台湾の電子機器製造受託メーカー鴻海グループは2023年1月30日、EV(電気自動車)事業の責任者に関潤氏を採用すると発表した。2月1日付けで、同社のEV事業CSO(最高戦略責任者)に就任する。
内燃車とEVのプロ関氏がCSOに
関氏は防衛大学卒業後、1986年に日産自動車へ入社。東風汽車有限公司(中国での日産と現地企業との合弁会社)総裁職や日産自動車副COOを歴任した。
その後2020年からはEV向けモーターなどを製造する日本電産へ移り社長職も務めるなど、内燃車とEVの双方に関わった経歴をもつ人物だ。
内燃車からEVまで幅広い自動車に精通している上、中国国内での勤務経験もある関氏の経歴は、EV事業に力を入れる鴻海にとって魅力的に映ったのだろう。
発表によれば、関氏の主な業務はEVに関するグローバル戦略やグループ内での業務の統合など。わかりやすく言えば、立ち上がってまだ間もない鴻海のEV事業を整え、本格的な成長軌道に乗せることだ。
関氏の社内での立ち位置が会長の劉氏直属とされている点も、それを裏付けるものといえるだろう。
EV事業拡大はApple Car製造受託に向けたアピールなのか?
鴻海のEV事業を巡っては、以前からアップルが開発中の自動運転車(いわゆるApple Car)との関わりが注目されており、ネット上では関氏のCSO就任を「Apple Car製造に向けた布石」とみる声もある。
確かに、鴻海はiPhoneの製造を受託するなど以前からアップルとの繋がりが深いため、Apple Carの製造受託をEV事業の目標に据えていたとしても不思議ではない。
関氏の古巣である日産自動車も、2021年にアップルから自動車の製造委託に向けた接触があったと報じられた際、これについて前向きともとれるコメントを出している。
ただし日産とアップルの接触が報じられたのは関氏が日産を去った後で、彼が日産時代にアップルと接触していたかどうかは不明だ。今回の人事がApple Carの製造受託を目指す対応の一環と考えるのは早計だろう。