信州大学などの共同研究チームは、南極・昭和基地に設置した中性子モニターおよびミューオン計を用いて、太陽面爆発に伴う2021年11月の宇宙線減少を観測。昭和基地を含む世界各地の宇宙線計の観測データを統合して解析することで、同現象が発生した当時の宇宙環境を解明した。
信州大学などの共同研究チームは、南極・昭和基地に設置した中性子モニターおよびミューオン計を用いて、太陽面爆発に伴う2021年11月の宇宙線減少を観測。昭和基地を含む世界各地の宇宙線計の観測データを統合して解析することで、同現象が発生した当時の宇宙環境を解明した。 2021年11月3日から5日にかけて太陽面爆発に伴う激しい宇宙線変動が生じ、南極・昭和基地でもその変動を観測することに成功した。研究チームは、この日の宇宙線減少の全体像を把握するため、世界各地に設置された21の中性子モニターと69のミューオン計(それぞれ、昭和基地のデータを含む)で観測されたデータを解析。宇宙線減少と宇宙線の風をモデル化して、計90の宇宙線計データの期待値を求め、それらが観測結果にもっとも良く合うようにモデルを最適化した。 その結果、当時は「双方向流」と呼ばれる2方向からの宇宙線の風が強く吹いていたことを発見。さらに、その原因が、宇宙線の多い領域から太陽の磁力線に沿って流れ込んだ宇宙線が、磁力線に沿って往復運動しながらロープ状の磁力線群内に閉じ込められていたためであったことを明らかにした。 今回の成果は、宇宙線減少のメカニズムの解明につながり、いわゆる「宇宙天気予報」にとっても大きな貢献があることが期待される。研究論文は、アストロフィジカル・ジャーナル(Astrophysical Journal)のオンライン版に2022年10月12日付けで掲載された。(中條)