iPhone XRをベースにiPhone 13に見せかける詐欺的手法も
PCパーツでも魔改版はいろいろ存在する
iPhone 14 Proの「魔改版」の話をしたついで、華強北の人々が産み出したiPhone 13 Proの「魔改版」も紹介したい。iPhone 13 Pro魔改版は、見た目は似た部類のシングルカメラのiPhone XRをベースに3眼カメラに見せるダミーレンズのあるケースに変えたものだ。
とは言え、中身はサイズが変わったiPhone XRなので、iPhone 13はもとよりiPhone XRのケースも使えないという、顧客を騙すだけ騙す迷惑な魔改版製品だ。華強北の魔改版iPhoneの信頼を地に落とした後に、ショートムービーでアピールして、信頼を得るのだからなんとも振れ幅が大きい。
iPhoneの改造業者はそれ以前もあり、ストレージを増やしたり、アップルのロゴを光らせたり、より新しい世代のiPhoneっぽくガワを変えたり、ワイヤレス充電に対応させたりと、様々な魔改版へのニーズに対応している。
さらに余談だがPCパーツでも魔改版は存在する。以前マイニングが流行し、ビデオカードがとにかく入手しづらい時期があった。政府の取締りとNVIDIAによる性能制限により、ようやっとマイニング人気が落ち着きビデオカードの流通も回復したが(「マイニング禁止になったはずの中国なのに、今もビデオカード市場は修羅場」)、このときNVIDIAによるマイニングの制限回避のために、モバイル用のGeForce RTX 3060や3070をデスクトップ向けに流用したビデオカードがマイニング用途で流通した。
CPUでも、ノートPC向けのBGAパッケージのCPUをデスクトップのLGA1151ソケットに装着できるように変えた製品などがあり、タオバオやAliExpressなどの中国のECサイトで「魔改版CPU」で検索すると、なんとも怪しい多数の商品が見つかる。ただ、ニセモノ製品と同様に、魔改版が存在するということは中国で人気がある製品ということの裏返しではある。魔改の世界に興味があれば探索してみてほしい。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」、「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)などを執筆。最新著作は「移民時代の異国飯」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク)
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