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ドイツのV Frames、Advanced Bikesと共同で「環境価値」の可視化を図る

帝人と富士通、自転車フレームのリサイクル素材活用実証プロジェクトを開始

2023年01月20日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 帝人と富士通は2023年1月19日、リサイクル素材の利活用に向けた実証プロジェクトの開始を発表した。

 このプロジェクトは、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を使った自転車フレームの製造/販売を行うドイツのV Frames、同じくドイツの電動自転車メーカーであるE Bike Advanced Technologies(Advanced Bikes)とともに、自転車フレームに用いられるリサイクル炭素繊維を資源循環し、環境価値化を目指すというもの。

ドイツ V Framesはリサイクル炭素繊維素材を使った自転車フレームを製造している(画像は同社Webサイト)

 帝人および富士通は、2022年7月から共同で構築に取り組んでいる「リサイクル素材の環境価値化プラットフォーム」を利用し、自転車フレームに使用される材料の資源や、環境負荷に関する証跡データを収集、管理するとともに、そのプロセスの実現性を評価して、可視化したデータの価値を検証する。さらに、環境への関心が高い自転車市場において、証跡データの開示によりトレーサビリティを実現したり、カーボンマネジメントへの活用による価値創出につなげたりするという。

今回のプロジェクトの位置づけ。V Frameが取り組む自転車フレームの資源循環や環境負荷低減効果を可視化し、企業ブランド向上に貢献する狙い

 調査によると、自転車フレームの90%以上は中国で生産され、世界へと出荷されている。さらに、90%以上のフレームがアジアに戻されて埋め立てなどのかたちで廃棄されているという。そのため、製品輸送によるCO2の排出、廃棄物埋め立てによる環境問題などの課題が指摘されている。

 こうした社会課題に着目したV Framesでは、リサイクル炭素繊維を活用したフレームを製造している。生産時の温室効果ガス(GHG)削減のほか、サプライチェーンをドイツ国内で完結させて“地産地消”を実現。さらに製造したフレームはすべて回収し、フレームに再利用する仕組みを採用している。

 今回の実証プロジェクトでは、フレームの素材レベルから、フレームが組み込まれた自転車、自転車の利用者、そして自転車の廃棄までをブロックチェーンでトレースして、デジタルツインを構築する。そのデータを利活用することでさまざまな課題解決につなげるほか、投資家やクレジット市場などを対象としたデータの二次利用促進も図る。

 デジタルツインの構築には帝人と富士通が構築するリサイクル素材の環境価値化プラットフォームを用いて、自転車フレームのリサイクルから販売に至るまでの所在、状態、環境負荷など、資源に関するすべての情報を反映させる。これにより、物理空間の資源の状況をデジタルツイン環境で把握できるという。また、ブロックチェーンを用いることで過去の状況までさかのぼって参照することを可能にし、資源のトレースの機能も持たせる。

 さらに、蓄積されるデータは自転車フレームの資源循環を実現していることを示すデータであることから、将来的には、ESG投資の評価やクレジットとしての活用にも展開できるという。

 富士通 グローバルソリューションビジネスグループ Uvance本部 Sustainable Manufacturing Sustainable Transformation事業部の松井善裕氏は、「製品に使われる資源の循環を証明することで“フレーム・トゥ・フレーム”の実現が可能になる。今回の自転車での実績をもとに、繊維強化プラスチック(FRP)を使用する航空機、EV、風力発電ブレードといった他の産業への展開や、その他の素材に関しても横展開していくことを視野に入れている」と語る。

今回の自転車フレームにおけるプロジェクトを起点として、他の産業/領域への横展開も検討していく

将来的にはトレース対象工程の拡張、ユーザーへの価値訴求なども

 今回の検証プロジェクトは、2023年3月までの3カ月間に期間を限定して、自転車フレームに使用される材料や資源の環境負荷情報を収集。炭素繊維の調達、製造工程、販売までのデータを活用するプロセスの実現性の評価と、トレースデータの可視化を行う。

 帝人では、各工程における環境評価の支援およびステークホルダーとの連携を担当。富士通では、ブロックチェーン利活用サービスである「Fujitsu Track and Trust」によるプラットフォームの実装およびトレースデータの可視化ビューの提供を行う。V FramesとAdvanced Bikesは、自社内の各工程における環境負荷情報のプラットフォームへのアップロード、データの収集プロセスやプラットフォーム上で可視化されたデータのレビューを行う。

検証プロジェクトの具体的な内容と各社の役割

 「こうしたステップ1の取り組みで確かな透明性が確保できれば、(次は)トレース範囲を解体業者やリサイクラー、廃棄・回収事業者といった具合に全工程まで拡張したり、ユーザーに対して環境価値や資源循環を伝える仕組みづくりの構築に乗り出したい。ユーザー向けにはアプリを通じてデータを提供することも想定している」(松井氏)

 富士通では、サーキュラエコノミーの実現に向けて、取り組みが確かであることを担保する仕組みであるトランスペアレンシー、企業間をまたぐビジネスアライアンスを実現するエコシステム、自社のESG活動を製品に付与する顧客接点の仕掛けとなるブランディングの3つの機能が必要になるとしている。

 「帝人と富士通の半年以上の取り組みを経て、実ユーザーとの価値検証フェーズに入ることになる。富士通では、社会へ環境価値を届けるための仕組みを提供する。先進事例として、サーキュラエコノミーを加速する一翼を担いたい」(松井氏)

資源循環や環境負荷低減の取り組みを“ビジネス価値”に変えるためには、透明性、エコシステム、ブランディングという3つの機能が必要だと述べた

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