる「自動微分」と呼ばれるアルゴリズムを応用することで、人手に頼らない自動的な物質設計を可能にし、欲しい物性から物質を探索する逆問題(出力から入力を推定する問題)における新たな理論手法を開発した。
東京大学の研究チームは、ニューラルネットワークなどで用いられる「自動微分」と呼ばれるアルゴリズムを応用することで、人手に頼らない自動的な物質設計を可能にし、欲しい物性から物質を探索する逆問題(出力から入力を推定する問題)における新たな理論手法を開発した。 研究チームは、複雑な関数の微分値を計算する自動微分アルゴリズムが、大量の変数の最適化に極めて有効であり、幅広く応用可能であることに着目。物質を表すモデル中に仕込んだ大量の変数を自動微分で最適化することによって、注目する物性値が最適となるモデルを自動的に構築できる手法を開発した。さらに、同手法を適用することで、巨大な量子異常ホール効果を示す新しいモデルや、太陽光によって大きな起電力が生じるモデルを自動的に得られることを検証し、その有効性を実証した。 今回の手法は、汎用性が高く、広範な変数空間における自動探索が可能となるため、経験や勘に基づく従来の物質設計の枠を超え、未知の物質や指導原理の発見に寄与することが期待されるという。研究論文は、英国科学雑誌コミュニケーションズ・フィジックス(Communications Physics)のオンライン版に2023年3月1日付けで掲載された。(中條)